雑誌に載らない話vol.292
北米トヨタのトヨタモーター・ノースアメリカは2019年4月23日、カリフォルニア州ロサンゼルス港で開催された、ロサンゼルス市港湾局が推進する貨物輸送の「ゼロ・エミッション化」プロジェクトのお披露目イベントで、アメリカの大型トラックメーカーのケンワース(Kenworth)と共同で開発した燃料電池(FC)大型商用トラックを公開した。なおこのFC大型商用トラックを使用した貨物輸送は2019年秋から開始する予定だ。
FC大型商用トラックの需要
トヨタは、持続可能なモビリティ社会の実現に向けて、全方位での電動化を進めているが、なかでもFC技術は、環境性能に加え利便性や汎用性の高さから、将来の有力なパワートレーンと位置付けており、商用車も含めた開発・実証を進めている。また同時にFC技術は、他社からも商用トラックに適合を求める声が多いとされている。
アメリカのカリフォルニア州では、商用トラックへのFC技術展開の可能性を検証するために、FC大型商用トラックを試作して2017年からロサンゼルス港湾地域での実証を行なってきている。この実証を踏まえ、2018年にはトラックの一部改良を行なうなど、システムの改善を行なってきた。
今回のプロジェクトは、これまでの実証を発展させ実用化に向け動き始めるというエポックだ。このプロジェクトを進めるため今後も様々なパートナーと取り組むとしている。
ミライの技術を応用
今回のロサンゼルス港での貨物輸送ゼロ・エミッションプロジェクトは、貨物輸送トラックによる大気汚染問題が深刻なロサンゼルス港やロングビーチ港で、FC技術などを用いた貨物輸送の「ゼロ・エミッション化」を目指してロサンゼルス市港湾局が中心となって進めており、「ZANZEFF : Zero-and Near Zero-Emission Freight Facilities Project」と呼ばれている。
トヨタは、ケンワース社やエネルギー企業のシェルなどとともに参画。このプロジェクトは、カリフォルニア州大気資源局(CARB : California Air Resources Board)より、全体費用(約8300万ドル)の約半分となる4100万ドルの補助を受けている。これらのプロジェクトを段階的に進め、最終的には500トン以上の温室効果ガスと、窒素酸化物やPM10などの有害物質を0.72トン削減することを目指している。
プロジェクトで使用するFC大型商用トラックは、トヨタが2017年から行なってきた1万4000マイル以上の走行実証で得られた知見をもとに、ケンワース社のトラック「T680」をベースにし、パワートレーンはトヨタ「ミライ」のFCシステムを応用して搭載している。後続距離は、平均的な1日の運送距離の2倍となる300マイル(約480km)となっている。
水素ステーションも建設し実用化
このトラックは、ロサンゼルス港を拠点に近隣のインランド・エンパイア地域やウィーニーミー港周辺のほか、北部のメルセド郡などのエリアで貨物輸送を行なう予定で、2019年秋から1台目のオペレーションを開始し、順次10台まで拡充する。運行においては、トヨタの物流事業を担うToyota Logistics Services、一般の貨物運送会社(United Parcel Services、Total Transportation Services、Southern Counties Express)も参画する。
なおこのプロジェクトを行なうために、シェルはロサンゼルス市のウィルミントン地区と内陸部のオンタリオ市に、FC大型商用トラック向けに大型水素ステーション2基を新たに建設する。このプロジェクトでは、バイオマスから水素を作るTri-Gen(トライジェン)のステーションも含め、トヨタ施設内にある3つのステーションと、シェルのステーションの合計5基の水素充填ネットワークを使用することになっている。
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