ついつい便利だからと多用してしまう人も多い「サンキューハザード」。「入れてくれてありがとう」をハザードランプの点灯で表現するというもの。
一見、なんら問題もなさそうだが、専門家のなかには「サンキューハザードは緊急事態を示すものだからそれ以外は使うべからず」と指摘する人もいる。
でもパトカーもバスもサンキューハザードをしている現状はいったいどうすべき? サンキューハザード論争に決着をつけるべく自動車ライターが調査しました。
文:永田恵一/写真:ベストカー編集部、Shutterstock.com
■容認派と反対派の言い分とは?
この記事を見ていただいたクルマを運転する方は「サンキューハザード」を使っているだろうか? サンキューハザードとは、合流など後続車に気を使ってもらった際にお礼の意味でハザードランプを点灯する行為だ。
もともとは後方が遮られていて、お礼に手を挙げても後続車に見えないパネル付きのトラックから始まり、一般車にも広がったと言われている。
このサンキューハザード、日本の国民性を反映している節もあり、「気を使ってもらったのだからお礼をするのは当然」など、どちらかといえば使うことに肯定的な意見が多い。
しかしその反面で「走行中ハザードランプが点くのは車両故障などの緊急事態であり、ドキッとするからやめてほしい」という意見も一定数あるようだ。
たしかにサンキューハザードのつもりが、点灯の時間が長過ぎたり、うっかりハザードを消し忘れて点けっぱなしにしてしているであろう事態に出くわすと、ドキッとする。
うむ、反対意見にも一理ある。
譲って貰ったらお礼を言いたいというのは日本の国民性だろう。でも写真のS660のように手を挙げてもなにも見えないクルマもある
筆者はどうなのかと言われれば、サンキューハザードを使うのに否定的ではないものの、反対意見の理由も分かる。なので最近はサンキューハザードを使わないように心がけてはいる。
リアウィンドウにスモークがないなど後方視界のいいクルマなら車内から手を挙げる、後方視界の悪いクルマなら安全に留意して窓を開けて手を挙げていることが多い。
ちなみに道路交通法によれば、ハザードランプの使い方に特定の使い方を「禁止」する条文はない(編註:通学/通園バスの停車時、夜間の幅員5.5m以上の道路での停車時は点滅義務の明記はある)。
サンキューハザードはパトカーもやっているのをよく目にするほどで、このあたりもサンキューハザード論争を一層ややこしくしている。
■賛否はわかった!! ではいったいどうすべきか?
賛否両論でたしかに法的には禁止されてこそいないけれど、推奨すべきことではないというのもわかった。ではどうするべきなのだろうか。
筆者としては「サンキューハザードが紛らわしいことがあるから禁止すべき」というのは、これだけ普及していることも考えるといささか乱暴に思う。
だからといって「お礼のサインは手を挙げるのに限定する」というのも、後方視界が悪いクルマもあれば、中央席に人が座っていたり、ヘッドレストがあったりで車内から手を挙げても見えないクルマも多々ある。
最近は「ありがとう」の意志をリアウィンドウにオンオフできるLEDランプの文字を置いて伝える商品もあるのだが、値段はお安くなく、スペースなどの事情でいずれにせよすべてのクルマに設置できない。
サンキューハザード論争を深く考えてみるとなかなか落としどころの見つからない意外に難しい問題だ。ここで筆者の提案だ。賛成派も反対派も比較的丸く収まるだろうとふたつの案を考えた。
ひとつ目は「ハザードランプ3回点灯まではサンキューハザード」という妥協案。運転免許の取得や更新の際なども含めて明文化してしまうという案だ。
ただこれでは「消し忘れたら紛らわしい」という意見には勝てず、結局堂々巡りとなってしまうのも分かる。
そこでふたつ目の案が、最近になって採用が増えている3回だけウィンカーが点灯する機能を、ハザードランプスイッチに付けてしまえというもの。
まあそこまでしてサンキューハザードをすべきなのか? という疑問もわいてくる。現実的な結論としては「どうしても」の場合だけ短時間ハザードランプを点灯すべき、だろう。
一番いいのは法律などで明文化してしまうことなのだが、なかなかそういった動きは見られない。
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