自動車補修塗装が人と環境に“やさしい”ものになる!?
日本で長年にわたり滞っていた水性の自動車補修用塗料の普及を近年急ピッチで進めているのが、大手塗料メーカーの関西ペイントおよび同社営業子会社の関西ペイント販売だ。
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ベースコートのみならずプラサフ(プライマーサフェーサー・下地用塗料)、クリヤー(トップコート)およびそれぞれの硬化剤、希釈水も含む全てにおいて、労働安全衛生法と有機則(有機溶剤中毒予防規則)に該当しないレベルにまで、人体や周辺環境に有害な物質を削減した「オール水性 有機則フリーシステム」を2018年9月に発売。 同月にはカラーセンサーで実車のボディカラーを読み取り、その色に限りなく近い塗料の配合レシピを短時間で算出できるようにした調色システム「AI(アイ)カラーシステム」の大幅バージョンアップを実施している。
両社は「大変革期に対応したシステム提案」と題した、自動車補修塗料事業に関する新たな取り組みを発表。その柱となるのが「オール水性 有機則フリーシステム」と「AIカラーシステム」、そして2018年6月の「ARC(オートリフィニッシュセンター)東日本」(神奈川県平塚市)リニューアルと合わせて導入された「提案型研修」だ。
なお、ここで言う「大変革期」とは、CASE(つながるクルマ、自動化、シェア、電動化)技術の普及・進化に伴う車体構造やパワートレイン、使い方の変化だけに留まらない。 少子高齢化や若者のクルマ離れ、安全性への意識の高まり、マニュアル化志向などといった人の変化に伴う人手不足、年々厳しさを増す法規制といった、自動車補修業界特有の変化も含まれる。
このうち「オール水性 有機則フリーシステム」が法規制、「AIカラーシステム」は人手不足に対する製品としてのソリューションになるが、「提案型研修」は製品導入ユーザーとなる鈑金塗装工場が抱える課題を解決する、ワンオフ型のコンサルティングと言えるものだ。
具体的には、工場の生産性診断を行い、塗装の各工程において非効率な箇所はないか、また仕上がり品質が低すぎず高すぎない適切な水準にあるかをチェック。 そのうえで各工程の標準化、見える化、作業環境の改善、現場スタッフおよびトレーナーの育成を図ることで、作業効率を改善していくものとなる。
関西ペイントおよび関西ペイント販売は、これらシステムを提案・提供することで、有害物質の大幅削減を通じ、有機溶剤に関する健康診断や、局所排気装置など塗装設備が必要不可欠ではなくなる。 さらに人件費や設備導入・維持コストの低減が可能に。また新人スタッフの即戦力化も可能になることで、既存のディーラーや専業の鈑金塗装工場は持続可能性が高まるうえ、参入障壁が下がることで整備工場やガソリンスタンド、中古車販売店、カー用品店なども塗装事業に新規参入しやすくなる、としている。
ただし、参入しやすくなるのはあくまで「塗装」事業であり、変形した外板や骨格を修正する「鈑金」は当然ながら、この範疇にはない。 また「塗装」も、例え有機則フリーの水性塗料であっても吹き付ければ塗装ミストが飛散するうえ、水性塗料は溶剤系塗料よりも多くの乾燥時間を要する傾向にあるため、広範囲の塗装においては本格塗装ブースなどによるゴミ・ブツの付着対策が不可欠だ。 そのため法的には問題なくとも、現地での出張作業や営業所レベルでの作業が可能になるのは、現実的には軽補修の範囲に留まるものと思われる。
とはいえ、これらシステムが普及すれば、自動車補修塗装があらゆる意味で、人と環境に“やさしい”ものになることは間違いない。
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