街なかでも営業車以外では見かける機会が大きく減少した「セダン」だが、そんな時代だからこそ逆にセダンには希少価値が生まれているようにも思える。そこで、今あらためて「4ドアセダンの価値」について考えてみたい。
※本稿は2023年10月のものです
文/伊達軍曹、写真/ベストカー編集部、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ
初出:『ベストカー』2023年11月10日号
カムリも生産終了……不遇の時代だからこそ選ぶ価値アリ!? ちゃんとした大人になりたいなら「セダン」に乗るべきだ!!!
■今セダンを選ぶ理由は?
さすがにここまで希少じゃなくてもいいのだが、こういったシブさが今、魅力的に思えるのだ
完全なる不人気ジャンルとなってしまった「セダン」。乗用車市場における直近のシェアは、約8%といったところだろうか。とにかく売れてない。なんとか頑張っていたトヨタのカムリも、2023年いっぱいでの生産終了がアナウンスされた。
だが、それがどうした? セダンが好きなら今後も乗ればいいし、好きじゃなかった人も、今こそセダンに乗ってみるべきなんじゃないか? とぶち上げるのがこの企画である。
なぜセダンに乗るべきなのかといえば、まずは大前提として「市場シェア」だとか「トレンド」などは、本来は“どうでもいいこと”であり、男は(いや女性も)己の信念にのみ基づいてクルマ選びを行うべきだからである。
そして第二の理由として「よく考えると、セダンってやっぱいい乗り物じゃん」という身もフタもない事実があるわけだが、それに加えて「世の中一般がセダンというものに見向きもしない今だからこそ、そこには“圧倒的な希少価値”とでも呼ぶべきものが生じている」という第三の理由もある。
SUVもミニバンも悪かないが、世の中の全員が金太郎飴的な選択をしても面白くない。だから、今こそオーセンティックなセダンに注目してみようじゃないか!
■魅力1:フォーマル感にあふれている
「独立したトランク」を有するだけでも、クルマのフォーマル感がぐっと上がるものだ
SUVでフォーマル感を感じさせるには、2500万円ほどを捻出してレンジローバーあたりを買うほかなく、ミニバンでも、現行型アルファードあたりを買わない限りはなかなか難しいだろう。
しかし伝統的な3ボックススタイルのセダンであれば、きれいに洗車されたフルノーマル車である限りどんな車種であっても、なんとなくのフォーマル感が漂うものだ。
世の中全体がなんとなくラフで乱雑な方向へと向いている今だからこそ、まるでビシッと7:3に横分けした髪をヘアリキッドで整えたかのようなセダンのフォーマル感が、異彩を放つのである。
■魅力2:運動性能と乗り心地に優れる
クーペとはまたちょっと違うが、非常にバランスのよい走りが味わえるのが「セダン」だ
近年はSUVやステーションワゴンであっても、自動車工学の進歩により「荷室がデカいことによる重さや慣性、あるいは開口部が多いことによるボディ剛性の低さ」をほぼ感じさせない場合が多い。だがそれは「ほぼ」であって、「まったく感じさせない」ではない。
しかしバランスのよい3ボックス形状で開口部が少なく、なおかつ低重心でもある4ドアセダンなら、さすがに2ドアクーペほどではないにしても、シュッとした走りと良好な乗り心地を常に堪能できるのだ。またSUVやミニバンと違って「空力性能に優れる」という魅力もある。
■魅力3:車内が静かで臭くないため快適
トランクが独立したタイプだと荷物のにおいが漂わないだけでなく、「車内の美観」も向上する
筆者は現在ステーションワゴンに乗っており、その前はSUVに乗っていたのだが、常に悩まされるのは「ネギのにおい」だ。
ネギ好きの筆者はあちこちで美味しそうなネギを買って帰るのだが、その際、ワゴンやSUVは荷室が独立密封タイプではないため、どうしてもネギのにおいが車室までただよってきてしまい、ゴージャスでワンダフルな気分が台無しになってしまうのである。
しかし独立したトランクを持つセダンであれば、そういったことに悩まされることもない。
またSUVやステーションワゴン、あるいはミニバンはどうしても後方の荷室付近からロードノイズが車内に侵入してくるが、セダンの場合はそれもほとんど感じない。
■魅力4:都市部においても駐車場を選ばない
都市部の駐車場でもいちいち「高さ制限」を気にする必要がないのは本当にありがたい
おもいっきりカントリーなエリアにお住まいな方には関係ない話かもしれないが、都市部においては「駐車場の高さ問題」というのがけっこうある。
外出先で駐車する場合や、自宅がマンションだったりする場合は「立体駐車場」を利用するほかない場合が多く、その際、SUVやミニバンだと「高さ制限の関係で入庫できない」ということがけっこうあるのだ。
しかし、例えば先代トヨタ クラウンの場合でも、セダンの全高はせいぜい1455mm。「1550mm以下」に制限されている場合が多い立体駐車場であっても何ら問題なく突っ込める。ナイスだ。
■大人はちゃんとしているほうがカッコいい!!
ある意味「時代遅れ」なのかもしれない。だがセダン特有の「ちゃんとしてる感じ」には、大人からするとタイムレスな価値が感じられるものだ
セダンという乗り物が今なお魅力的であると考えられる具体的な理由は、ここまでに示した4つだ。
それらはどれもそのとおりなわけだが、それ以前の大前提として「大人は“ちゃんとしてる”ほうが断然カッコいい」という認識が、筆者にはある。そしておそらくは世間一般においても、その認識はあるのではないか。
若者の場合は逆に「ちゃんとしていなければいないほどカッコいい」という認識が、その深層心理にある。
そういった深層心理の現われとして、例えば大昔の学生は学帽をわざとボロボロにして、それをアミダに被った。「ちゃんとしてる」のはカッコ悪いから、体制に組み込まれるのはダサいから、そうしたのだ。
また直近の若者のことはよく知らないが、昭和後期の中学生や高校生は、いわゆるヤンキー層ではない階層の生徒も、どこかで「ツッパリ文化」の影響を受けていた。
これも「ちゃんとしてるのはカッコ悪い」「体制に組み込まれてるように見えるのはダサい」という心理の現われだ。
■セダンは「ちゃんとしてる感じ」に価値がある
2023年9月に先行公開された、2024年春発売予定の新型ホンダ アコード。セダンはまだ終わっちゃいないぜ!
そういった若者特有の心理は理解できるが、それが許されるのは、「反抗的な態度」がカッコよく見えるのは、若い時だけである。
そして大人となった以降は、「ちゃんとしていればいるほどカッコいい」という具合に、物差しの種類が代わるのだ。
高価なモノでなくても構わないので清潔な衣服を着用して、日々のあいさつをきっちり行い、何かよきことを施されたらしっかりお礼を言う。
任された仕事は責任をもって完遂する。「一時停止」の標識がある場所ではちゃんと一時停止する、といった具合に「ちゃんとしている」大人のほうが、そうではない大人の推定500倍はカッコよく見えるものだ。
もちろん世の中には文句を言いたいこと、理不尽な決まりごとなどもたくさんある。だがそういったものに大人が“反抗”してもダサいだけではないか。
もしも大人が何らかの理不尽に対抗したいのであれば、やるべきは幼稚な反抗ではなく「本気の戦い」であるはずなのだ。
私がここで言っていることは大げさで、抽象的に過ぎるかもしれない。だが「あえて今こそセダンに乗りたい」と考える理由の“根本”は、こういったところにあるのだ。
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みんなのコメント
自分の用途好みで乗ればいいんじゃ?
今の時代、見栄えやステータスで車を選ぶ人が多いから、輸入車やデカイミニバンが売れる。
そこからあふれた層は一気に軽自動車って感じ。