昨今の日本車はモータースポーツのイメージが強いクルマの代表であるスバルWRX STIですら、RAやスペックCといったモータースポーツ参戦ベース車が設定されないというご時世である。
これはベースとなるクルマ自体がよくなった、モータースポーツのレギュレーションで改造できる範囲が広くなり公認されたパーツなら装着できるようになったとこともあり、必要性が薄れたという事情もある。
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しかし15年ほど前までは「モータースポーツ参戦のために市販状態でやっておく必要があるモディファイ」というのも少なくなかったため、そういった仕様で販売されるコンペティションカーというのもあり、クルマ好きはその手のクルマにある種の憧れを持ったものだった。
当記事では現実的な価格で買えるクルマにもチラホラ設定されていた「闘いうために生まれた小さなクルマ」を振り返る。
文:永田恵一/写真:NISSAN、SUZUKI、DAIHATSU
日産マーチスーパーターボ
デビュー:1989年
全長3735×全幅1590×全高1395mm、770kg、930cc、直4OHC+ターボ+SC、110ps/13.3kgm
デビュー時の価格:115万3000円
【画像ギャラリー】マーチスーパーターボ&ブーンX4
現行モデルはモータースポーツのイメージは薄いマーチだが、先代モデルまではワンメイクレースなどの底辺のモータースポーツを支え続けた存在だった。そのため特に初代モデルでは1988年にマーチRというラリー参戦を想定したモデルを設定した。
日本を代表するリッターカーのマーチのモータースポーツバージョンとして1988年に登場したのがマーチRで、特に当時のラリーストからは絶大な人気を誇った
マーチRはモータースポーツにおいて過給係数込みで1.6Lクラスで戦えるよう排気量をベースの1Lから930ccに縮小。
さらに低回転域をスーパーチャージャー、高回転をターボで過給するツインチャージと呼ばれるエンジン(110馬力)や専用の超クロスミッションを搭載し、インテリアも簡素というスパルタンなモデルだった。
マーチRのストリートバージョンがマーチスーパーターボ。2019年現在、ターボとスーパーチャージャーのツインチャージャーはこのクルマだけ
そのマーチRのロードバージョン的存在が1989年に登場したマーチスーパーターボである。マーチスーパーターボはエアコンこそ付けられたものの、パワステは狭いエンジンルームに2つの過給器を付けたためスペースが足りず付けられなかったというスパルタンなクルマであった。
乗ってみてもFFで車体に対してパワーが勝っていることもあり、乱暴なクルマなのは否めなかったが、それも今になると激辛味が懐かしい。
エンジン型式はMA09ERTで総排気量930cc、直4OHCはターボとスーパーチャージャーのツインチャージにより110ps/13.3kgmのスペックを誇った。
ダイハツストーリアX4
デビュー:1998年
全長3660×全幅1600×全高1450mm、840kg、713cc、直4DOHC+ターボ、120ps/13.0kgm
デビュー時の価格:139万円
ストーリアX4は現在のトヨタパッソ&ダイハツブーンの前身となるダイハツストーリアに設定されていた競技ベース車。
主に日本国内のラリーやダートトライアル参戦を目的としたモデルで、4WDに標準のストーリアとはまったく異なる軽自動車の4気筒エンジンを排気量アップした713ccのDOHCターボ(120馬力)を搭載していた。
ダイハツのコンパクトカーのストーリアをベースに排気量ダウン、4WD化を施すことでラリー、ダートラで勝てるマシンをダイハツが販売
これもマーチRやマーチスーパーターボと同様にモータースポーツに過給係数込みで1L以下のクラスに出られるようにするための配慮であった。
さらにエアコンなどの快適装備は持たない代わりに、クロスミッション、前後LSD、強化クラッチ、強化サスペンションと競技に必要なものはある程度標準装備され、価格は139万円とリーズナブルとも言えた。
現在モータースポーツのイメージが皆無のダイハツであるが、ストーリアX4は日本国内のラリーやダートトライアルで長年活躍するという大きな功績を残した。
ストーリアX4の前期モデルも長きにわたり全日本ラリーで活躍。軽量+4WDのトラクションのよさを生かし、特にグラベルでの戦闘力は高かった
マイチェン後のストーリアX4。ヘッドライト形状こそ同じながら、内側にライトを埋め込み、グリルを大型化したことでイメージはまったく違う
ダイハツブーンX4
デビュー:2006年
全長3630×全幅16650×全高1550mm、980kg、936cc、直4DOHC+ターボ、133ps/13.5kgm
デビュー時の価格:204万7500円
ストリーアの後継車となるブーンにストーリアX4同様に設定された競技ベース車。
4WDで日本国内のラリーやダートトライアルをターゲットにしているのはストーリアX4と同じであるが、ブーンX4も軽自動車の4気筒エンジンベースにこちらは排気量を936ccに拡大(133馬力、これもマーチRと同じように過給係数込みでモータースポーツの1.6Lクラスに出られるようにするための配慮)。
ストーリアの後継のブーンにもX4が設定された。ストーリアX4が713ccだったのに対しブーンX4は936ccに排気量アップ。クラスは上がったが戦闘力も大幅向上
クロスミッションやインプレッサWRX STIのようなインタークーラーウォータースプレーなども装備した。
またブーンX4にはエアコンやキーレスエントリーといったひと通りの快適装備が揃うハイグレードパックが設定されたのも特徴だ。
ブーンX4は走行性能はスパルタンだったが、快適装備が充実したハイグレードパックが用意されていたため、ストーリアX4より日常の足として使えた
このクルマがデビューした時に、ダイハツがWRC参戦かと色めき立ったのが懐かしい。
競技ベース車らしくノーマルでは「楽しいけど乗りにくい」という印象だったが、手を加えるとガラリと戦闘力が高まるクルマだった。
ブーンX4はグラベルで強さを発揮。一見重心が高そうに見えるボディだが、4WDによるトラクション性能に優れ信頼性も高かったのでラリーで強かった
スズキアルトワークスR
3代目(ワークスとしては2代目)
デビュー:1992年
全長3295×全幅1395×全高1400mm、680kg、657cc、直3DOHC+ターボ、64ps/8.7kgm
デビュー時の価格:115万3000円
4代目(ワークスとしては3代目)
デビュー:1995年
3295×全幅1395×全高1385mm、700kg、658cc、直3DOHC+ターボ、64ps/11.0kgm
デビュー時の価格:118万5000円
1992年6月にダイハツミラX4Rに対抗するためにアルトワークスRをデビューさせた。駆動方式は4WDのみで、クロスミッションなど闘うアイテム満載
軽自動車の排気量が660ccになった、現在のものからすると旧規格になる3代目(ワークスとしては2代目)と4代目(ワークスとしては3代目)のアルトには主に日本国内のラリーを見据えたワークスRが設定されていた。
3代目アルトワークスRは機能面では専用タービン、ビックスロットル、専用コンピューター、クロスミッション、ファイナルギアのローギヤード化、インテリアではアンダーコート(キャビン床の防音剤)の省略。
シートは交換前提のためバン用、エクステリアも黒いミラーに鉄ホイールで、そもそも緩い排ガス規制で市販するため4ナンバー登録という見るからにスパルタンなクルマであった。
4代目アルトのワークスRでは3代目の内容に加え鍛造ピストンやハイカムといったエンジン内部、インタークーラーやラジエーターファンといった冷却の強化も施された(こちらは5ナンバー登録)。
これだけ市販状態でモータースポーツでの使用を考えたクルマだけに、アルトワークスRは特に3代目モデルが全日本ラリーと全日本ダートトライアルで2年連続チャンピオンを獲得する活躍を見せた。
アルトとしては4代目、アルトワークスとしては3代目のRS/Z(写真)をベースに競技ベース車両のアルトワークスRが誕生(1995年5月)
スズキKeiスポーツR
デビュー:2001年
3395×全幅1475×全高1530mm、790kg、658cc、直3DOHC+ターボ、64ps/10.8kgm
デビュー時の価格:109万8000円
Keiスポーツをベースに装備を簡略化するなどして軽量化したモータースポーツのベース車両。 ワンメイクレースは人気で参戦台数はかなりの数だった
アルトワークスは5代目モデルのマイナーチェンジで残念ながら一度姿を消すのだが、アルトワークスの役割は1998年の軽自動車の規格改正の時に登場したKeiのスポーツモデルとなるKeiスポーツが引き継いだ。
KeiスポーツにはマツダロードスターのNR-Aやトヨタ86レーシング&スバルBRZのRAレーシングのようなワンメイクレースのベースとなるKeiスポーツRも設定された。
KeiスポーツRは装備を簡略化した代わりにロールバーや牽引フックなど装備し、価格は109万8000円という内容を考えれば激安モデルで、文字どおりボトムレンジのモータースポーツを支えた。
KeiスポーツRが進化したロードバージョンがKeiワークス。スズキのスポーツモデルの称号のワークスを名乗るにふさわしい性能を有していた
なおKeiスポーツは後に四輪ディスクブレーキ、LSD、レカロシートなどを装備するKeiワークスに昇格した。
軽自動車でスペシャルティカー的キャラクターだったKeiにモータースポーツベース車両が設定されていたのが感慨深い。今では絶対にありえないだろう。
★ ★ ★
振り返るとコンペティションカーは闘うクルマだけにカッコよく、自動車業界を盛り上げてくれる存在だった。
現在はスポーツモデルがあることだけでありがたい時代だけに、この手のクルマを設定するのは難しいのも事実だろう。
しかし「この手のクルマがあればモータースポーツに参戦しやすくなり、クルマやアフターパーツの開発が進み、結果的に自動車業界が活性化する」という考えだって成り立つように思う。
そんなことを考えているとスポーツモデルには標準車に加え、昔のように何らかのモータースポーツベース車もあってもいいのではないだろうか。小さな競技ベース車は、今ではマツダ2に設定されているくらい。
マツダは先代モデルからデミオにモータースポーツベース車両をラインナップしているが、マツダ3になっても変わらず15MBを設定(税込みで162万円)
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