2021年3月31日、日産自動車の中東法人は、大型3列シートのクロカンSUV「パトロールNISMO 2021年モデル」をデジタルワールドプレミアした。販売は中東地域限定となっており、日本や北米、欧州、中国などにも導入予定は現時点ない。
まさに「中東スペシャル」な、「パトロールのNISMO」の詳細をお伝えしていくとともに、日産がパトロールにNISMOを追加した狙いについて、考察していく。
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文/吉川賢一
写真/NISSAN
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■GT-Rエンジンの「匠」がエンジンチューニングを担当
『パトロール』は、かつて日本国内で『サファリ』として販売されていた、8人乗り5ドアの本格クロカンSUVだ。オフロード性能や耐久性能が高く追求されたモデルであり、砂漠地帯を駆け巡るような使われ方が多いという。2010年に発表された現行型パトロールは、全長5メートルを越え、全幅も2メートル弱、エンジン排気量は5.6リットルもある。
そのパトロールも、デビューから10年が経ち、2020年マイナーチェンジをうけ、最新モデルへと進化をしている。今回発表されたパトロールNISMOは、このマイナーチェンジ版にNISMOが手を加えた、特別モデルだ。
2020年にマイナーチェンジした新型パトロール。5170×1995×1940(全長×全幅×全高[mm])というボディサイズでホイールベース3075mm、車両重量2780kgだ
パトロールのエンジンは、5.6LのV8自然吸気ガソリンエンジン。NISMO仕様では、さらにチューニングが施されており、最高出力428ps/5800rpm、最大トルクは560Nm/4800rpmまで引き上げられている(ベースのパトロールは400ps/5800rpm、560Nm/4000rpm)。ず太いトルクで、車重3トンに迫る巨体を、猛烈なGで加速させていく。
日産によると、今回、パトロールNISMO専用エンジンのチューニングを担当したのは、日産の横浜工場で、GT-Rのエンジンを手組していた4名の「匠」だという。「匠」とは、エンジンの組立だけでなく、そのエンジンの使われる場所や頻度などにも精通し、厳しい基準と、高い志がある者のみが任命される、正真正銘のエキスパートだ。
その「匠」がチューニングをしたエンジン、というのだから、ファンとしてはたまらないし、中東の富裕層にとって、こうした付加価値はうれしいものであろう。
■NISMOのテクノロジーが詰め込まれた空力性能
パトロールNISMOのエアロダイナミクスは、モータースポーツで活躍するNISMOのテクノロジーをベースに、基準車であるパトロールから改良が施されている。この手の大型SUVの場合、フロアの下に流れ込む空気の影響で、ボディにはリフト(揚力)が働きやすく、高速域になるにつれて、フロントタイヤの接地感が抜けてしまう現象が起きてしまう。そのため、揚力を減らして、ボディを接地させる方向へのセッティングが重要となる。
パトロールNISMOでは、フロントバンパーにサイドダクトを追加し、バンパー下には、レッドに塗装されたリップスポイラーを追加することで、フロントから受けた空気が、ボディ下部へ流れる量を減らし、フロントのリフトを抑えている。
パトロールNISMOは、現在2019年型がスーパーGTのFRO(ファーストレスキューオペレーション)車両として運用されている。もし2021年型が導入されれば、日本でもその姿が見られるかもしれない
また、リアに大型のルーフスポイラーを装備し、ルーフ面を流れてきた気流が、ボディから剥離して発生する渦の位置を遠ざけることで、ドラッグ(抵抗)を低減。大型リアバンパーの下部には、縦フィンが設けられたディフューザーが装備されており、整流効果を持たせている。
さらには、NISMO専用デザインとなる2トーンカラーの22インチホイールや、このモデル用に仕上げたビルシュタイン製ショックアブソーバーを採用するなど、足回りのセッティングもぬかりなく施されている。こうしたパーツの効果もあり、パトロールNISMOは優れた高速直進安定性と、アジリティ(俊敏さ)を手に入れているそうだ。
■NISMOらしさ溢れるスポーティなエクステリア&インテリア
エクステリアには、立体的なハニカムメッシュグリル、NISMOエンブレム、水平クロームラインなどに加えて、NISMOの象徴である「レッドライン」が外周に施されていることで、いかにも「NISMO」といった、スポーティなデザインとなっている。リアバンパーには、LEDのリアフォグライトも装備している。
インテリアも、レースモデルを思い起こさせるような、赤を基調としたスポーティなデザインが随所に施されている。シートは、サイド部にはレザーを、本体部にはアルカンターラ生地を採用、ヘッドレストにはNISMOのロゴも入る。これらは、前席だけでなく、後席にまで施されている。
内装もNISMO仕様でスポーティさと高級感をうまくマッチさせている
ドアやダッシュボードの内張りやシート、ステアリングホイールには赤い刺繍のステッチが入れられており、部分的には、赤いファイバーを編み込んだカーボンパネルも採用。ステアリングホイールには、レーシングカーさながらのアルカンターラ素材も用いられている。NISMOならではのコーディネイトがバッチリと決まっており、「NISMO車を手に入れた」という満足度は高いだろう。
ベースとなるパトロールは19万9900~32万9000 AED、日本円に換算するとおよそ603万円~991万円だ。パトロールNISMOは38万5000 AED、日本円では約1160万円と、最上級モデルらしく超高額。しかし、中東の富裕層にとっては、このくらいの価格はなんてことはないだろう。
■ブランド強化の戦略車としてはもってこい!!
日本では、できれば運転したくない程の巨大SUVだが、UAE をはじめ、中東・アフリカ地域では、車高が高いSUVタイプの大型なクルマが大変好まれている。なかでも、日本車は人気が非常に高く、日産『パトロール』のほか、トヨタ『ランドクルーザー』、レクサス『LX570』といったモデルがよく売れており、日産にとって、中東地域は重要な市場のひとつだ。
こうしたクルマを買う富裕層は、荷物を載せて移動するといった実用としてはもちろんのこと、なんと、砂漠地帯を走り回る、という遊びにも、このような巨大SUVを使うらしい。砂丘の山をどこまで登ることができるかを競走したり、小高い砂丘を使ってクルマでジャンプをしたり、という、とても日本では考えられないような遊びを、この巨大SUVでするというのだ(筆者の知人は現地で実際に目撃したらしい)。
中東富裕層の豪快な「砂遊び」に対しても、パトロールのような頑丈なイメージのハイパワー車はピッタリといえる
中東は、トヨタ、ホンダ、メルセデス、BMWはもちろん、ポルシェやフェラーリ、ランボルギーニに至るまで、あらゆる自動車メーカーが勝負している市場であり、高級ラグジュアリー大型SUVのほかにも、『GT-R NISMO』のようなスペシャリティカーも人気で、現地にはファンもたくさんいる。
耐久性が高く、信頼のおけるジャパニーズブランドの「NISSAN」、そのスポーツカーブランドである「NISMO」。中東の顧客のためだけに仕上げた、スペシャルモデルであるパトロールNISMOは、中東地域におけるブランド強化の戦略車として、非常に重要なモデルだということは、間違いない。
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エンジンだけ2.5のハイブリッドとかにして日本販売してくれないかな