F31こと、2代目日産レパードの中古車相場が今、ちょっと凄いことになっている。
約30年も前の国産車の場合、普通であれば「5万円」とか「10万円」ぐらいの中古車もゴロゴロしているものだが、2代目レパードの場合は最安でも約80万円であり、最高価格はなんと770万円(※2020年6月下旬現在)。
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いったい、なぜ2代目レパードがここまで高騰しているのか? 中古車事情に詳しい伊達軍曹がレポートする!
文/伊達軍曹
写真/伊達軍曹 カーショップフレンド 日産
【画像ギャラリー】幻のレパードオープンカー&2代目レパードの前期型/後期型を写真でチェック!
2代目F31レパード(1986年2~1992年6月)とは?
『あぶない刑事』の劇用車として使用されたF31レパード
まず、2代目レパードの概要を解説していきたい。1986年2月にデビューした2代目F31レパードは4ドアハードトップの設定もあった初代モデルに対し、競合のトヨタソアラを強く意識した2ドアクーペとして登場した。
プラットフォームなど基本設計はR31スカイラインと共用で、開発責任者はR32GT-Rを手がけた伊藤修令氏。
搭載されたエンジンはトップグレードのアルティマに搭載される国産初の3L V6DOHC、NAのVG30DE(185ps)を頂点に、2L、V6インタークーラーターボのVG20ET(155ps)、2L、V6自然吸気のVG20E(115ps)の3タイプが用意された。
トランスミッションは前期型のVG20E搭載XJ-II/XJグレードに5MTが設定され、それ以外は4速ATのみの設定。
サスペンションはフロントがストラット、リアがセミトレーリングアームという当時の日産の高級車御用達の4輪独立式を採用。
アルティマには、超音波ソナーによる各種センサーが走行状況を検知し、電子制御により減衰力を3段階に切り替えることができる、電子制御サスペンション「スーパーソニックサスペンション」を組み合わせた。
1988年に行われたマイナーチェンジではバンパー類のデザインを変更し、やや丸みのあるデザインとなった。
1988年8月にマイナーチェンジしたレパード後期型
またインパネのデザインを変更するとともに全面ブルー液晶のグラフィカルデジタルメーターをホワイトのアナログメーターへ変更したほか、中折れ機構を持つ「パートナーコンフォタブルシート」を全グレードに拡大採用した。
アルティマ専用装備であった「スーパーソニックサスペンション」は、アルティマV30ツインカムターボ、アルティマV30ツインカムだけでなく、XS V20ツインカムターボにまで拡大採用され、ATのシフトロックも追加。
後期型には3L、DOHCセラミックターボのVG30DET(255ps)を追加、2Lターボは、VG20ETからVG20DETのセラミックターボ(210ps)に変更されている。
現在、中古車サイトを見ると、2代目レパードの中古車相場は、約80万から最高価格は770万円となっている。
2代目レパードの中古車情報はこちら!
2代目レパード専門店に取材!
神奈川県平塚市大神にショップを構えるF31専門店「カーショップフレンド」に取材に伺った
いったい今、生産終了から28年が経過した2代目日産レパードに何が起きているのか?
770万円という最高値物件を含む500万円台から700万円台の2代目レパード多数を販売している神奈川県平塚市のF31専門店『カーショップフレンド』の金澤孝士社長に、F31レパードの“現在地”を尋ねた。
――御社は、世にも珍しい「F31レパード専門店」なわけですね?
金澤社長 そうだね。今から30年前の1990年の12月に開業して、1991年に入ってからF31レパードを2台ぐらい仕入れたのがきっかけなんだけど、気がついたら割とすぐにF31専門店になっちゃいましたね(笑)。
――基本的にはどんな人が2代目レパードを買っていかれるんですか?
金澤社長 どんな人って、みなさん普通の人だけど、多くのお客様に共通してるのは『あぶない刑事』が大好きってことかな?
――1980年代後半に、柴田恭兵さんと舘ひろしさんのダブル主演でやってたドラマですね。で、主人公のタカ&ユージが劇中で乗ってたのがF31レパードでしたね!
金澤社長 うん、あのドラマの影響はなんだかんだいってかなりデカいみたいだね。あと、「あぶデカ」うんぬんにかかわらず、みなさん本当にF31というクルマが大好きで、夢中なんだよ。人生の中心に2代目レパードがあって、そのために働いてらっしゃるというか。
――そこまでですか!
金澤社長 うん。ご自宅を新築されるときもさ、まずはF31を停めるためのガレージをいの一番に設計して、その次にやっと人間が暮らす場所の設計を始める、みたいなお客様は多いよ(笑)。
ディーラーで新車で買った人が今も乗っている完全ワンオーナー車。ディーラー整備では満足できずフレンドさんに来るようになったという
――そういう方は、普段もF31に乗ってらっしゃるんですかね?
金澤社長 いや、ウチのお客様で言うと、年間走行距離はみなさん少なめだね。多い人でも年間2000kmぐらいで、少ない人だと年間500km以下かな?
――なるほど、普段は他のクルマを使って移動して、2代目レパードは「乗りたくなったときだけ乗る。普段は目で愛する」みたいな感じなんですね……って、それってほとんどフェラーリオーナーの生態と同じじゃないですか!
金澤社長 まぁ近いのかもしれないね。
なぜ中古車相場が高騰したのか?
フルレストア済みのレパード
フルレストア済みのレパードのエンジンも当然のごとくキレイな状態
――で、そんな感じで一部で根強い人気がずっと続いているから、相場が上がってるんですね?
金澤社長 そうだね。最近も偶発的に相場が上がっちゃうときがたまにあって、「何があったんだろう?」って思って調べてみると、たいてい、日本のどこかの地方テレビ局で『あぶない刑事』の再放送をやってる(笑)。
――なるほどぉ……。で、御社の場合は100万円台の物件も一部扱ってはいますが、たいていは600万円台以上のプライスになってますね? ……さすがにちょっと高すぎやしませんか?
755万円というプライスタグが付けられた1986年式前期型アルティマ。外装は純正色パールツートンよりゴールドツートンにセミレストア(エンジンルーム含む)。サンルーフは後期車両より移植。エンジンはフルオーバーホール済み
金澤社長 まぁ見てもらえればすぐにわかると思うけどさ、ウチはF31を単に仕入れて販売するんじゃなく、マニアックな方でも絶対に満足できるレベルまで持っていってるから。
エンジンはフルオーバーホールして、ピストンやピストンリングなんかは新品にしてます。そのうえでエンジンに結晶塗装を施して、新車時の輝きを取り戻しているんですよ。
内装も張り替えたり、オールペンなんかでも、普通の旧車はガラスやモールをマスキングして塗装すると思うんだけど、ウチはガラスやモールをすべて外して、いわゆるドンガラの状態で塗りますから。
だからね……例えば700万円でお売りしても、ほとんど利益なんか出ないんだよ(苦笑)。その後、保険とかを含めて長いお付き合いをしてもらって初めてなんとかなる――みたいな。
1988年式前期型XS-IIグランドセレクション、価格は589万円。2013年に程度の良いエンジン載せ替え済み、純正新品サスペンション交換済み(4本)。エンジンルーム、外装を仕上げて販売する予定
――なるほどぉ……。や、しかしですね、御社がフルレストアしているF31レパードが凄いのはわかりましたが、世の中はいろいろですから、「そこまで完璧じゃなくていいから、100万円台ぐらいの予算でほどほどのレパードを買いたい」と思う人もいるじゃないですか? そのあたり、どうなんですか?
金澤社長 うーん、よそのお店さんのことはわからないから、ウチに置いてある100万円台の個体で言うと、それってあくまでも「ベース車両」なんだよね。
そこからどう、いくらぐらいの予算をかけて仕上げていくかを、お客様とじっくり相談しながら決めていくためのベース車両。
そのままの状態では、仮に車検は通るとしても、普通に安心して乗っていただくことは絶対にできないな。
――そんなもんですか?
金澤社長 そんなもんですよ。だって、考えてもみてよ。30年落ちのクルマって、人間でいえば「かなりのおじいさん」ですよ、確実に。
当然ながら皮膚はシワだらけだろうし、目は白内障かもしれないし、足腰も相当弱ってる。
そんなおじいさんを、ちょっとお風呂に入れてマッサージして、着替えさせただけで「じゃ、全力疾走してみてください」って言っても、絶対無理じゃない? すぐにケガして入院しちゃいますよ。
クルマも、それと同じなんですよ。やるんだったら中も外もイチからしっかり直してあげないと、とてもじゃないけど走れたものではないんですよ。
1990年式アルティマターボ。価格は520万円。元色パールツートンからワインへセミレストア。エンジンフルオーバーホール済み、外装セミレストア。アルミホイールはワークの18インチ新品装着
――ううむ……。
金澤社長 まぁとにかく一番いいのは「いろいろなF31を見てみる」ってことじゃないですか? 100万円とか150万円ぐらいの個体を実際にご覧になってみるといいですよ。そうすれば、私が言ってることがわかると思う。
――う~む、ちゃんとしたF31に乗りたいと思ったら、けっこうな大金が必要なんですね……。
金澤社長 そうでもないよ。「気は心」じゃないけどさ、人間としてちゃんとしてる人が、予約を取ったうえでウチに来てくれて、「本当にF31が大好きなんですが、どうすればいいでしょうか?」みたいな相談を真剣にしてくれるなら……、その人がちゃんとしてる人である限り、オレはなんとかするよ。うん……、本当に、なんとかする!
――まぁ確かに今、金澤さんとお話をしていて「この人、カネじゃ動かねえだろうな……」みたいな空気はビンビンに感じてますので(笑)、わかる気はします。ということで興味がある人は、必ず予約を取ったうえで、カーショップフレンドを訪問してみてください。で、最近人気のグレードは?
金澤社長 昔から一番人気は前期型(1986~1988年)のゴールドのツートンだね。後期型(1988~1992年)だと、ダークブルーのツートンが人気だよ。
取材協力/カーショップフレンド
http://www.carshopfriend.com/zaiko/index.html
※ ※ ※ ※ ※
主には「あぶデカ世代」に人気だというF31型日産レパードだが、最近は、免許取り立ての18歳男子が買いに来ることもあるという。
購入し、そして維持していくのに「それなりのカネ」がかかることは間違いないだろうが、それでも、今となってはワン・アンド・オンリーな個性が光る2代目レパード。
興味のある人は、本文中で金澤社長が言っていたとおり「いろいろな個体」をまずは見て回ることをおすすめする。そうしているうちに、自ずと「答え」は出てくるはずだ。
■2代目レパードアルティマ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4680×1690×1370mm
●ホイールベース:2615mm
●重量:1460kg
●エンジン:VG30DE型V6DOHC
●排気量:2930cc
●最高出力:185ps/6000rpm
●最大トルク:25.0kgm/4400rpm
●トランスミッション:4速AT
●タイヤサイズ:215/60HR15
●価格:383万7000円
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