現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > トライクはよく見るのに… 昭和レトロの象徴「オート三輪」なぜ廃れた? 今も新車販売してますよね

ここから本文です

トライクはよく見るのに… 昭和レトロの象徴「オート三輪」なぜ廃れた? 今も新車販売してますよね

掲載 18
トライクはよく見るのに… 昭和レトロの象徴「オート三輪」なぜ廃れた? 今も新車販売してますよね

昭和レトロの象徴的な乗りもの

 オート三輪とは1930年代~1960年代に活躍した前1輪・後2輪のレイアウトを持つトラックの呼び名です。実車が走行している姿を見たことがない若い世代にも、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』などの映像作品に登場する姿を見て、昭和の時代の象徴として認識されているのではないでしょうか。

【軽トラが小さく見える!】これが日本最大のオート三輪です(写真)

 オート三輪の利点は、メカニズムとしては四輪車ではなくオートバイと大差なく、四輪車に比べて軽量で低価格なことなどがあります。単純な構造のため保守管理が容易で維持費も安い上、積載能力にも優れ、悪路にも強く、狭い場所でも小回りが効くことから、商店の配送業務や農林水産業などで活躍しました。

 その歴史は古く、1910年代に大阪で始まったといわれています。アメリカから輸入された自転車用補助エンジンの「スミスホイールモーター」をフロントカー(前方に荷台を持つ前2輪・後1輪の貨物運搬用自転車)に取り付けたのです。のちに製造時からこのエンジンを備えた前1輪・後2輪レイアウトのオート三輪が製造されました。

 1920年代に入ると英J.A.P製オートバイエンジンを搭載し、馬力と積載性を高めたオート三輪が登場します。この頃、市場からのニーズに応えるカタチで自然発生的にオート三輪の製造会社が誕生し、零細メーカーが群雄割拠することになりました。これらの多くは外国からエンジンを輸入し、国内で製造した車体を販売していました。

 エンジンを含めた純国産のオート三輪が登場するのは1926年のことで、広島の宍戸オートバイ製作所が元祖とされています。これは家内制手工業によりごく少数を製造しただけに留まりました。メーカーによる本格的な生産は日本自動車(のちに日本内燃機へ改称、東急くろがねを経て現・日産工機)が最初で、それまでのJ.A.P製に代えて自社製エンジンを搭載した車両を1929年から生産しました。続く1930年からはオート三輪用エンジンを製造していた発動機製造(現・ダイハツ)が自社で車体製造にも着手して完成車の販売を開始し、1931年には東洋工業(現・マツダ)も市場に参入。その結果、資本力のあるこれら3社がオート三輪製造の御三家として君臨することになりました。

大型化と高性能化を果たしたオート三輪が戦後の復興に貢献

 戦前におけるオート三輪の生産は1937年にピークを迎え、全メーカー合わせて1万5230台ほどが製造されました。しかし、これ以降は日中戦争と太平洋戦争の戦乱により、生産の縮小を余儀なくされます。

 1945年8月に終戦を迎えると、荒廃した国土再建のためGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は、各メーカーに対してトラックやオート三輪など復興に必要な自動車について生産再開を許可しました。それを受けていち早く製造を開始したのは、日本自動車から独立した日本内燃機、発動機製造、東洋工業の御三家でした。それらに加えてGHQの航空禁止令で市場を失った航空機メーカーも新たに参入します。これらの新規参入メーカーが、航空機製造で培った技術をフィードバックした結果、オート三輪の商品性は大幅に向上し、市場は活性化しました。

 1940年代後半~1950年代にかけてのオート三輪のトレンドは、エンジンと車体の大型化でした。1947年の規制緩和で排気量制限が戦前の750ccから1500ccへと拡大。さらに、1951年の道路運送車両法改定により、全長や全幅、排気量についての制約が撤廃され、制約は排気量に応じた積載量のみになりました。750cc車は750kg積み、1000cc車は1t積み、1200cc車が1.5t、1500cc車が2tまでとなったのです。これによりオート三輪は恐竜的な進化を遂げ、1953年頃には全長6.09m、全幅1.93m、荷台長3.9mという小型トラックのサイズを上回る大型車が登場するに至りました。

 同時に、オート三輪は高級化路線を突き進み、戦前までは吹き曝しだったキャビンにウインドスクリーンが装着され、やがてキャンバストップの屋根がつき、最終的にはドアがつけられた全天候型の金属製フルキャビンが備わりました。運転操作もバイク型のバーハンドルから四輪車の円形ハンドルへと変更され、始動方法はキックスターターからセルスターターへと進化しました。荷重の増大や高速化に対応するため、変速機は従来の3段式ではなく4段式が主流となりました。

軽規格の「ミゼット」ブームも衰退。近年、輸入車によって復活の兆し?

 しかし、オート三輪の隆盛は長くは続きませんでした。1954年にトヨタが廉価な小型トラックとして初代「トヨエース」の販売を開始すると、走行性能に勝る四輪トラックによって徐々にオート三輪の市場は侵食されていきます。さらに、高度経済成長期に入って道路交通が高速化すると、カーブで転倒しやすく、高速走行に不向きで、居住性にも劣るオート三輪はユーザーから敬遠されるようになります。その結果、下位メーカーから廃業や倒産が相次ぎました。

 1957年にはダイハツから軽自動車規格のオート三輪「ミゼット」が発売され、商店主などを中心に爆発的なヒットとなりました。これを受け、マツダ「K360」や三菱「ペット レオ」などのフォロワーを生みますが、そのブームも軽四輪車の登場により10年ほどで鎮静化しました。

 最後までオート三輪市場に残ったのは、かつての御三家の一角であるダイハツと東洋工業でした。ただ、その2社も時代の流れには逆らえず、ダイハツは1972年、東洋工業は1974年にオート三輪の生産を終了しています。

 こうして1度は路上から完全に姿を消したオート三輪ですが、最近になって中国やタイ、パキスタンからの輸入というカタチで日本に再導入されています。これは「トゥクトゥク」や「オートリキシャ」と呼ばれる車両で、大元をたどれば日本のオート三輪へと遡ります。

 これらは、法律上は「側車付き二輪」に分類されるため、運転するには普通自動車免許が必要です。販売価格が70~150万円ほどと比較的安価なことに加え、レトロなルックスが若い世代にもウケていることから、販売は好調なようです。ひょっとすると、これらのアジア製オート三輪は今後ちょっとしたブームになるかもしれません。(山崎 龍(乗り物系ライター))

文:乗りものニュース 山崎 龍(乗り物系ライター)
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

三菱「最新コンパクトSUV」に注文殺到! 全長4.4mちょうどいいボディ×進化版ダイナミック顔! 「リッター24キロ超え」で“スゴい四駆”搭載の「エクスフォースHEV」タイで実車公開!
三菱「最新コンパクトSUV」に注文殺到! 全長4.4mちょうどいいボディ×進化版ダイナミック顔! 「リッター24キロ超え」で“スゴい四駆”搭載の「エクスフォースHEV」タイで実車公開!
くるまのニュース
新しいスズキ ワゴンR登場!──GQ新着カー
新しいスズキ ワゴンR登場!──GQ新着カー
GQ JAPAN
新「“超本格”SUV」発表! ド迫力「カクカクボディ」に“マットカラー×ハシゴ”採用! 580馬力超え「V8搭載」のメルセデスAMG「G63 オフロード プロ エディション」発売!
新「“超本格”SUV」発表! ド迫力「カクカクボディ」に“マットカラー×ハシゴ”採用! 580馬力超え「V8搭載」のメルセデスAMG「G63 オフロード プロ エディション」発売!
くるまのニュース
新品なのに経年変化を表現!? G-SHOCKと「beautiful people」のコラボ第2弾はレザー“風”の樹脂バンドで新旧が交錯する面白さ!
新品なのに経年変化を表現!? G-SHOCKと「beautiful people」のコラボ第2弾はレザー“風”の樹脂バンドで新旧が交錯する面白さ!
VAGUE
ナイキ「エア マックス プラス プレミアム」新作はブラックレザーのリュクスな逸品──GQ新着スニーカー
ナイキ「エア マックス プラス プレミアム」新作はブラックレザーのリュクスな逸品──GQ新着スニーカー
GQ JAPAN
エンジンの故障で最も酷い症状!! 直すにはエンジンのオーバーホールが必須!?「焼きつき」とは?
エンジンの故障で最も酷い症状!! 直すにはエンジンのオーバーホールが必須!?「焼きつき」とは?
バイクのニュース
最新ブリザックの冬性能はどう? アイスバーンに深雪 過酷な北海道・旭川の一般道で試した ブリヂストンの新スタッドレス「ブリザックWZ-1」の“安心感”とは
最新ブリザックの冬性能はどう? アイスバーンに深雪 過酷な北海道・旭川の一般道で試した ブリヂストンの新スタッドレス「ブリザックWZ-1」の“安心感”とは
VAGUE
「ランクル」より大きい日産「“新”3列最高級SUV」日本導入決定で問合せ“殺到”に! 全長5.3m超えの巨体に「V6TT&4WD」搭載! ユーザーから寄せられた販売店への反響は?
「ランクル」より大きい日産「“新”3列最高級SUV」日本導入決定で問合せ“殺到”に! 全長5.3m超えの巨体に「V6TT&4WD」搭載! ユーザーから寄せられた販売店への反響は?
くるまのニュース
駅舎もプラットフォームもないのに確かに「駅」が存在する! 神奈川にある謎の「JR梶ヶ谷駅」の正体とは?
駅舎もプラットフォームもないのに確かに「駅」が存在する! 神奈川にある謎の「JR梶ヶ谷駅」の正体とは?
WEB CARTOP
2026年はこいつを作れ!! 名車ランチア・デルタの1/8ミニカーキットがリアルすぎる!!
2026年はこいつを作れ!! 名車ランチア・デルタの1/8ミニカーキットがリアルすぎる!!
ベストカーWeb
リアホイールが丸見えの「片持ちスイングアーム」 どんなメリットがある?
リアホイールが丸見えの「片持ちスイングアーム」 どんなメリットがある?
バイクのニュース
浅草の人気ホテル「リッチモンドホテル浅草」が刷新! “旅慣れた大人”が選ぶ特別な空間へ 北欧デザインと日本の伝統工芸が調和した新客室とは
浅草の人気ホテル「リッチモンドホテル浅草」が刷新! “旅慣れた大人”が選ぶ特別な空間へ 北欧デザインと日本の伝統工芸が調和した新客室とは
VAGUE
スズキ『ワゴンR』が全車「カスタムZ」デザインに統一、安全&快適装備充実 価格は143万円から
スズキ『ワゴンR』が全車「カスタムZ」デザインに統一、安全&快適装備充実 価格は143万円から
レスポンス
ENEOSや日本郵船ら4社、船舶向けメタノール燃料供給網を米国で構築へ…共同検討開始
ENEOSや日本郵船ら4社、船舶向けメタノール燃料供給網を米国で構築へ…共同検討開始
レスポンス
コンパクトでも広さは“ゴルフ級”! 2026年後半発売予定のフォルクスワーゲンの新モデル「ID.ポロ」の印象とは? “らしさ”満点の質実剛健な走りに期待大
コンパクトでも広さは“ゴルフ級”! 2026年後半発売予定のフォルクスワーゲンの新モデル「ID.ポロ」の印象とは? “らしさ”満点の質実剛健な走りに期待大
VAGUE
9年ぶり全面刷新! マツダ「新型“5人乗り”SUV」に問合せ“殺到”!? 黒が効いてる「精悍フォルム」×全長4.7m級で「ちょうどイイサイズ」! まもなく発売の“最量販”モデル「新型CX-5」販売店に寄せられた「期待の声」とは
9年ぶり全面刷新! マツダ「新型“5人乗り”SUV」に問合せ“殺到”!? 黒が効いてる「精悍フォルム」×全長4.7m級で「ちょうどイイサイズ」! まもなく発売の“最量販”モデル「新型CX-5」販売店に寄せられた「期待の声」とは
くるまのニュース
テーマは「馬」、MOMOが日本限定ステアリング「JAPAN YEAR モデル」を199本限定で発売
テーマは「馬」、MOMOが日本限定ステアリング「JAPAN YEAR モデル」を199本限定で発売
レスポンス
F1モナコGPはますます煌びやかに……ルイ・ヴィトンが2026年開催のタイトルスポンサーに決定。特製トランクケースも用意
F1モナコGPはますます煌びやかに……ルイ・ヴィトンが2026年開催のタイトルスポンサーに決定。特製トランクケースも用意
motorsport.com 日本版

みんなのコメント

18件
  • fel********
    トゥクトゥクは日本ではトライク扱いで普通自動車免許が必要。
    側車付き二輪車は自動二輪免許が必要。
  • qdc********
    トライクをよく見る?????
    見ねーよ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村