低コストの次世代バッテリー技術
text:Felix Page(フェリックス・ペイジ)
【画像】EV業界の牽引役【テスラの販売・開発中のモデルを写真で見る】 全115枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
テスラは、13年間の歴史の中で最も成功した四半期の販売を達成し、既存メーカーとの激しい競争の中で、世界有数のEVブランドとしての地位を確立するために、さらなる努力を続けている。
継続的な成功を納めるためには、フォルクスワーゲンID.3、日産リーフ、キアeニロなど、同クラスのフロントランナーに対抗する、小型で手頃な価格の電動ハッチバックを今後数年間で導入することが重要となる。
2023年の発売を予定しているこの新型ハッチバックは、テスラが高級EVの分野から、より身近な領域へと移行したことを示す画期的な製品だ。欧州ではコンパクトセダンのモデル3が大成功を収め、ベストセラーEVとして常に上位にランクインしている。
米国での販売開始価格は約2万5000ドル(276万円)とされているが、テスラのモデルは一般的に本国以外では若干高くなるため、欧州では2万ポンド(310万円)前後になる可能性が高いと思われる。最も手頃な価格帯のモデル3でさえ4万ポンド(619万円)であることを考えると、このモデルは同ブランドで最も安いモデルとなるだろう。
このような価格の変化を可能にするのは、テスラが開発している新しいタイプのバッテリー技術だ。この技術は、製造コストを従来の方法よりも50%削減する一方で、5倍のエネルギーと最大16%の航続距離拡大を実現できるとされている。
この技術は、昨年開催されたテスラのバッテリー・デーで発表され、イーロン・マスクCEOは次のように述べている。
「わたしが最も悩んでいることのひとつは、本当に手頃な価格のクルマがないことですが、これは将来的には実現するでしょう。そのためには、より安価なバッテリーが必要です」
外観はモデル3似、車名は「モデル2」?
テスラによれば、新設計のバッテリーパックは早ければ来年にも量産が可能になるとのこと。また、従来の標準的な「タブ」形式ではなく、1kWhあたり77ポンド(約1万2000円)という大幅に安いコストで製造することができる。
その結果、新型車では数クラス上のEVと同等の、非常に競争力のある航続距離を実現すると考えられる。航続距離が400kmに満たない場合、「テスラの卓越した基準」を満たすことはできず、「受け入れがたいほど低い」と、マスクはこれまでに何度も発言してきた。その結果、テスラはモデルYのスタンダードレンジ・バージョンを廃止するに至った。
テスラが50kWh未満のバッテリーを採用するかどうかはまだわからないが、航続距離を短くしたショートレンジ・バージョンが登場すれば、競争が激化している都市型モビリティ市場への参入ポイントとなるかもしれない。一方、最上位のロングレンジ・バージョンは、モデル3のWLTP航続距離566kmに匹敵する可能性がある。
これまでのところ、テスラはこのモデルの正確なボディスタイルや名称については明らかにしておらず、大型トラックの「セミ」、ピックアップトラック「サイバートラック」、スポーツカー「ロードスター」に続いて開発中の「将来の製品」としか言及していない。
しかし、モデル3に酷似している可能性が高く、エントリーモデルとしての位置付けからモデル2を名乗ることになると思われる。
テスラは以前、中国に新設する研究・設計施設で働く希望者を募り、モデル3によく似たスタイリングを持つコンパクトモデルを予告した。この発表では、同施設が「中国スタイル」のクルマを開発すると述べられていたが、マスクは以前、中国で「グローバルに販売するクルマを作る」ことを認めている。
モデル2の欧州仕様は、モデル3およびモデルYとともに、ベルリン近郊にあるテスラの新工場で生産されることになっている。
「世界最大の工場」と称されるこの工場は、最終的に年間50万台の生産能力を持つことになり、米国や中国以外でのテスラ・ブランドの継続的な成長に大きく貢献することになる。
テスラ:今後の製品予定
●セミ(2021年)
テスラ初の商用EVは、「これまでで最も安全で快適なトラック」と言われている。2017年末に初めて公開されたこの大型トラックは、英国では1万5000ポンド(232万円)で予約することができ、納車が始まる今年後半には正式にデビューする予定だ。
●サイバートラック(2022年)
今年発売される予定だったサイバートラックは、2022年後半に生産が開始されることになった。購入者は100ドル(1万1000円)のデポジットを支払うことで予約ができる。電気モーターの数を1基、2基、3基から選択することができ、最大航続距離は800km以上になるとされている。
●ロードスター(2022年)
0-97km/h加速2.0秒以下、航続距離1000kmという空前の性能を持つフラッグシップの4シーター・スーパーカーが、発表から4年後の2022年に発売されることが決まった。完全に走行可能なプロトタイプも、今後数か月のうちに完成する予定だ。
●シャトル(2024年)
昨年、マスクが示唆した「より大容量の車両」についてはほとんど分かっていないが、報道によれば、同氏のトンネル掘削会社The Boring Companyが掘ったトンネル内の移動手段として、自動運転技術を搭載した12人乗りのミニバスが開発される可能性がある。
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みんなのコメント
最近は品質の悪いクルマってイメージ。
実際、モデル3はCATLが数兆円規模の補助なり税制優遇などを受けて、大幅な値下げが実現出来ている。