■デザインが好まれず、変更を余儀なくされたクルマを振り返る
クルマの外観デザインは、販売台数に大きな影響を与える重要な要素です。とくにフロントフェイスのデザインで、見た目の第一印象が決まるといっても過言ではありません。
各自動車メーカーは優秀なデザイナーを雇ったり著名なデザイン工房にデザインを依頼し、複雑なプロセスを経てデザインにGOサインを出します。つまり、多くの重要なポストに就く役員や、デザインのプロたちが太鼓判を押したはずです。
しかし、いざ販売してみると、ユーザーからデザインが受け入れられないケースもあり、マイナーチェンジでデザインの変更を余儀なくされたモデルも数多く存在。
そこで、デザインが不評だったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●トヨタ「プリウス」
1997年に、トヨタは世界初の量産ハイブリッド車、初代「プリウス」を発売。当時としては驚異的な低燃費を誇り、代を重ねても常に世界トップクラスの低燃費車に君臨してきました。
そして、2015年には現行モデルの4代目が登場。3代目からボディサイズが大きくなったにも関わらず、燃費性能をさらに向上させるなどトヨタとしては自信作だったに違いありません。
ところが、当初の販売台数は先代までの勢いがなく失速感は否めませんでした。その原因のひとつがデザインにありました。
4代目の後に追って発売された「プリウスPHV」は、ボディは共通ながらも前後のデザインがPHV専用となっており、これが概ね好評だったこともあり、余計に4代目プリウスのデザインが不評ということが明らかになります。
そこで、2018年12月に前後のデザインを変更することになり、ロサンゼルスモーターショーで発表。
これまでT字型だったヘッドライトをシンプルでシャープなブーメラン型に、縦基調だったテールライトを横基調に変更し、それに伴いバンパーなども改修され、大きく印象を変わりました。
その結果プリウスの販売は復調し、2019年には登録車で第1位の販売台数を記録しました。
なお、実際にトヨタには従来モデルオーナーからも「抵抗があった」という声や「デザインが残念」という声が多く寄せられていたといい、デザインの変更は英断だったといえるでしょう。
●ホンダ「インテグラ」
かつてホンダを代表するFFスポーツクーペに君臨していた「インテグラ」ですが、その地位を不動にしたのが1993年に登場した3代目で、1995年にデビューした「インテグラ タイプR」のヒットによる功績ではないでしょうか。
しかし、3代目が登場した時点では、フロントグリルレスで丸形4灯プロジェクターヘッドライトと、当時としては斬新なフロントフェイスが不評となってしまいました。
とくに、シャープなラインを描くサイドビューに対して、丸形4灯ヘッドライトがファニーな印象で、アンバランスな感じは否めませんでした。
アメリカではこのフロントフェイスは比較的好評だったものの日本では受け入れられず、前述のタイプRの発売と同時に、一部グレード除いて横長の異形ヘッドライトへの変更と小ぶりなフロントグリルを追加。フロントフェイスはシャープな印象に一新されました。
前期型のデザインは斬新だったものの、タイプRの効果とともにデザイン変更は好評で、結果的にはオーソドックスな横長ヘッドライトのフロントフェイスへのチェンジは成功だったといえます。
●スバル「インプレッサ」
1992年にスバルは、次世代のコンパクトセダン/ステーションワゴンとして初代「インプレッサ」を発売。高性能モデルの「WRX」が世界ラリー選手権で活躍したことがイメージアップに繋がり、たちまち「レガシィ」と並ぶ人気モデルとなりました。
そして、2000年に登場した2代目では、さらに走行性能が向上。さらにボディのシルエットは初代から大きく変わらなかったものの、フロントフェイスのデザインは一新されました。
2000年のデビュー時は円形のヘッドライト(通称:丸目)を採用しましたが、初代ほどの迫力がなく、従来のユーザーからは不評でした。
そこで、2002年には当時ちょっとしたトレンドだった、丸と三角を組み合わせたような横型(通称:涙目)のヘッドライトに変更。しかし、精悍な印象は薄く、さらに2005年にシャープなイメージの横長型(通称:鷹目)ヘッドライトに一新。同時に飛行機の翼をモチーフにした「スプレッドウィングスグリル」も採用しました。
後期型は概ね良好な反応でしたが、結局、2007年に登場した3代目では、スプレッドウィングスグリルも廃止となり、すべてが新しくなりました。
インプレッサは最大のライバルである三菱「ランサーエボリューション」シリーズと競うように、エンジンや駆動系のアップデートが短期間で繰り返されましたが、同じく短期間にフロントフェイスの変更をこれほど繰り返したモデルは珍しく、デザインが迷走していたといわざるを得ません。
※ ※ ※
今も昔もクルマのデザインはスケッチから始まり、最終的には1/1スケールのクレイ(粘土)モデルをつくるのは変わっていません。
しかし、その中間の工程では3DCGなどのシミュレーションを多いに活用することで、2Dよりリアリティがアップし、模型をつくる時間や工数の削減も可能になりました。
一方、そうしたツールや技術が向上しても、必ずしも多くのユーザーにデザインが受け入れられるとは限らないため、デザインの難しさがうかがえるのではないでしょうか。
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みんなのコメント
市販車があまりに大人しすぎた。