◆W1乗りにとっては特別なブランド
カワサキ『W1SA』(1971年/昭和46年)を30年間所有している“ダブワン”乗りの筆者(青木タカオ)としては「メグロ」と聞いて、気持ちが昂ぶらないわけがない! カワサキの歴史において、メグロは重要な役割を果たした大センパイだからだ。
『カワサキ250メグロSG』(1964年/昭和39年)が60年間の時を経て、ついによみがえった。それが『メグロS1』(72万500円)だ。
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ダブワン乗りたちがメグロをリスペクトするのは、そのルーツがメグロにあるからで、空冷4ストローク並列2気筒OHV2バルブエンジンを心臓部とする『カワサキ650W1』(1966年/昭和41年)は、『カワサキ500メグロK2』(1965年/昭和40年)の改良版であった。
それだけに、ダブワンの愛好家にはメグロファンがとても多い。オーナーズミーティングに行けば、メグロの姿も必ずあり、両車どちらも複数台を所有するオーナーも少なくない。
◆正真正銘のメグロだ!
実車を目の当たりにすると、メグロの正統な後継車であることがすぐにわかった。ニーパッドを備えたブラックとクロームの燃料タンクには、かつて七宝焼だった時期もある立体エンブレムが伝統のデザインで掲げられているではないか。
もうこれだけで、筆者をはじめとするファンは泣いて喜ぶ。まさにマニア垂涎ものだが、フロント18/リヤ17インチのワイヤースポークホイールや、エッジ処理を施した専用設計のスチールフェンダー、クラシカルな大型ウインカーや130mm径の丸形LEDヘッドライトなどがトラディショナルなスタイルによく似合う。
クラシックな水平基調の形状を際立たせるシートには、サイドからテールにかけてホワイトのパイピングが施されて、上質感を漂わせている。
◆キモは重いフライホイール
そして、乗ればゆったりとしたライドフィールが味わえる。4ストローク空冷単気筒SOHC2バルブエンジンはボア67.0××ストローク66.0mmで、排気量は232cc。高い慣性モーメントを発揮する重いフライホイールを採用し、スロットルワークに過敏さのない穏やかで落ち着いた出力特性にしている。
トコトコとした心地よいライドフィールは、サウンドチューニングによって徹底追求された排気音も大きく影響していると、開発リーダーの高谷聡志氏が教えてくれた。
試乗後、高谷氏に「歯切れのよい排気音がとてもいいです!」と興奮して伝えると、マフラーのカットモデルを手にし、『カワサキ250メグロSG』と同様の内部構造を再現したと、高谷氏は胸を張った。シンプルな構造ながら、音量規制もクリアしているから舌を巻く。エンジンクランクケースの下に、消音室と触媒を隠し持つことで実現した。
また、低回転域でエンジンストールしにくいECUセッティングが施され、ギヤ駆動のバランサーを採用することで不快な微振動を低減したという。開発チームでとことん走り込み、この味わい深さを実現しているのだ。
◆「W230」と迷えるシアワセ
ベース車両は『W230』(64万3500円)で、レトロスタイルを持つ兄弟車の関係性と言える。2017年式にて生産終了した空冷250ccモデル『エストレヤ』の後継機種にあたり、メグロブランド創設100周年となる2024年、両モデルが日本市場に導入されたというわけだ。
もちろん、W1乗りの筆者であるから『W230』からも目が離せない。2023年秋に開催された「ジャパンモビリティショー2023」で世界初公開されると、腰を抜かした。翌24年春のモーターサイクルショーでも展示されると穴があくほど眺め、続報を待った。そして、ついに待望の試乗となったのだから感慨深い。
丸目1眼ライトに大きめのウインカーやテールライト。立体エンブレムのつく燃料タンクやシンプルなフラットシートなど、オーソドックスなオートバイらしいスタイルは筆者だけでなく、多くのWファンが魅了されることだろう。さらにも新たなファンも獲得し、人気絶大となること間違いない。
◆メグロS1とW230は何が違う?
『メグロS1』と差別化するようアナログ2眼メーターの文字盤が異なり、W230では黒とグレーでシンプル、メグロS1は黒×クリームで文字の書体が太く、メグロのロゴも赤字で入る。
シートは表皮が異なり、型押し模様のW230では黒と白のツートーン仕上げ。メグロS1はプレーン表皮で、白のパイピングが入る。シート高はカタログ値でW230が745mm、メグロS1が740mmで5mmの差があるものの、それはこのシート表皮によるものでしかない。
足つき性は抜群にいい。身長175cm、体重66kgの筆者がまたがると、両モデルともに両足がカカトまでベッタリと地面に届く。車体重量はどちらも143kg軽量で、小柄なライダーも取り回しで苦労することはなさそうだ。
メグロS1とW230、本格派クラシックスタイルで軽二輪クラスに2台も同時デビューしたのは、バイクファンにとっては朗報としか言いようがない。
煽ってはいけないが、争奪戦になるかもしれない。発表直後から販売店には問い合わせが殺到し、すでに納車待ちの状態という情報も入っている。気になる人は、すぐにカワサキプラザ店へ急ぐべきだろう。
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。
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でも、キャベツ1玉680円 高くて買わなかった 哀しい