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ランドローバー ディフェンダーの飽くなき冒険心を象徴した「ワークス V8」。その特別感は、現代の「V8」にもしっかり息づいていた

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ランドローバー ディフェンダーの飽くなき冒険心を象徴した「ワークス V8」。その特別感は、現代の「V8」にもしっかり息づいていた

2024年モデルのランドローバー ディフェンダーは、個性豊かなバリエーションが追加されました。中でも5L V8の新設定はビッグニュース。そこには、偉大なる「先達」が築いた伝統が継承されているようです。そこで今回は、今でも心くすぐられる最強ディフェンダー「ワークス V8」の歴史を振り返りつつ、V8モデル初試乗の印象をお伝えします。

ブランドとして独立した「ディフェンダー」のDNAとは
振り返れば、「Proud Creators of Modern Luxury(モダン・ラグジュアリーの誇り高きクリエイター)」を謳うジャガー・ランドローバーが、新たなCIを発表したのは2022年6月1日のことでした。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

この時、Jaguar/Range Rover/Defender/Discoveryの4ブランドを総べる「HOUSE OF BRANDS」として、それぞれのブランドが持つDNAをより濃密に追求していく姿勢が、明確にアピールされています。

2024年モデルにおける「ディフェンダー」のラインナップ拡大は、そんなブランド戦略に則った展開、と言えるでしょう。4月27日(木)から受注が開始された2024年モデルでは、「90」にディーゼルエンジン、「130」に5人乗り仕様「OUTBOUND(アウトバウンド)」など、待望されていた多様な仕様が追加設定されました。

ディフェンダーMY24の進化には、ブランドとして個性が確立される中にあって、偉大なる先達としての「クラシック ディスカバリー」のDNAが濃密に息づいていることが伝わってきます。グラフィックデカールやイルミネーション付きプレートで先代譲りの冒険心を今ふうに再構成した「COUNTY(カウンティ) エクステリアパック」も、ユニークな提案と言えるでしょう。

とくに注目したいのは、特別なディスカバリーの代名詞と言えるV8搭載モデルの設定です。本国発表からはだいぶ遅れてしまいましたが、ようやく日本市場にも導入が始まりました。「90」「110」に「V8」と「CARPATHIAN EDITION(カルパチアン エディション)」の2グレードが、それぞれ設定されています。

スーパーチャージャーで過給される5L V8エンジンは最高出力525ps、最大トルク625Nmを発生。0→100km/h加速は5.2~5.4秒、最高速度は240km/hを達成しています。

現時点でおそらく「最強」と言えるのは、2023年10月に限定100台が販売された「DEFENDER 110 CARPATHIAN EDITION CURATED FOR JAPAN」でしょう。22インチホイールやドライブレコーダーなどの人気オプションを標準装備して、1749万6100円~1770万5100円となっています。

V8ユニットへのオマージュとして生まれた「ワークスV8」
そもそもV8エンジンとディスカバリーの歴史は、ディフェンダーの前身である「ランドローバー シリーズIII」に1979年から搭載された、V8ユニットから始まります。排気量は3.5Lで90psを発生していました。

このエンジンは「ランドローバー 90/110」「ディフェンダー」と名前が変わっていく中、排気量と出力を引き上げながら進化を続け、98年の50周年記念車でいったんディフェンダーのラインナップから消滅します。

クラシック ディフェンダーそのものも2016年1月に生産を終了していましたが、2018年に70周年を記念する「ディフェンダー ワークスV8」として復活を果たしました。搭載されていたのは、5L V8自然吸気エンジン。405ps/515Nmを発生し、0→60mph加速は5.6秒、最高速度は106mph(170km/h)と公表されています。

ワークス8は、厳選された150台のクラシック ディフェンダーをドナーとして、エンジンが換装されたレストア/リビルト(「リプロダクションモデル」とも言います)でした。強力な心臓だけでなく、スポーツモード付のZF製8速オートマチックトランスミッションに加えスプリング、ダンパー、アンチロールバーさらにブレーキまでアップグレードされていました。

フルウインザーレザーのインテリアトリム、ランドローバー クラシック独自のインフォテインメントシステムなど、ただのレストアは全く違うレベルで、文字どおりクラシック ディフェンダーを生まれ変わらせたのでした。

アドベンチャーするためのトロフィー仕様
2021年、わずか25台という希少な「ディフェンダー ワークスV8 トロフィー」がレストア/リビルトされました。「アドベンチャー対応」を謳うディフェンダー。わかりやすいです。

購入者には、ランドローバーにとっては聖地ともいえるイースナーキャッスルにおいて開催される「ランドローバー・トロフィー・アドベンチャー・コンペティション」への出場権がもれなくついていました。オーナーは、さまざまな地形を走り切るためのトレーニング、テストを受け、3日間のイベントに参加することができたそうです。この「特典」は、のちの第二世代トロフィーにも受け継がれることになります。

ベースの車体は、2016-2016年型。5L V8ガソリンエンジンは405s、515Nmで変わりませんが、サスペンションなどのセッティングは、オフロードでの使用に特化して調整が施されていました。

90系と110系が存在しましたが、ボディはすべて個性的なイースナーイエローに、ナルヴィクブラックのアクセントを施した仕様で統一されました。LEDヘッドランプ、ヘリテージ・フロントグリル、ランドローバー・トロフィーのユニークなバッジ、イベント参加用グラフィックなど、専用装備も豊富に揃います。

2022年7月には第二弾「トロフィーII」がやはり25台で製作されました。フジホワイトボディとナルヴィクブラックのルーフで構成されるエクステリアには、ユニークな明細柄を配置。110ダブルキャブピックアップも、新たに追加されています。

原初のランドローバーをモチーフとするアイラエディション
ランドローバーがそのヘリテージをテーマとする、新しいスペシャルモデルとして製作したのが、「ディフェンダー ワークスV8 アイラエディション」です。2023年5月に発表されたレストア/リビルトモデルで、世界限定30台となります。

テーマは「最初の遺産」。ローバー・カー・カンパニーのマネージング・ディレクターであり、ランドローバーの創設者の一人であるスペンサー・ウィルクスが所有し、使用していたシリーズII aと、ランドローバーという車名が誕生したスコットランドのアイラ島をオマージュしているそうです。

外観は、クラシックな設えが盛りだくさん。オリジナル車両のミッドグレー塗装に似せたヘリテージグレーで塗装、ライムストーン仕上となる頑丈なスチールホイールを備えました。グリルやマッドフラップ部分にも、あえてクラシックスタイルが盛り込まれています。

一方で中身はしっかりワークス V8仕様となっています。各メカニズムももちろん歴代のワークス V8同様に、ブラッシュアップが施されました。

室内は、足もとにカーペットを敷くことで高級感を演出。インテリア細部には、アイラ島とのつながりをさりげなく感じさせるディテールを採用しています。とくにユニークなのが、センターコンソールスペースの処理でしょう。革製タブのついたトレイには、アイラ島のキルホールマン蒸留所から調達されたウイスキー樽のオーク材が使用されます。

新世代の「V8」はドライバーの感性に寄り添う味付け
ワークスV8は新車扱いとはいえ、あくまでリプロダクションモデルとして復刻されたもの。新世代ディフェンダーのV8搭載モデルは、98年以来の「プロダクション V8」の復活であり、まっさらのニューモデルとして新たな価値を提案しています。

先日開催された試乗会では「110 V8」に搭載することができました。3つの長さが用意されるディフェンダーの中では中間サイズのボディスタイルで、5人乗り、全長4945×全幅1995×全高1970mm、ホイールベースは3020mmとなります。ボディカラーはサントリーニブラック、オプションを除いた車両本体価格は1588万円でした。

都内一般道での試乗ということで、自慢のオフロード性能を確認することはできませんでしたが、低速域でのドロドロした脈動感が「V8積んでるぞ!」という気分をしっかり盛り上げてくれます。おかげでとんでもない加速を想像して、アクセルペダルを踏み込む時には少しばかり緊張してしまいました。

しかしそこはさすがのランドローバー!というべきでしょうか。5L V8DOHCにスーパーチャージャーから想像されるような、初速でドカン!ではありません。低速から十二分に力強さは感じられるものの、トルクの伸びは非常にスムーズかつフラット、息の長い加速感を楽しめるタイプです。

ドライバーの感性をむやみに刺激するのではなく、心地よく寄り添ってくれている、そんなある種の「余裕」が感じられるような気がしました。

路面とのほどよい対話感が、扱いやすさにつながる
同様に、足回りのセットも極めて躾の良さが際立ちます。路面の凹凸はやや素直に伝えてくるものの、不快感は覚えません。試乗車は22インチの大径タイヤを装着していましたが、それを考えればとてもスマートな乗り心地と言っていいでしょう。

身のこなしには確かに、それなりのマスが感じられます。とはいえ都内でゆるいカーブをゆっくり曲がっている程度では、腰高感や不安定感を覚えることはありません。ほどよく引き締まった身のこなしによって、クルマとのちょうどいい一体感が生まれています。大柄なボディの割にクルマの挙動、4輪の接地感などが的確に伝わってくるので、オフロードでも扱いやすそうです。

大排気量、ハイパワーのV8エンジンを搭載する以上、そうおうの迫力や押しの強さ、他を圧倒する速さが求められることは確か。ディフェンダー V8は、そうした「要件」をしっかり抑えながらも、見た目の高級感や絶対性能の高さを誇るだけのクルマではありませんでした。

100年に1度の変革の時代にあってなお、「シリーズIII」以来の伝統に裏付けられた価値は、ディフェンダー V8の独自性と普遍的価値をしっかり支えています。願わくばこれからも、こうした心躍るヘリテイジを、心置きなく楽しめる「変革」が起こると良いなぁ・・・。(写真:伊藤嘉啓、ジャガー・ランドローバー・ジャパン)

ランドローバー ディフェンダー V8系 価格
ディフェンダー90 V8:15,000,000円/CARPATHIAN EDITION:15,980,000円
ディフェンダー110 V8:15,880,000円/CARPATHIAN EDITION:16,850,000円

ランドローバー ディフェンダー110 V8 主要諸元
●全長×全幅×全高:4945×1995×1970mm
●ホイールベース:3020mm
●車両重量:2450kg
●エンジン:V8 DOHC スーパーチャージャー
●最高出力:386kW(525ps)/6500rpm
●最大トルク:625Nm/2500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・90L
●車両価格(税込):15,880,000円

[ アルバム : ランドローバー ディフェンダー V8試乗 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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