日産自動車(以下、日産)が長年製造するVQエンジンの特徴とは? 国内外から高い評価を受け続ける理由を考えた。
VQ38DDの魅力
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本来は最新の可変圧縮比エンジンを体験するイベントだったが、クローズドな環境の試乗会場には、“おまけ”として北米で販売するミドサイズ・ピックアップトラック、「フロンティア」が用意されていた。
搭載するのは1994年に登場したVQシリーズの最新版、「VQ38DD」である。VQはV6エンジン・シリーズの名称で、2桁の数字は排気量を表す。38は3.8リッターの意味だ。数字の後につく記号はそのエンジンの特徴や機能を示し、DDの場合は直噴システムと可変バルブタイミング機構を備えているのを意味する。
フロンティアはVQ38DDを縦置きに搭載し、新開発の9速AT(ジヤトコ製)を組み合わせる。ピックアップトラックだからそう表現するわけではないが、アクセルペダルを踏み込んだときのピックアップ(反応)がいい。大排気量自然吸気エンジンのなせる技だ。おそらく、日産としては「大排気量V6エンジンに期待するのはこういうことでしょ?」と、意識して作り込んでいるのだろう。
そのままアクセルペダルを踏み込んでいくと、ほとんど振動をともなわずにスムーズに回転をあげながら、トルクを盛り上げて、期待どおりに、クルマを加速してくれる。ハイウェイのランプを力強く駆け上がり、そのまま合流レーンで高回転まで引っ張りながら車速を上げ、走行レーンに落ち着いたらアクセルを戻してV6エンジンが奏でる特有のハミングをBGMにクルージングに移行する。そんなシチュエーションで存分に気持ち良さを味わわせるキャラクターの持ち主だ。
「大排気量V6自然吸気エンジンは、やっぱりいいなぁ」と感じさせる魅力がVQ38DDにはあった。
軽く、滑らかに吹き上がるエンジン
VQエンジンは日本初の量産V6エンジンであるVGシリーズ(1983年デビュー)の後継だ。VQは「コンパクトなDOHCエンジン」にするのが、開発にあたっての狙いのひとつだった。
それまではシングルカムが主流だったが、1980年代半ばから1990年代にかけて吸排気のバルブ駆動にそれぞれ専用のカムシャフトを設けて高性能化を図るDOHC(ダブル・オーバー・ヘッド・カムシャフト)の勢力が増してきたのを受け、対応したわけだ。VGでもDOHC化はできたが(実際、DOHC化したVG30DEなどを市場投入した)、DOHC化によってかさばるため、とくにエンジン横置きのFWD(前輪駆動)車で搭載が難しくなった。
そこで、DOHCを前提に新設計したのである。VQの設計にあたっては、VGエンジンの開発で培った知見を織り込んで近代化。ピストンやコンロッドなどの運動系部品や、シリンダーヘッドやブロックなどの大物部品は軽く、コンパクトにし、吸排気系の取りまわしや補機のレイアウトは洗練された。VGと同様、後輪駆動用の縦置きだけでなく、前輪駆動用の横置きレイアウトを考えて設計した。
初代VQエンジンは、「鳥の羽のように軽やかに」が、エンジンを仕立てるうえでのコンセプトで、「FEATHERコンセプト」とも呼んだ。徹底的な部品の軽量化や基本構造の見直しによって、軽く、滑らかに吹き上がるエンジンに仕上がった。
もう少し具体的に表現すると、濁りのない音質による気持ち良い加速音、圧倒的な力強さによる気持ち良い高揚感の持続、アクセル操作にすぐ反応し、どこから踏み込んでもグッと加速する、思いどおりの軽快な、かつ力強いレスポンスを目指した。
これらの特徴は、最新のVQエンジンにも受け継がれている。
生まれ変わった新世代VQエンジン
VQは2006年に新世代に生まれ変わった。パーツの80%以上を新設計したというから実質的に別物かもしれないが、軽く、滑らかに吹き上がるという特徴はそのまま継承していたため、VQの名称を受け継ぐいだ。
新世代VQはさらなる高回転化を果たし、アクセルレスポンスを際立たせ、排気量を表す2桁の数字の後に「HR」の文字列を追加した。HRは「High Response(高応答)」、「High Revolution(高回転)」の略である。最初に市場投入したのはVQ35HRとVQ25HRで、この年新型に移行した「スカイライン(V36)」に搭載してデビューした。
VQHRシリーズが新たに採用した技術は多い。アルミダイキャスト製シリンダーブロックのデッキ高さを延長したのは、長いコンロッドを採用するためだ。コンロッドを延長するとピストンが上下するときの傾きが緩くなり、シリンダー壁との接触によるフリクションが低減する。同時に、ピストンは面圧の低い側のスカート幅を小さくし、さらなるフリクション低減を実現した。
シリンダーブロック底部には、クランクシャフトを支えるラダー(はしご)状のフレームを追加。剛性アップを果たし、高回転時の振動を抑制した。こうしたフリクション低減技術と剛性アップにより、VQ35HRは従来のVQ35DEより1000rpm以上も高い、7500rpmの最高回転数を実現した。
吸排気系には濁った音を低減し、クリアな音を強調するチューニングを施し、気持ち良い加速音を演出した。手をくわえたのは、フィーリング面だけではない。バルブリフターにDLCコーティングを施してフリクションを40%低減するなど、40項目以上の燃費向上アイテムを採用することにより、時代が求める燃費向上も図った。
2007年には吸気バルブの作動角とリフト量を連続可変で制御する日産独自の可変動弁機構、「VVEL(ブイベル)」を採用したVQ37VHRを導入した(2桁の数字が示すように、排気量は3.7リッターである)。軽く、滑らかに吹き上がるVQエンジンの頂点ともいえる存在だ。国内ではスカイラインクーペ(V36)に初めて投入され、現在は、現行「フーガ」でのみ選択できる。最高出力は333ps/7000rpm、最大トルクは363Nm/5200rpmである。最高回転数はVQ35HRと変わらず7500rpmだ。
VQエンジンは誕生から14年連続で、アメリカの自動車雑誌『Ward’s Auto World Magazine』の10ベストエンジンを受賞した。受賞理由のひとつは「地球上で最も滑らかで、気持ちいいV6エンジンだから」というものだったが、それは進化した現在のVQエンジンにもおなじ評価があてはまると思う。名画の価値がいつまでも変わらないのとおなじなのだ。
文・世良耕太
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