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国産車として初の世界GP優勝マシン ホンダ「RC143」の栄光と道のりとは

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国産車として初の世界GP優勝マシン ホンダ「RC143」の栄光と道のりとは

世界の列強バイクメーカーを追い抜いた1961年、世界GPでの躍進

 ホンダのバイクを「モータースポーツでの活躍」と結びつけてイメージするファンは多いのではないでしょうか。FIMロードレース世界選手権(以下、世界GP)だけでも、ホンダは800勝以上の栄冠を手にしています。

【画像】ホンダ「RC143」(1960年型)をもっと見る(14枚)

 では、最初の1勝目はどんなバイクだったのでしょうか? その答えが、栃木県の「モビリティリゾートもてぎ」の敷地内に設けられた「ホンダコレクションホール」にありました(※2024年3月リニューアルオープン予定に向けて一時閉鎖中)。F1マシンと共に展示されていたゼッケン「60」のマシンが、ホンダに世界GP初優勝をもたらした「RC143」(1960年型)です。

 ホンダの最初の国際的な勝利は、1961年の世界GP開幕戦、スペインGPでの125ccクラスでした。ライダーは30歳のオーストラリア人、トム・フィリス選手です(前年のマシンを使用した経緯は後述)。

 1959年に始まったホンダの世界GP参戦は、伝統あるマン島TTレース(当時は世界GPの1戦に含まれていました)からです。

 当時の世界GPは、イタリアの「MVアグスタ」やドイツの「MZ」などが覇権を争っていました。彼らは第2次世界大戦の敗戦国であり、禁止された航空機製造の高い工業生産技術を生かしたバイク作りが行なわれていました。

 ホンダも世界トップレベルのバイクメーカーと勝負するため、マン島TTレースへの参戦を宣言します(1954年のこと)。そこから5年間かけてレーシングマシンを開発し、1959年に満を持してマン島へ125ccクラスのマシンを送り込みました。

 レースの結果は、谷口尚己選手が6位に入賞し、チーム賞も獲得。しかし上位の欧州メーカーからはスピードもラップタイムも大きく遅れており、マシンの実力差は明らかでした。

 古今東西、レーシングマシンは常に速さのために努力を積み重ね続ける宿命を持っています。世界GPで勝てるマシンを開発するためには資金と人材と技術が集中した猛烈なエネルギーが必要です。そして当時最も熱いエネルギーを注いでいたのがホンダでした。

 ホンダがマン島で走らせた「RC142」は、当時世界に類を見ない1気筒あたり4つの吸排気バルブを持つDOHCエンジンでした。排気量124.68ccの並列2気筒エンジンはベベルギアのシャフトでバルブを駆動し、回転数は13000rpmまで回りましたが、マン島TTレースではMVアグスタやMZに追いつきませんでした。

 翌1960年は、マン島TTレースのみならず世界GPのシリーズ戦にも参戦します。125ccクラスの新型「RC143」に加え、250ccクラスでは4気筒の「RC161」でエントリーし、早くも日本人ライダーの田中健二郎選手らが表彰台を獲得します。

 125ccクラスの「RC143」は吸排気を見直した前傾シリンダーのエンジンへと刷新。バルブを駆動しているベベルギアのシャフトも前傾しています。空冷エンジンなのでシリンダーヘッドがより効率よく冷却でき、その分パワーアップすることが可能でした。しかし手強い欧州勢の層は厚く、最上位が4位と表彰台が“近くて遠い”2年目のシーズンでした。

 レーシングマシン開発の手応えと勢いを得たホンダは、上位で争える力を備えたマシン造りを実現していました。シーズン3年目に向けた125ccクラスの新型車「RC144」は、2シーズン続けた4バルブから2バルブの新型エンジンに変更します。しかしこの2バルブエンジンはオーバーヒートの症状を解決できないまま、1961年の開幕戦を迎えます。ライダーのトム・フィリス選手は、前年に使用していた「RC143」で走ることになりました。

 フィリス選手はトップを走る選手を追いかけて懸命に走りました。結果はライバルのトラブルもあり、最後はフィリス選手が2位以下を20秒以上リードしてトップでゴール。挑戦3年目にして、記念すべきホンダの世界GP初優勝が成し遂げられたのです。

 その後、第3戦からホンダチームは125ccクラスに「RC144」のダブルバックボーンフレームとなった最新型の車体に「RC143」のエンジンを搭載した「2RC143」を主力マシンに据えてシーズンを戦いました。

 第4戦のマン島TTレースでは、ホンダ車が125cc/250ccクラスで1位から5位までを独占。ラップタイムやレースタイムでも新記録をマークする完全優勝です。

 世界の檜舞台で栄光を勝ちとり、7年前の宣言を現実のものとしました。

 参戦3年目にして世界GP初優勝、マン島TTレースの制覇という悲願達成に加え、両クラスともホンダが列強の欧州メーカーを抑えて年間メーカータイトルも獲得します。

 1961年シーズンは、その後ホンダの世界GPの栄光に続くスタートの年となりました。

■ホンダ「RC143」(1961年型)主要諸元エンジン種類:空冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ総排気量:124.68cc最高出力:23ps以上/14000rpm車両重量:93kg(乾燥)燃料タンク容量:12Lフレーム形式:バックボーン

【取材協力】ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

文:バイクのニュース 柴田直行
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みんなのコメント

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  • motorider
    20年くらい前にソニーの井深大氏とホンダの本田宗一郎氏が世に出した製品の展示会で見る事が出来ました。既にカムギアトレインが採用され4バルブ化された250ccにしては迫力のあるエンジンを積んだマシンは時代を先取りしていました。残念ながら伝説のGPマシンRC166の展示は無かった。それでも砂型クランクケースの初期型CB750F0や四輪のS600等を見る事が出来ました。もう一度見たいが中々機会がありません。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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