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「完全競技ベース車として生まれたEK10マーチRという怪物」快適性など皆無! だが、それが良い!

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「完全競技ベース車として生まれたEK10マーチRという怪物」快適性など皆無! だが、それが良い!

国産車初のツインチャージドエンジンを搭載!

クロスミッション標準装備で登場した競技ベースマシン

「完全競技ベース車として生まれたEK10マーチRという怪物」快適性など皆無! だが、それが良い!

マーチRはラリーに参戦するために生産された、完全な競技ベース車両だ。デビューは1988年8月。その頃、ラリー競技は排気量別にA/B/Cの3クラスに分けられていたが、マーチRは排気量1001~1600ccのBクラス制覇を狙って開発された。

当時の国内ラリーのレギュレーションでは、過給機付きエンジンは係数1.4をかけた排気量とみなされていたが、すでに海外ラリーではその係数が1.7とされ、89年シーズンからは国内ラリーもそれに準じることが予想されていた。つまり、マーチRには係数1.7をかけて1600cc未満に収まるエンジンを載せる必要があったわけだ。

そこで、マーチターボに搭載されたMA10ET型のボア径を2mm縮小。ボア×ストロークをφ66.0×68.0mmとしたMA09ERT型を生み出した。これで排気量はMA10ET型の987ccから930ccとなり、係数1.7をかけても1581ccと1600cc未満に抑えられた。

また、MA10ET型は日立製HT07タービンを備えていたが、MA09ERT型は低中速域のトルクを補うためASN-09A型ルーツ式スーパーチャージャーを追加し、中高回転域のみを担当すれば良くなったターボチャージャーはHT07よりタービンもコンプレッサーも大きいHT10をセット。

直列で並ぶ2つの過給機は負圧によって作動するバイパスバルブで切り替えられ、4000rpm以下はスーパーチャージャーが、それ以上の回転域ではターボチャージャーが受け持った。

118ps/Lという出力は当時としてはかなりのハイスペック。マーチR初期型のECUは、アクセルオフでも3秒間スーパーチャージャーを駆動し続け、再加速時のトルクの立ち上がりやレスポンスを高められるような制御が行われていた。


そこに組み合わされるミッションは、RS5F31V型5速MT。89年に登場するストリート仕様のスーパーターボに対して1速のギヤ比が高く、2~5速が低く設定されたクロスミッションで、ファイナル比もローギヤード化。ビスカスカップリング式LSDも標準装備していた。


ラインナップは、大型フォグランプや4点式ロールバーが付かず、エンジンオイルクーラーがオプション設定とされた標準車をベースに、オーテックジャパンでラリー用パーツを装着したタイプ1~3の計4モデル。取材車両は日産トリコロールカラーを始め、ラリー用パーツをフル装備したタイプ1だ。

タイプ1は、本来は樹脂色の黒とされる前後バンパーがカラードになる。また、フロント、センター、リヤに装着されたマッドガードもオーテックジャパンで架装されるラリー用パーツで、タイプ1と2に装備。ホイールはスチール製13インチから、テクノモーターワークスのアルミ製14インチに交換されている。

フロントバンパー開口部の奥に装着されたエンジンオイルクーラーは標準車にオプション設定、タイプ1~3には標準装備されたパーツだ。また、路面との干渉からオイルパンやミッションを守る大型アンダーガードも装着。

ダッシュボード上の3連メーターは右からブースト圧計(スーパーチャージャー作動インジケーター付き)、電圧計、アナログ時計。メーターナセル右側にはHKS製ブースト計が追加される。ラリー用にデザインされたニスモ製ステアリングホイールと革巻きシフトノブはタイプ1と2に標準装備。

ダッシュボード助手席側にはラリーコンピュータやツイントリップメーターが備わり、足元には大型フットレストや消火器が確認できる。

4点式ロールバーの装着によって乗車定員は2名に変更。運転席、助手席ともニスモ製フルバケットシートに交換される。

ドアトリムはビニール製の簡素なもので、サイドウインドウの開閉は当然手巻き式。コーナリング時、身体を支えるためのニーレスト兼ドアポケットも備わる。

内装トリムはもちろん、アンダーコートまで剥がされたラゲッジルーム。リヤクォーターウインドウは固定式で、開閉式のスーパーターボとは異なる。

右フロントフェンダー上部には本来ラジオ用のアンテナが備わるが、競技ベース車両のマーチRにはそもそもラジオの設定がない。そのため、アンテナ部はゴム製のフタで塞がれる。

取材車両のオドメーターが示す距離はわずか3万km。助手席の目の前にはラリーコンピュータが備わるが、実戦で使われた形跡はない。それだけにボディの剛性感は十分すぎるほど。

ただ、固められた足回りによって常に細かなピッチングに見舞われるし、シャシーに当たった小石の音が容赦なく室内に入ってくるほど遮音性には乏しいし、クロスミッションのギヤ鳴り音も盛大…と、現代のクルマに乗り慣れた身体にはなかなか厳しいものがある。

街中で乗るにはシフトチェンジが少しばかり忙しいが、タイトに回り込んだコーナーが続くワインディングに入ると、マーチRはがぜん生き生きと走り出す。切れ目ない加速を見せるクロスミッションに加え、スーパーターボより全幅が30mm狭く20kg軽いボディが強力な武器になる。

ただ、ハンドリングには要注意。パワーアシストを持たないステアリングはキックバックが強く、機械式よりも効きがマイルドなビスカス式LSDが組まれてるといっても、アクセルオンと同時に結構なトルクステアに見舞われるから。

よくできたFF車と違い、クルマをねじ伏せるように走らなくてはならないが、ちょっとクセが強いくらいの方が楽しいのも事実。確かに、ベースは日産のボトムエンドを担ったK10マーチに違いない。しかし、国内外のラリーを始め、ダート競技で数々のクラス優勝を収めたマーチRは、走りも存在感も全くの別モノなのだ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:EK10
全長×全幅×全高:3760×1560×1405mm
ホイールベース:2300mm
トレッド(F/R):1350/1355mm
車両重量:740kg
エンジン型式:MA09ERT
エンジン形式:直4SOHC+スーパーチャージャー+ターボ
ボア×ストローク:φ66.0×68.0mm
排気量:930cc 圧縮比:7.7:1
最高出力:110ps/6400rpm
最大トルク:13.3kgm/4800rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/トーションビーム
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ:FR155SR13

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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