3.0L V6ターボガソリン+駆動用モーター
超高級SUVが、かつてないほど優れた燃費効率と低い環境負荷を実現したとき、その能力をわかりやすく示す方法とは何だろう。しかも従来と変わることなく、余計な気使いなしに、安楽に乗れるモデルなら。
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ブランド初のプラグイン・ハイブリッド(PHEV)、ベンテイガ・ハイブリッドは、まさにそんなクルマだ。世界で成功を収める超高級SUVに電動化技術が搭載されているが、従来のベントレーのように運転することができる。
ボディサイズを考えれば控えめな3.0L V6ターボガソリン・エンジンに、127psの駆動用モーターが組み合わされている。荷室のフロア下には最長40kmを電気の力だけで走行できる、13.3kWhの駆動用リチウムイオン・バッテリーが積まれている。
ボンネットを開くと、カバーの下には鮮やかな高圧ケーブルとつながった、謎の黒い箱が並んでいる。それでいて、ラグジュアリーなインテリアの雰囲気はそのままだ。
ただし、公式の燃費やCO2の排出量が現実的なものとはいい難いことは、読者もご存知のとおり。ベンテイガ・ハイブリッドのカタログには、28.7km/Lと79g/kmという数字が記載されている。
ちなみに、4.0L V8ツインターボ・エンジンを搭載したベンテイガ V8の場合、平均燃費は7.7km/L。CO2の排出量は294g/kmと、その差は大きい。
最初の目的地はクルーのベントレー本社
ベントレー側も、PHEVのカタログ値が実際の利用環境で得られるものとは異なると認識している。では、満タンのガソリンでどこまで遠くへ走れるのだろうか。魔法のじゅうたんで運ばれるような、スムーズな心地良さは変わらないだろうか。
少なくとも、英国仕様では0-100km/h加速がベンテイガ V8より0.8秒遅れることは、明らかなようだ。PHEVの大型SUVが、5.2秒で静止状態から100km/hまで加速できるなら、まったく不満はないのだが。
そんな疑問を解決する方法は1つ。自らベンテイガ・ハイブリッドで長距離ドライブに出るしかない。しっかり休憩は取るつもりだが、長旅での疲労感も確かめることができる。
どこを目指すべきか。まず最初に英国南西部、コッツウォルズにある筆者の拠点から、中部のクルーにあるベントレー本社まで、約210kmを北上することにした。
片道およそ3時間。クルーでは、道中で感じた疑問を技術者に尋ねることができる。電話でアポを取ると、ベントレーのテクニカル・コミュニケーション部門を率いるジョン・スメドレー氏が快く応じてくれた。詳しい同僚も同席できるという。
クルーでは、家族ぐるみで親交のあるフォトグラファー、マックス・エドレストンとも落ち合うことにした。順調に旅を始められそうだ。
クルーへ着いても、まだガソリンには余裕がある。次の目的地を検討していると、英国東部のエセックス州にある、P&Aウッド社というロールス・ロイスとベントレーの販売店へ立ち寄るアイデアが浮かんだ。
合計約800kmを無給油で走る
ここは、オースチン・セブンの販売で得た利益をもとに、ポールとアンディというウッド兄弟が1967年に創業した場所。クラシックなロールス・ロイスやベントレーに対する愛情を、空間としても表現されている。
最新モデルも扱っているが、ビジネスの魂は常にヘリテイジ・モデルにある。前回の訪問から数年が経ち、小さくない変化が生まれているはず。最新のベンテイガ・ハイブリッドと、彼らが保有するクラシックとの出会いは、素晴らしいものになるだろう。
クルーにあるベントレーの本社からP&Aウッド社までは、幹線道路を使って約300km。そこからもう一度クルーに戻るまで、合計約800kmを走ることになる。
筆者の感覚としては、途中で1度駆動用バッテリーを充電すれば、ガソリンは無給油で走りきれると踏んだ。通常のベンテイガ V8が1度の満タンで走れる距離より160km以上長いことになるが、PHEVの能力なら叶えられるはず。
P&Aウッド社へ電話をかけると、アンディの娘でマネージング・ディレクターを務めるジョルジーナ・ウッド氏が出てくれた。イベントの準備で忙しいようだったが、いつもと変わらず訪問を歓迎してくれた。
「お茶を飲んで、クルマを眺めていってください。開業から54年かけて作り上げてきた、わたし達の文化です」。と。
燃費効率はV8エンジン版より50%向上
筆者は夜明け間際の運転が好きだ。出発は5時半。南北に伸びる高速道路、M6号線を使う。途中のサービスエリアで休憩を挟んでも、クルーの本社には8時40分に到着してしまった。エドレストンとも合流した。
待ち合わせは、ピムズレーン通りに面したCW1ハウスというベントレーのショールームに9時。それでも、スメドレーは既に待っていた。ハイブリッド・システムを説明する準備を整えた状態で。
彼と挨拶をすると、高電圧技術を専門とするヨー・デュライ氏も加わり、本格的な説明が始まった。彼女のキャリアは、ベンテイガ・ハイブリッドとともに築かれたとという。自信に満ちていながら、控えめだ。
4年間に及んだ開発は、小さな成果と呼ぶには有り余る。電圧313Vのシステムを搭載した超高級SUVを仕上げるには、深い知識と確信が求められるという、言葉にはないメッセージも受け取ることができた。
改めてコーヒーを飲みながら、PHEVの燃費効率の可能性について確認する。V8エンジンのベンテイガより、最大50%の向上が期待できるという。
話はモニターを中心とした、ガジェット類へ進む。ナビゲーション・システムと連携し、最も効果的に駆動用バッテリーの電力を設定ルート上で利用することが可能だという。単に、必要な電気を駆動用モーターへ供給しているわけではないのだ。
この続きは後編にて。
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