autosport web試乗企画第11弾は『トヨタ・コペンGR SPORT』を取り上げる。ダイハツ・コペンをベースにTOYOTA GAZOO Racingがチューニングを施したコペンGR SPORT。スポーティな走りがフィーチャーされがちだが、ふだん使いもこなせる相棒になるのかも気になるところだろう。
2002年に誕生した初代コペンは、軽規格の2シーターオープンスポーツとして独自の個性を放ち、発売当時から注目を集めた。デビューから2年後の2004年には、早くも国内販売累計台数2万台を達成している。
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イギリスやオーストラリアを中心に海外への輸出も展開され、12年という長いモデルライフのなかで数多くの特別仕様車が追加されるなど、国内外においてファンを拡大し続けた。
2014年に登場した2代目コペンは骨格+樹脂外板というユニークな骨格構造『D-Frame』を採用。これによりボディ剛性が大幅に向上し、走りの質感も格段にレベルアップを果たした。
この骨格構造は『ドレスフォーメーション』も実現した。これは外板を13個の樹脂パーツの集合体と捉え、洋服をコーディネートする感覚で外板パーツを着せ替えられるというシステムだ。
ひとつの骨格から、スポーティな『Robe(ローブ)』、逞しさを強調した『XPLAY(エクスプレイ)』、丸目顔の『Cero(セロ)』の3つの意匠が生まれている。こういった新発想も、2代目コペンが持つ唯一無二の魅力につながっている。
この2代目コペンをベースに、WEC世界耐久選手権やWRC世界ラリー選手権などに参戦するTOYOTA GAZOO Racingがモータースポーツの現場で培った技術やノウハウ注ぎ、主にハンドリング性能に磨きをかけたのが2019年10月に登場したコペンGR SPORTだ。
今回はコペンGR SPORTが日常的に使うクルマとして持つ実力や、レジャーシーンにも対応できるのかを確かめるべく、『GRコペンでゴルフに行ってみた』をコンセプトに試乗。東京都内から神奈川県の鎌倉パブリックゴルフ場を目指した。
■走りの質高めるコペンGR SPORT専用の内装
出発前に、まずはコペンGR SPORTの外観をチェックしよう。外観はベースモデルに比べ、軽自動車枠の範囲内ながらワイド&ローがひと際強調されている。
フロントはデザイン性と冷却性能を両立させた専用グリルやLEDヘッドライト、LEDリヤコンビランプにあしらわれたブラックの加飾により、ベースモデルよりもレーシーな雰囲気が演出されている。ホイールは専用デザインのBBS製鍛造16インチアルミだ。
コクピットはブラックリングとレッドの針や照明による自発光式3眼メーター、背中に“GR”のエンブレムを刺繍したレカロシート、パドルシフト、MOMO製革巻きステアリングホイールなど、『GR SPORT』専用の装備が備えられている。
運転席に備えられたレカロシートの肩口にはサポートワイヤーが内蔵されており、強い横Gがかかっても身体をしっかりと支えてくれるなど、本気の走りをするための環境が整えられている。
そしてコペンが持つ最大の特徴は、電動回転式ルーフ『アクティブトップ』が採用されていて、オープン走行を楽しめることだ。屋根を開ける際は、2カ所のルーフロックを解除し、センターコンソールに配置されたスイッチを操作するだけ。運転席に座ったまま、約20秒でフルオープン走行に切り替えられる。
日常のお買い物などで気になるトランクを見てみよう。ルーフオープン時には格納されたルーフがスペースを占有してしまうが、通勤用のカバン程度なら積めるスペースは確保されている。
ルーフをクローズすると収納スペースは拡大され、9インチのゴルフバッグも問題なく積み込むことが可能だ。ゴルフバッグが入るだけの容量があれば、日常使いでも十分に活躍してくれるだろう。また、トランクは高級車などによくみられるイージークローザー機能も備わっており、軽くトランクフードを押すだけで全閉してくれる。
■ボディ剛性強化や足まわりの改良で、上質でしなやかな走りを実現
さっそくコペンGR SPORTで鎌倉パブリックゴルフ場を目指す。今回試乗したのはCVT車で、7速スーパーアクティブシフトが備えられている。まず走り始めで驚いたのは力強いトルク感だ。
コペンGR SPORTのパワートレインは、ベースのコペンと同じ直列3気筒ターボエンジンで最高出力64ps、最大トルク92Nmと一般的な軽自動車とそこまで大きく変わらない。
しかし、アクセルを踏むと軽自動車とは思えない蹴りだしでグングンと加速していく。また、デュアルエキゾーストテールパイプから出るマフラー音は音を楽しむチューニングが施されており、低回転でもスポーツカーらしいサウンドが室内を包む。
コペンGR SPORTはパワー以外の部分で走りのポテンシャルを高められている。まずはボディ剛性。アンダーボディは補強材の追加、センターブレースの形状変更などにより、ボディのねじり剛性が大幅に向上されており、それに合わせてスプリングとショックアブソーバーの最適化も図られている。
足まわりは硬めのチューニングだが、街中の走行では路面の凹凸を拾ってもドンっとくる不快な突き上げはなく、しなやかに追従していくので、日常使いでも問題ないだろう。
もちろん小回りも効くので、狭い道路で自転車や歩行者とすれ違ったり、枠が狭い駐車場に停める時など、車体の大きいクルマでは不安を感じることもあるシーンもスムーズにクリアできる。
コペンGR SPORTはスポーツカーではあるものの、運転に自信のない初心者でも街中で扱いやすい。高速道路に入って速度を上げれば接地感は増し、路面にへばりついているかのような安定感を感じることができた。
今回の目的地であるゴルフ場に近づくにつれ峠のようにカーブが連続する道が現れ始める。こういった道でもクルマの挙動はつかみやすく、力強いトルクのおかげで上り坂も難なく登っていく。
コーナーでは前輪駆動であるにもかかわらず回頭性能が高いため、まるで後輪駆動車を操っているかのような感覚を味わえ、自分が思い描いたラインをトレースすることができた。
取材したのは12月上旬で寒さが身に染みる季節だったが、オープン走行も体感してみた。オープン走行では風の巻き込みが気になるものの、それ以上に開放感が勝って走りの楽しさが倍増する。
ちなみに運転席と助手席にはシートヒーターが備わっており、背中と座面を温めてくれる。シートヒーターとエアコンを組み合わせれば冬場でも快適にオープン走行を楽しるだろう。
コペンGR SPORTは、てのひらに収まる等身大のアクティブさとともに、ベースモデルよりもランクアップした質の高い走りで大人も楽しませてくれるスポーツカーに仕上がっていた。また、街乗り、買い物など普段使いにも対応可能で、9インチのゴルフバックも詰めることから、レジャーシーンもカバーできるだろう。
トランスミッションは5速MT(243万5000円)と7速アクティブシフト付きCVT(238万円)の2機種を用意。TOYOTA GAZOO Racingがチューニングした唯一無二の2シーターオープンスポーツカーが240万円前後で手に入るという、コストパフォーマンスの高さもうれしいポイントだ。
【撮影協力】鎌倉パブリックゴルフ場
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