2020年9月2日、ダイムラーAGはメルセデス・ベンツの新型Sクラス(Mercedes-Benz S-Class/W223)を発表した。そしてドライブパイロットと呼ばれる自動運転レベル3を実現するシステムを搭載したモデルの導入にも言及している。
Aクラス以上の小回り性能を実現するオプション設定も
メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルの歴史は1951年に登場したモデル220(W187)にまでさかのぼり、1972年に初代Sクラスが発売されてからもラグジュアリーセグメントでベンチマークとされてきた。ショーファードリブンとしてまたモデルによってはドライバーズカーとして、さまざまな場面でオーナーを楽しませてきたSクラスが、2020年9月にフルモデルチェンジを迎えた。
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シルエットは大きく変わっていないようにも見えるが、フロントオーバーハングは大幅に短くなり、フロントガラスからルーフ・リアガラスまでのラインをよりなだらかにするなど、流麗なボディスタイルを成形している。ホイールベースも伸ばすことでエレガントになった印象を受ける。またボディサイドは、近年登場したメルセデス・ベンツモデルに準じるように、大きな曲面を使うことで強いキャラクターラインを見せないようなデザインを取り入れられている。
フロントマスクは低重心をイメージさせるもので、ヘッドライトは上下に薄くスマートに、フロントグリルは逆に大きく高さを出すことで存在感を演出する。
ボディサイズは従来よりひと回り大きくなり、標準ボディ(ショートホイールベース)で全長5179mm/全幅1954mmとそれぞれ55mmほど拡大、さらにホイールベースも約70mm伸びて3106mmとしている。これは主にリアシートの居住空間拡大にあてられて、足を伸ばした時の快適性につながるレッグルームは41mm伸びている。
これだけボディが拡大すると気になるのが、日本の道路事情における取りまわしやすさだろう。住宅街やショッピングセンターの駐車場など狭い場所で小回りが効かずに神経を使うことになるからだ。実際に最小回転サークル(日本の最小回転半径とは計測方法が違う)は12.2mと、従来の11.9mより0.3m大きくなっている。しかし、その対策としてメルセデス・ベンツは「リアアクスルステアリング」と呼ばれる四輪操舵システムをオプション設定してきたのだ。
これはリアタイヤの向き(トー角)を最大で10度回転させることで、小回り性を大幅に向上させるというもの。最小回転直径は2m近くも小さくなり、10.5mを実現する。この数値だけではスゴさがわからないかもしれないが、同ブランドのコンパクトハッチバックであるAクラス(11.0m)より0.5mも小さいのだ。このシステムは60km/h以下で旋回性能や俊敏性を高める方向へリアタイヤを操舵され、逆に60km/hを越えると走行安定性を高めるよう同位相へと変化する。
搭載されるパワートレーンはまず3L 直列6気筒ターボエンジンが用意される。ガソリン仕様はスタータージェネレーター(ISG)と48V電源を組み合わせたマイルドハイブリッド(MHEV)としてS450とS500の2種、ディーゼル仕様も同じく3L直6ターボでS350dとS400dが用意される。この発表に続いてV8エンジンモデルが、そして2021年にプラグインハイブリッド(PHEV)が追加される予定だという。
「ドライブパイロット」と名付けられ運転支援システムは自動運転レベル3の域に達し、2021年後半から条件付き自動モードで運転できるようになるという。光学式レーダーとも言われるLiDAR(ライダー)や高解像度のHDマップなどの採用により、高速道路を60km/hまでであればハンドル操作なしに、そしてドライバーの前方注視を必要としないドライブが可能になる。
今回の発表から少し遅れて2021年後半にドライブパイロット搭載モデルの生産が始まる。このモデルが登場すれば運転席でテレビ電話を繋いだり、インターネットを楽しむなど時間の有効活用ができるようになる。ただし、運転席を離れたり長時間後方を向く、睡眠するなど10秒以内に手動運転に復帰できないような行動はできない。
日本市場への導入時期は未発表だ。また、ハイパフォーマンスなメルセデスAMGモデル、究極のショーファードリブンであるメルセデス・マイバッハ、またクーペやカブリオレといったボディバリエーションなどについても今後の発表を待たなければならない。
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