■ライダーの厳しい要望を高次元でクリアし、低温、ウエットまで味方にするスポーツタイヤ
現在、ブリヂストンは“BATTLAX(バトラックス)”というブランド名を掲げたオートバイ用の高性能タイヤを展開しています。
ブリヂストン「BATTLAX HYPERSPORT S22」、カワサキ「Ninja ZX-6R」も採用 新車装着タイヤとして選ばれる理由とは
そのなかには、人気のアドベンチャーツアラー向け “アドベンチャー”、ロード向けツーリングタイヤ“スポーツ・ツーリング”、サーキットでの走行にも対応した公道用スポーツタイヤ“レーシング・ストリート”、などのシリーズがあります。
今回、新たに登場した「バトラックス・ハイパースポーツS22」は、“スポーツ・ツーリング”と“レーシング・ストリート”の間に位置するモデルです。
ツーリング先のワインディングがなによりも楽しみ、サーキットだって楽しもう。ストリートに軸足を置きつつ、頂上の性能と裾野の広さが印象的で、ライダーの贅沢な要求を満たすスポーツラジアルタイヤ、それがS22です。
「BATTLAX /S」シリーズの歴史は、2012年に発売されたS20から始まり、2014年にS20 EVO、2016年にはS21へと進化してきましたが、新作S22はその後継モデルとなります。
同シリーズは、高いグリップ感と軽快なハンドリング、ブレーキング時の安定性、耐摩耗性はもちろん、峠道を目指す高速道路での安定性や乗り心地、そして天候変化への対応力など、高いスポーツ性と日常性を求めるユーザーに向けたキャラクターを有しています。 今回のモデルチェンジにあたり、S21からアップデイトすべく開発者達が注力したのは、新開発されたトレッドコンパウンド(天然ゴムおよび合成ゴムなどに、カーボンブラックや鉱物油などを混合した複合ゴム)の採用と、雨天時のコーナリングを想定し、トレッドのショルダー部分(コーナリング中、車体を寝かせた状態で接地するエリア)にある溝とブロックパタン比率の最適化です。
具体的には、フロントタイヤのセンター部分、リアタイヤのセンターとショルダーの中間に位置するトラクションゴム部分に、低温から高温まで幅広い温度状況で高いグリップを発揮するコンパウンドを採用。 リアタイヤのセンター部分に、2輪タイヤでは初となる微粒子シリカ(燃費やウェット性能向上に欠かせない科学物質)を配合したコンパウンドを新たに採用することで、路面をつかむ力が向上。濡れた路面状況でも高いグリップを発揮するのが特徴です。
ブリヂストンによると「シリカ表面には水と親和性が極めて高い部分が多数あり、トレッドゴムと路面間の凝着力が向上するため、ウェット性能が高くなります。微粒径のシリカを採用することでシリカと路面が接地する面積が増えるためウェット性能が高くなります。
また、これまでもウェットグリップ向上を目的にオートバイ用タイヤにもシリカ自体は採用してきましたが、(シリカと路面との接触面積に優れる)粒径の小さいシリカは、補強性や分散性に課題があり摩耗性能の確保が難しかったのですが、今回、微粒径シリカの使いこなしを目指し、長らく続けてきた配合・製造面での最適化開発に一定の目途が立ったため、採用に至りました」と説明。 コーナリングの軽快さなど、ハンドリングに関係するタイヤの断面形状は先代のS21を踏襲し、トレッドゴムと溝の配置などを徹底的に煮詰めることで、ハンドリングの軽快性とブレーキング時の安定性、ウエットグリップなどを向上させています。
■あらゆるシーンで心にゆとりが生まれる“S22”の実力とは?
テスト会場となったのは、栃木県にあるブリヂストンのテストコース、一般道のワインディングをイメージした1周2キロのドライハンドリング路、散水されウエット路となった1周1キロのウエットハンドリング路がメインステージです。そこでは、S22の性能を感覚的に体験できるよう、前作S21を履いた比較車両と乗り換えながらテストを進めます。
また、1キロの直線が2本ある1周4キロの高速周回路ではツーリングをイメージして他機種乗り換えテストが行われました。
まずは、ドライハンドリング路。そこではホンダ「CBR1000RR」、ヤマハ「YZF-R1」、カワサキ「NINJA650」が各2台用意され、S21/S22を履いた同一モデルでの比較。2ラップごとに乗り換えるスタイルのため、少ないラップ数で違いをつかめるか不安でしたが、進化の様子はまさに想像以上。三車種ともS22は非常に印象的でした。
S21を履いた車両から乗り換えるとS22は走り出した瞬間からの路面をつかむ接地感が豊富で、直進からカーブへの進入時の挙動が軽快かつ明快。アプローチからバイクを寝かすと前輪に舵角が当たるまでの流れがとてもスムーズで、安心感があり、気持ちよく曲がるので“乗れている!”感にライディングする気持ちが華やぎます。
しかも接地面の大きさがS21よりも広いイメージで、グリップ感があり、それでいてハンドリングに重みがない。ペースを上げてみても、S21よりもS22のほうがより簡単にコースを攻略でき、ハードなブレーキングを試みても、前輪がしっかりと受け止めてくれる印象です。
そこから旋回に入るためにマシンを寝かせてもやはり粘りや重さがなく、素直にコーナリングを楽しめることもあり、心にゆとりが生まれます。『なるほど、S22は“あっという間に友達になれる”スポーツラジアルだ』と感じました。
次にウエットハンドリング路。ドライハンドリング路にも増してコースはタイトで、アップダウンと複合カーブの組み合わせなど、タイヤを鍛えるための試練が盛り込まれたコースであることが分かります。2017年のモデルチェンジからS21が純正採用されたヤマハ「YZF-R6」が比較機種です。
S21 装着のヤマハ「YZF-R6」で試走を開始。コースの把握に務める中、タイヤのキャラクターも改めて確認します。基本的にはドライでの印象と同様、ただ、不慣れなコース、しかも路面はウエット。減速が遅れ、思ったラインから膨らむなど、寝かせながらのブレーキングをする場面も多く、100キロにも満たない速度でも緊張感が高まります。乗り切れない思いでピットに戻りS22を装着したヤマハ「YZF-R6」に乗り換えます。 これはドライ路でも感じたことですが、ハンドリングが素直でバイクが寝たとき、前輪の接地面が手に取るように分かるので、すぐに安心感に支配されます。三つ目のコーナーからS21装着モデルに乗っている時よりもあきらかに自分のペースが上がります。
ブレーキングを残して旋回に入っても、しっかりと路面を捉える印象があり、上りから下りにわたる複合カーブすら楽しめる余裕が生まれます。この心境の変化はドライと同様。まるで同じバイクとは思えない違いに驚きます。ラップごとに速度があがり、それなのに楽しさも増す印象です。
高速周回路では、S22を装着したヤマハYZF-R1/MT-09、スズキGSX-R1000R/GSX-S750/ハヤブサ、BMW S1000RRを乗り換えながらテストを行いました。S22で印象的なのは乗り心地の良さ、そしてパタンノイズの少なさです。高速周回路の最大38度にもなるバンクでも安定感がありますし、バンク下にあるフラットなカーブを高速コーナーに見立てて走っても、その安心感、安定感、グリップ感はこれまで体験した通り。実に走りやすいのです。
結論を言えばS22は走るのが楽しい。曲がるのが嬉しい。ウエット路でも不安がないから疲れない。ととにかくあらゆる場面でライダーがポジティブな気持ちになれるタイヤだったということです。発売は2019年、2月。来シーズンに向け、タイヤのブッキングリストに加えてみてはいかがでしょうか。 【了】
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