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【インディカー2024年プレビュー】シーズン途中にハイブリッド導入予定。異例の一年を制するのは誰だ

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【インディカー2024年プレビュー】シーズン途中にハイブリッド導入予定。異例の一年を制するのは誰だ

 今年もアメリカ最高峰シングルシーターで争われるNTTインディーカー・シリーズが始まる。開幕は今週末の3月9日、開催地は今年で20回目の開催となるフロリダ州セント・ピーターズバーグでのストリートレースだ。

■2024年はオーバルレース数が大きく増加

2024年インディカー最終戦ナッシュビルの開催地が変更。シーズン終盤がオーバル3連戦に

 コースバラエティの豊富さがセールスポイントのインディーカー、2024年シーズンは全17戦で争われる。コースの内訳はストリートが4戦、常設ロードコースが6戦、超高速オーバル(スーパースピードウェイ)が1戦、そしてショートオーバルが6戦となる。

 大きい変化として、伝統あるウィスコンシン州にあるミルウォーキー・マイルでのレースが復活。しかもダブルヘッダーでの開催となるうえ、最終戦ナッシュビルは近郊のオーバルコースへと開催地が変更されたため、去年まではショートオーバルでのレースが3戦のみであったが、今年は一挙に総数は6戦へと倍増した。

 開催地が変更となったため、ダウンタウンの中心部へ進出と言われていたナッシュビルのストリートレースがなくなったのは非常に残念だが、そこは来シーズン以降に実現することを期待したい。もう1点残念なのは、高速1.5マイルオーバルのテキサスがカレンダーから外れてしまったことだ。こちらも2025年シーズンの復活を願いたいところ。

 なお3月24日には、シーズン開幕後の合同テストがカリフォルニア州パームスプリングスの郊外の常設ロードコースであるサーマルクラブで行われる。その最終日には、ノンチャンピオンシップイベントとして優勝賞金100万ドル(約1億5000万円)をかけたヒートレースが行われる予定だ。また、構想されているアルゼンチンでのエキジビジョンレースは、同国が政権交代直後とあって開催が見送られた。

■NTTインディカー・シリーズ2024年レースカレンダー
ラウンド日程開催地コース13月10日セント・ピーターズバーグ市街地ストリート24月21日ロングビーチ市街地ストリート34月28日バーバー・モータースポーツパークロード45月11日インディアナポリス・モータースピードウェイロード55月26日インディアナポリス・モータースピードウェイオーバル66月2日デトロイト市街地ストリート76月9日ロードアメリカロード86月23日ウェザーテック・レースウェイ・ラグナセカロード97月7日ミド・オハイオ・スポーツカーコースロード107月13日アイオワ・スピードウェイオーバル117月14日アイオワ・スピードウェイオーバル127月21日トロント市街地ストリート138月17日ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイオーバル148月25日ポートランド・インターナショナル・レースウェイロード158月31日ミルウォーキー・マイル レース1オーバル169月1日ミルウォーキー・マイル レース2オーバル179月15日ナッシュビル・スーパースピードウェイオーバル

■シーズン中盤には新型パワーユニットの導入を予定

 今年の開幕戦からインディカーはハイブリッド・システムを搭載するはずだった。エンジンとギヤボックスを繋ぐベルハウジング内に、モーターとスーパーキャパシタをコンパクトに搭載するインディカー独自のシステムは、ドイツのマーレ社が供給する予定となっていたが、その開発に失敗。その結果、シリーズにエンジンコンストラクターとして参戦しているホンダとシボレーが新型エンジンの開発を急遽ストップさせ、2社が協力して新システムの開発に取り組んでそれを成功させた。

 ところがこのシーズンオフの間に、使用パーツの供給体制が万全ではないことが明らかとなり、スペアパーツの十分なストックが整うまでは実戦投入を遅らせられることに決まった。そのため、システム自体はすでに完成しているが、インディカー公式は“インディ500以降”の導入を発表している。テストを行う日程などを考えると、それは第9戦ミド・オハイオ辺りになりそうだ。

 ということで、2024年のインディカーシリーズではシーズン前半には前年度までとほぼ変わらないマシンが使われ、シーズン後半にはハイブリッドパワートレイン搭載の新スペックマシンで争われるという、極めて異例の事態となる。

 シーズン前半に使われる従来型マシンは、2012年に導入されたダラーラ製シャシーの『IR12』がベースとなる。エアロパッケージが2018年から変更されたことによって、現行モデルは『IR18』と呼ばれており、2020年からはドライバーの安全性を大幅に高めるエアロスクリーンを導入するなどの改良が施されている。ただ、そのシャシー自体の基本設計はもう12年以上も前だ。

 新設計シャシーの導入が待ち遠しいが、同一マシンを長年使ってきたことによって全チームにデータやノウハウが蓄積されて実力が伯仲し、誰が勝つか予想の難しい、激しい接戦になっているのも事実だ。

 今年のマシンはハイブリッドシステムの導入に伴う重量増に備えて、ギヤボックスやベルハウジング、さらにはエアロスクリーン部の軽量化が施される。それがマシンのセッティングにどれだけの影響を及ぼすのか、どのチームが新たな仕様への対応で優位を見出し、スタートダッシュを見せるのかは興味深いところだろう。

 シーズン途中のハイブリッド導入を境に、そこでガラッと戦況は変わるかもしれない。ただ、昨シーズン中からハイブリッドシステムのテストを担当してきているチップ・ガナッシ・レーシングとチーム・ペンスキーが優位を手にするのは間違いないだろう。さらに、このシーズンオフからテストに加わったアンドレッティ・グローバルとアロウ・マクラーレンについても、それなりにデータを集めることができているはずだ。それ以外のチームについては、開幕前に走行のチャンスを一度与えられたのみのため、シーズン後半戦の彼らには大きな負担がかかることになる。

 ハイブリッドパワーユニット搭載のインディカーは、マシン重量も増える一方、パワーも大幅にアップする。ターボのブースト圧でのパワー調整はこれまで通りに行われるが、モーターがプラスされることで現行の750馬力から900馬力ほどに上がるとみられる。

 チーム・ペンスキーに所属し、これまで数回のテストを担当してきているウィル・パワーは「2.2リッターという小排気量エンジンなので、モーターのパワーがプラスされてトルク感が増している。コーナーの出口などでパワーが上がっていることを体感できるし、エンジンブレーキのかかり具合も大きく、そうしたキャラクターを使いこなすことがポイントになるだろう」と、新型パワーユニットの感触を語っている。

■打倒パロウの筆頭は、チームメイトかペンスキー勢か

 今年のチャンピオンシップを予想するために、まずは昨シーズンのアレックス・パロウとチップ・ガナッシ・レーシング(CGR)の強さを振り返りたい。

 スペイン出身ドライバーはキャリア二度目となるシリーズタイトルを、5勝とともに獲得した(一度目のチャンピオン獲得は2021年)。シーズン初勝利を第5戦インディアナポリスのロードコースで記録した彼は、インディ500の翌週の、2023年からダウンタウンでの開催となった第7戦デトロイト、続く第8戦ロードアメリカ、第9戦ミドオハイオで3連勝。シーズン終盤の第16戦ポートランドで5勝目をマークし、ダメを押してタイトルを得た。

 パロウとCGRの凄さは、17戦を通して高く保たれた戦闘力にあった。リタイアなしは当然、全レースでトップ10入り(最下位は2回の8位)で、トップ3入りは10回を数える。

 そして、ランキング2位はチームメイトのスコット・ディクソン。7度目のタイトル獲得を目指した大ベテランは、シーズン終盤に第14戦インディアナポリスのロードコース、セントルイス郊外のショートオーバルで行われた第15戦ワールド・ワイド・テクノロジー・レースウェイ、そして最終戦ラグナセカで優勝したが、惜しくも目標には届かなかった。

 2023年のシリーズ1、2位を独占したCGR、今年も彼らはもちろん強いだろう。昨シーズンに在籍したマーカス・エリクソンはアンドレッティ・グローバルに移籍したが、その代わりに彼らはマーカス・アームストロングをフルシーズン参戦へ格上げし、さらに2022年インディライツ王者のリヌス・ルンドクヴィストと2022年から同チームの育成ドライバーであるキッフィン・シンプソンをレギュラーとして走らせるという、シリーズ最大の5台体制を築き上げた。

 5台から収集できるデータの豊富さは、彼らにとって大きなアドバンテージとなるだろう。パロウがタイトル防衛を実現する可能性は十分。ディクソンはシーズン序盤から勝利を挙げ、ポイント争いをリードして行く戦いができれば、史上最多タイの7度目のチャンピオンシップも見えてくるはずだ。

■チップ・ガナッシVSペンスキーは白熱必至

 CGRに立ち向かう筆頭はチーム・ペンスキーだろう。まず、昨年チーム内トップのランキング3位となったスコット・マクラフランが、さらに力を伸ばしてチャンピオン争いに絡んでくる可能性が大いにある。

 もちろん、念願のインディアナポリス500マイルレース(インディ500)優勝を果たしたジョセフ・ニューガーデンもタイトル候補だ。得意とするショートオーバルが倍増の6戦になったこと、しかもそのうちの3戦がシーズン最終版の連戦としてスケジュールされていることは、彼にとって大きなプラスとなりそうだ。

 ペンスキーではパワーも要注目。2022年の彼のタイトルの獲り方は素晴らしいものだった。開幕5戦でトップ4フィニッシュを続け、優勝はデトロイトでの1回だけながら、7回のトップ3フィニッシュを重ねてキャリア二度目のタイトルを手に入れた。圧倒的パフォーマンスで勝ちまくるのが彼の魅力だったが、今年もベテランらしい戦い方でタイトルを狙ってくる。

■チャンスを掴めるか。追いつけ追い越せの中団勢

 CGRとペンスキーは二強。ライバル勢より一段上にあるが、彼らに先頭を切って挑むのは、アロウ・マクラーレンのパト・オワードだ。昨シーズンはチームの戦闘力が伸び悩んだこともあって勝利がなかったが、しぶとくランキング4位につけた。勝てる力はすでに証明済みで、F1で走る機会を与えられてドライバーとしての力をさらに伸ばしている。チームメイトのアレクサンダー・ロッシ、デイビッド・マルーカス(怪我のためシーズン序盤はカラム・アイロットが代わりにドライブ予定)の力も借りてチームのレベルアップを果たせば、王座獲得も遠くない。

 次に注目したいのは、アンドレッティ・グローバルのコルトン・ハータ。昨シーズンはアップ&ダウンが激しく、1回の3位がベストリザルトと不本意な成績となったが、才能、実力ともにトップレベルにあることは間違いない。今年こそタイトル争いに加わり、それを制したいところだ。アンドレッティの3台体制への縮小は、各エントリーに注ぎ込む力を増大させる効果が期待されている。チームメイトも、カイル・カークウッドとエリクソンと実力者揃いだ。

 昨シーズンに初勝利をあげたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのクリスチャン・ルンガーは、さらにレベルアップしてランキング上位で戦いながら複数勝利を……という可能性も十分にある。佐藤琢磨をインディ500にスポット参戦させることもあり、スーパースピードウェイ用のマシン作りでも実力アップが期待できる体制だ。

 また今シーズンは移籍したドライバーも多く、フェリックス・ローゼンクヴィストはマクラーレンからメイヤー・シャンク・レーシングに、ロマン・グロージャンはアンドレッティからフンコス・ホーリンガー・レーシングに移った。スティング・レイ・ロブは、AJ・フォイト・レーシングでインディカー2シーズン目を戦う。

 さらに今年はルーキーも多く参戦する予定だ。前述のガナッシ勢からは、ルンドクヴィストとシンプソン、エド・カーペンター・レーシングからは2023年インディNXTチャンピオンのクリスチャン・ラスムッセンがロード&ストリートレースに出場する。

 また、スポーツカーカテゴリーから鞍替えとなるトム・ブロンクビストとコリン・ブラウンが抜擢され、ブロンクビストはスポーツカー時代と同じメイヤー・シャンク・レーシングからフルエントリーを果たす。ブラウンは、デイル・コイン・レーシングから数戦に出場し、インディNXTと掛け持ちとなるノーラン・シーゲルもDCRからインディ500を含む何戦かに出場予定である。

 異例のシーズンを迎えることとなる2024年のインディカー・シリーズ。迫る開幕戦セント・ピーターズバーグは、二強CGRとペンスキーの争いとなるのか、シーズンオフに脱皮を終えた他チームの快走が見られるのか。シーズン前半の流れが垣間見えるかもしれない一戦は、3月9~10日に開催される。

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