フルモデルチェンジしたホンダの新型「フリード」に、今尾直樹が公道で走った! まずは売れ筋のハイブリッドモデルからリポートする。
コンパクトミニバン、大人気!
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2008年に誕生したホンダ・フリードは、全長4.0mちょっとの5ナンバー・サイズで、おとなが座れる3列シートを、おそらくは世界で初めて実現した“コンパクトミニバン”である。コンパクトミニバンという言葉自体、ホンダが2001年、フリードの前身である「モビリオ」を発売したときにつくったものらしい。
スライドドアで3列シート、筆者の見るところ、世界で唯一、このカテゴリーでキャプテンシートを備えるフリードは、競合が少ないこともあって人気を博し、国内市場でのホンダのドル箱ならぬ円箱になっている。とりわけ先代の2代目は、モデル末期でも販売は失速していない。2024年上半期(1~6月)の自販連の統計によると、3万8429台で7位と大健闘。月にならすと6405台売れていたことになる。前年同期比88.3%。新型フリードの販売計画台数月間6500台は堅実な数字といえる。
ちなみにライバルのトヨタ「シエンタ」は5万5649台で、第3位。コンパクトミニバンというカテゴリー、ニッポンでの人気は高い。
それならなぜ他メーカーは進出しないのか? ホンダには衝突安全を含めた独自のノウハウがある。と、フリードの開発担当者の方は胸をはる。それと、SUVが世界の潮流になっているから、新規参入するにはハードルが高い、ということがある。ホンダM・M(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想の権化のフリードはシンガポール、香港、マカオに先代から年間数百台が輸出されているだけの、ほとんど国内専用モデルなのはモッタイナイような気もするけれど、海外では人気がないのだから致し方ない。
それにしても、超少子高齢化がいわれて久しいニッポンで、コンパクトミニバンはなぜかくも需要があるのか? フリードの開発者のひとりは、住宅事情をその理由にあげた。せめてクルマに乗っている間は広々とした空間で過ごしたい。田舎ならともかく、都会では駐車スペースの確保もむずかしい。とめる場所が1台しかないとなると、せっかくクルマを買うのだ。実用的で便利なほうがいい。
ニッポン人は、“小さきものはみなうつくし”と、枕草子で教わって育つ国民でもある。と、筆者は思ったけれど、考えみたら、フリードは小さきものではない。ニッポンにはさらに小さい軽自動車がある。もしも定員4名という枠がなかったら、ニッポン人は軽で3列ミニバンをつくりかねない国民だ。
フリードはどっちかというと小さい。でも、小さすぎない。適度に大きい。でも、大きすぎない。初代と2代目フリードが掲げてきた「ちょうどいい」、新型では「“スマイル” ジャスト ライト ムーバー」というグランドコンセプトはそれをあらわしている。軽ワゴンで満足していた親子3人のファミリーも、ふたりめを授かるとフリードに乗り換える傾向があるという。あるいは子離れ世代が「ステップワゴン」等からダウンサイジングしてくるケースもある。下から上から、やってくる人の需要に応えられて、乗る人を笑顔にする。そんなファミリーカーを3代目フリードの開発陣はつくろうとした。EV(電気自動車)への投資に集中している会社の事情もあって、プラットフォームは熟成してきたものを継承し、堅実な改良につとめた。それが誠実な製品になってあらわれた。さる7月上旬、横浜で開かれた新型フリードの公道試乗会に参加した筆者はそう思った。
以下、公道試乗会でテストした2台のうちの1台、クロスターのe:HEVのFF、5人乗りの印象を述べる。
とっても静か新型の特徴は、標準型ボディに「エアー」の愛称が与えられ、先代の途中で追加されたクロスオーバー仕立ての「クロスター」との2本立てという構えがくっきりと打ち出されたことだ。
クロスターはタイヤサイズも含めてエアーと中身は同じだけれど、独自のフロントグリルと前後バンパー、樹脂製のホイールアーチプロテクター等で、アウトドアっぽいタフなムードを先代以上に醸し出している。ホイールアーチプロテクターの装着により、全幅1720mmと、エアー比で25mm、ボディが拡大している。インテリア・カラーがブラック×カーキになるのも特徴だ。
パワーユニットはエアー同様、e:HEVと1.5リッター直4ガソリンエンジンがあり、どちらもFFと4WD、ふたつの駆動方式が選べる。試乗車は冒頭に記したように、e:HEVのFFで、5人乗りである。2列5人乗りはクロスターのみの設定で、3列よりも広い荷室を持つ。フロアをフラットにすべく、後ろのシートは座面を起こしてから背もたれを倒すダブルフォールディングタイプが採用されている。ついでながら、クロスターの3列はキャプテンシートの6人乗りのみとなる。つまり、シートのレイアウトでも、クロスターはちょっと贅沢な遊びグルマ、という個性化を図っている。
運転席に着座してあらためて感心するのは、すっきりとした視界である。着座位置は比較的高めで、それも視界のよさに貢献している。スターターの丸いボタンを押すと、無音のまま液晶の画面にREADYと緑色の文字が浮かぶ。ブレーキは足踏み式ではなくて電気式に変わっている。なので、ダッシュボードからニョキっと生えたシフトレバーをDに入れて、あとはアクセルを踏み込むだけで走り出す。発電用と駆動用、ふたつのモーターが役割分担をするe:HEVは、街中では基本的にモーターで走る。バッテリーの電気エネルギーが十分な範囲だったらエンジンは始動しない。つまりEVとおなじだ。だから、とっても静かである。カチャカチャというウィンカーの音しか聞こえてこない。
走り出してすぐに感じたのは、サスペンションの動きが軽やかな点だ。フロントのブッシュ類のフリクションを低減したというそれだけで、こんなにも変わるのか……。もっとも、この印象は最初だけで、すぐに慣れてしまい、軽やかさより、ボディの動きが小さいことに感心する。全高が1755mmもあるミニバンなのに、あくまでフラットな姿勢を保とうとする。それも不自然な印象を与えることなく。
e:HEVはガバチョとアクセルを踏み込むと、アトキンソン・サイクルのエンジンがうなりを上げて発電に専念する。その音と振動のわりに加速しないのは、フリードがファミリーカーだから、である。駆動用モーターの最大トルクは253Nmもあるから車重1480kgをスッと加速させるのは朝飯前だけれど、息の長い加速をするには最高出力122psではパワー不足なのだ。もちろん、なにごとにも限界はある。1.5リッター直4ガソリンと2モーターからなるe:HEVの特性を知ることが肝要だ。
ポイントはエンジンンがなるべく始動しないようなアクセル操作を心がけることである。と、自分に言い聞かせる。そのほうが断然心地よい。エンジンが始動したかどうかは、液晶画面にEVの文字が点灯したり消えたりすることでわかる。瞬間燃費を表すメーターの動きでも推測できる。始動しても高回転まで、まわさない。まわさなくても十分、交通の流れに乗ることができる。静かで、加速もスムーズで上質感があり、燃費もよい。いいことだらけである。
それと、今回の公道試乗会で初めて気づいたのですけれど、ブレーキペダルをちょっと緩めるとクリープする。電動車はアクセルを踏んで、発進するという明瞭な意思を伝えない動き出さないタイプもある。新型フリードの場合はブレーキペダルのセンサーが、踏力が弱まったと判断するや、すぐさまモーターの駆動力を発生させているのだという。ズボラでガソリン車に慣れている私としては、こっちのほうが断然楽ちんに感じる。
車両価格は316万2500円と、300万円を超える。クロスターそれ自体、エアーの上級版のエアーEX比で約12万円、e:HEVはガソリンより約35万円高いからだ。ライバルのシエンタ、ハイブリッドのFFの5人乗りの装備充実モデルのZは、299万6600円と300万円を切っている。新型フリードe:HEVクロスターは、ちょっとお高い。だけど、ちょっといいものを買った感がある、と、筆者は思う。
“3ウェイ” ユニバーサル ムーバーにも注目試乗してはいないけれど、フリード・クロスターには「スロープ」という新種も登場している。先代では「フリード+G 車いす仕様車」という名称で販売されていた福祉車両の後継車で、クロスターの5人乗りに、車いすごと乗降車しやすいようにアルミの板と電動ウインチを装備した仕様だ。3列用に開発された後席用エアコンも備えており、5人+ひとりが快適に過ごすことができる。
福祉車両は、超高齢化社会にあって引っ張りだこになってもいいはずなのに、福祉車両というイメージがあるためか、せっかく開発したのにあまり売れない。というのが担当者の悩みだそうで、この悩みを解決すべく、「“3ウェイ” ユニバーサル ムーバー」というコンセプトが生まれた。
福祉専用車ではない。日常でもレジャーでも介護でも、スロープと電動ウインチがあるから3ウェイで便利ですよ~、と元気なひとに積極的に売り込む作戦である。
駆動方式はFFのみで、パワーユニットにはe:HEVとガソリンがある。価格は前者が297万7000円。後者が329万5000円。福祉車両ということで消費税は免除される。これは政府ではなくて、なぜかは不明ながら、ホンダの負担という。なので、健康なひとも安心して買ってください。という内容のことを開発担当者の方は語っている。
だけど、マジメな話、福祉車両は政府が補助金を出すべきだ、と、私は思う。
ニッポンはひとにやさしい国になってほしいです。
文・今尾直樹 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
流石に、割高感を感じるのでは?
値段だけ高すぎてチープなフリードが?
それも不正最多車種のホンダが?