「お買い得バイク」基準は人それぞれで、時代によっても異なる
モーターサイクリスト2022年4月号の企画で、ホンダ NT1100、ヤマハ トレーサー9GT、BMW F900XRの3台でロングツーリングテストを行った際に、僕がちょっとひっかかりを感じたのは、「F900XRってお買い得じゃないですか?」という編集部員の問いかけだった。
確かに、今どきの欧州車の基準だとベースの118万1000円は安い部類だし、200万円以上のBMWと同様の多彩な電子デバイスを導入していることを考えれば、プレミアムラインの144万6000円という価格を良心的と感じる人はいるだろう。
【画像12点】装備は200万円級BMWに匹敵!「BMW F900XR」プレミアムラインを写真で解説
まあでも、お買い得の基準は人それぞれで、時代によっても異なるのである。ちなみに辞書でこの言葉を調べると、値段以上の価値があり、買って得になるようなさま、割安な商品などと記されているわけで……改めて考えると、かつては高級車専門メーカーだったBMWがそういったバイクを手がけるのは、なかなか感慨深い事実だ。
余談だが、編集部員から「お買い得車」という言葉を聞いた際に、僕の頭に思い浮かんだのは以下の2台。基本的にビッグツインと同様の構成・品質でありながら、価格が88万3000円だった1990年代中盤~2000年代中盤のハーレーダビッドソンXLH/XL883と、カムギアトレインを筆頭とする豪華なメカニズムを随所に採用していたにも関わらず、55~60万円前後で販売された1980年代中盤~1990年代のCBR250フォア/R/RRシリーズである。
もちろん、この考え方に誰もが共感するとは思わないし、実は僕がCBR250フォア/R/RRシリーズにお買い得車という印象を抱いたのは、4ストローク250ccマルチが市場から姿を消した、2000年代後半になってからだった。そう考えると「お買い得」とは難しいテーマなのだが、この文章ではF900XRを素材にして、あえて難題にチャレンジしてみたい。
■BMW F900XR
BMW F900XRは、アドベンチャーモデルの要素を取り入れたオンロードツアラーとして2020年モデルから登場。エントリーモデルではあるが「スポーティな走りも、ロングツーリングも、タンデムもOKな万能車」というのがBMWによるウリ。日本ではベース、スタンダード、プレミアムラインの3グレード設定となっている。
テスト車はプレミアムラインで、ナックルガード、電子制御式リヤショック、クルーズコントロール、クイックシフター、スマートキー、メインスタンドなどのフル装備仕様といえるもの。ETC2.0車載器はグレード問わず標準装備される。
BMWの門戸を大きく開いたモデル
まずBMWに憧れを抱いている人、いつかはBMWに乗ってみたいと考えている人にとって、F900XRはお買い得車だろう。何と言っても、兄貴分のBMW S1000XRはベースグレード202万8000円、電子制御サスペンションなどが標準となる「プレミアム」系グレードが231万円~。気筒数が半分とはいえ、同系のバイクがほぼ半額~2/3程度で購入できることに価値を感じる人は少なくないはずだ。
また、体格が小柄な人やビッグバイクに不慣れな人にとっても、F900XRはお買い得車になり得ると思う。再びS1000XRを比較対象にすると、車重やシート高に大差がなくても、車格感はF900XRのほうが明らかに小さいし、高回転指向の並列4気筒を搭載するS1000XRより、低中回転域で潤沢なトルクを発揮する並列2気筒のF900XRのほうが、やっぱりとっつきはいいのだから。
ただし、価格とスタイルがバッティングするトレーサー9GT(145万2000円)、そして個人的にはジャンルが違う気がするけれど、今年から発売が始まったNT1100(168万3000円)との比較試乗を体験した僕は、F900XRのプレミアムラインがお買い得車とは思えなかった。
NT1100、トレーサー9GTと比べるなら「むしろ2台の日本車ほうがお買い得?」
F900XRで僕が最も気になったのは、車体の硬さである。路面の凹凸を通過した際の衝撃がダイレクトにライダー伝わってくるだけではなく、ワインディングロードで負荷をかけて走ったときの手応えも硬質で、電子制御式リヤショックをいじっても印象に大きな変化はナシ。
もっとも、開発ベースとなったF750GS/850GSとの差別化を図るために、BMWはあえてそうしたのかもしれないし、純正装着タイヤが初期ロットでよく見かけたミシュラン・ロード5、あるいは、トレーサー9GTと同じブリヂストンT32だったら(試乗車が履いていたT30はブリヂストンにとって3世代前のツーリングタイヤ)、おそらく、現状よりはしなやかな感触が得られただろう。
とはいえ、トレーサー9GTとNT1100を同条件で比較すると、柔軟な特性の日本車と互角に戦える前後17インチのBMWは、F900XRではなく、兄貴分のS1000XRやフラットツインを搭載するグランドツアラー・R1250RT(310万5000円)ではないかと思えくる。
となると、むしろお買い得車は2台の日本車のような?
なおエンジンに関しては、F900XRが搭載する並列2気筒に悪い印象はまったくなく、全域で非常に扱いやすかった。ただし、高回転域で並列3気筒特有の爽快感が堪能できるトレーサー9GT、低中回転域でオーバー1リッターならではの鼓動とトルクが味わえるNT1100と比較すると、少々薄味……のような気がしないでもない。
数年前までの自分を振り返ってみると
さて、思い切って難題にチャレンジしてみたら、どうにも途中から筆が重くなってしまったが、前述したようにお買い得の基準は人それぞれなので、トレーサー9GTやNT1100、S1000XRやR1250RTより、F900XRのほうがいい!と考える人は大勢いると思う。もちろん僕としては、そういう意見を否定するつもりはまったくない。
そしてここまでを書いた時点で、ハタと思い出したのは数年前までの自分である。実は僕は2007~2018年にBMWが販売したスチール製トリレスフレーム+パラレルツインのF650/700GSが大好きで、このモデルの現役時代はいろいろな媒体で積極的に美点を紹介していた。
そんな僕に対して、「フラットツインのGSのほうが断然いいのに」「F-GSだったら、フロントが21インチでエンジンにパンチがある800のほうが面白いでしょ」、などと異論を述べる人は少なくなかった。
でも当時のBMWが販売していたほぼすべてのモデルを体感したうえで、僕が自分の使い勝手に最もマッチすると感じたのは、世間ではエントリーモデル扱いされることが多くても、乗れば乗るほど味が出て来るF650/700GSだったのだ。
BMW F900XR主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ ボア×ストローク:86mm×77mm 総排気量:985cc 最高出力:77kW<105ps>/8500rpm 最大トルク:92Nm<9.4kgm>/6500rpm 燃料タンク容量:15.5L 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2150 全幅:860 全高:1320(スクリーンアップ時1420) ホイールベース:1530 シート高(スタンダード):825(各mm) 車両重量:223kg タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17
[車体色]
レーシングレッド、ライトホワイト、ブラックストームメタリック2(別途2万6000円)
レポート●中村友彦 写真●柴田直行/BMW/ホンダ/ヤマハ/八重洲出版
編集●上野茂岐
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みんなのコメント
それに比べて日本車は北米価格の方が国内価格よりも割安感があるので本当に羨ましい限りだ。