自動クラッチ制御に足変速の「M」シフト+完全自動変速「D」シフトを盛り込んだASA
2002年に登場のR1150GSアドベンチャー以来「アドベンチャー」シリーズは、パッセンジャーや大容量の荷物に対応する装備と長距離用の大容量タンクを採用して継続されてきた。
【画像22点】BMWの新機構「ASA」搭載車R1300GSアドベンチャーの細部をチェック!
そして昨秋登場の新型R1300GSから約1年が経ったこのほど、R1300アドベンチャーが日本に上陸。30Lタンクによる航続距離は、普通に使えば600kmを超える頼もしさで、長旅の荷物もびくともせずに積める。ただし、日本でツーリングに使うなら航続距離も積載性能もSTDの1300GSで不満はないはずで、日本人の標準的な体格のライダーだと、日常の取り回し面も含めてSTDのほうが安心感は高い。なのにGSアドベンチャーが一定の支持を集めるのは、ソコである。ボリュームのある車格ゆえの、存在感なのだ。
すごい迫力の車体なのに、けっこうイケてしまう優越感のようなものがGSアドベンチャーならではの魅力で、同シリーズは万能性能の高さも常に磨いてきた。そして今回も快適性や利便性を進化させてきたが、大きなトピックがクラッチレス機構のASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)装備の仕様が登場したこと。多くの記事ですでに詳解済みゆえ、細かい説明は必要ないだろうが、同機構の特徴は簡単に言って以下のようになる。
●クラッチ操作不要のため、レバー類は非装備(そのため大型自動二輪AT限定免許でも運転可能)。
●クラッチの自動制御で、発進・停止時の「つなぐ・切る」を行ってくれる。
●フットシフトでのマニュアルモード6段変速が可能(=「M」シフトモード)。また車速が下がって停止する際には、1速まで自動で下がってくれる。
●自動変速のATモード(「D」シフトモード)も装備。また同モードはパワーモードセレクト(エコ/レイン/ロード/ダイナミック/エンデューロ)に合わせて自動変速を実施。
以上のことを踏まえて、走り出してみる。
(エンジン説明)
■エンジン下に配置されたトランスミッションや新たなカムシャフト駆動の配置でコンパクト化を推進した新エンジンは1300GSと同様。プライマリーからファイナルまでギヤレシオはGSと同数値で、最高出力も同様の145ps/7750rpmを発揮。注目のASAはエンジンケース内部に組み込まれる。
(ASA説明)
■図の左上にある円筒形の部分がクラッチアクチュエータで、その横の機械変換用減速ギヤや長いクラッチプッシュロッドを介してクラッチを作動させる。一方クラッチアクチュエータ下部にある円筒形の部分がシフトアクチュエータで、こちらはシフトレバー/ギヤを介してシフトドラムとつながっている。それぞれ独立したアクチュエータがあることで、ASAでは自動変速のDシフトモード、足操作でマニュアル変速するMシフトモードが可能となる。
MシフトでもDシフトでも滑らか、既存のライダーが違和感を覚えない秀逸な変速制御で操れるR1300GSアドベンチャー
キーレスエントリーを採用したGSシリーズのイグニッションオンは、左グリップにあるボタンを押すと電源が立ち上がり、その後セルボタンを押して始動。目覚めた新型ボクサーツインは1300GSと同様だが、マニュアル変速の「M」で行くのか、AT変速の「D」で行くのかという切り替えボタン選択はASAならではの「儀式」だろう。Mを選び、足でシフトを1速に入れる。さほどショックもなく、標準のマニュアルシフトと同様な感触でギヤが入り、そこからスロットルを開けていけば、クラッチが適切に滑りながら徐々にミートして車体が前に進む。
STDのGSよりも19kgほど重く、ボリュームもある車体ながら、その違和感のない走り出しでまずは緊張感がほぐれていく。そしてスイッチとして機能しているフットシフトもタイムラグはなく変速し、クラッチを使わない以外は通常の変速操作に過ぎない。トルク変動の大きな1~3速でも、熟練の乗り手のマニュアル操作と大差なく、滑らかな変速を味わえる。またスロットル操作のマイルドな開け方のときも、ワイドオープンなときでも変速ショックの少なさは同様で、乗り手が違和感を覚える状況はほぼない。
渋滞にハマり、トロトロと走っては止まるを繰り返す場面でも、乗り手が車両のクセに慣れるような必要がなく、あくまでスロットルとブレーキの操作に集中していればいい。GSアドベンチャーのボリュームゆえに操作系での気遣いが減るのは有り難いが、走り出して間もなく、そのボリュームにもまったく緊張していないことに気づいた。新たなGSアドベンチャーは、STDの1300GSと同じく、アダプティブ車高制御が採用されていて停止時と低速走行時は30mm車高が下がり(発進時は50km/h以上で車高アップ、減速時は25km/h以下で車高ダウン)、身長173cmのライダーなら両足裏の半分が接する高さで、片足接地ならほぼ足裏をべったり接地できるからだ。
加えて、新型でのコンパクト化と低重心化も効いているのだろう、先代1250GSアドベンチャーよりも車体に凝縮感があり、重量物が分散していない印象。自動車高調整の恩恵も大きいが、STDの1300GSでも実現していたように、アドベンチャーでもコンパクト化を果たしているのだ。
高速でのGSアドベンチャーは、クラッチレス機構の恩恵に浴する場面はあまりなく、大船に揺られているようなクルージング性能で突き進む。120km/h制限の高速区間ならばトップ6速のメーター読み100km/hで約3300rpm、120km/hで約4000rpmでエンジンは回り、そこから上へ回していく回転の余裕はたっぷりある。一次/二次減速や1~6速の変速比も含めてSTDの1300GSと同じなので動力性能も似た印象だが、専用化する必要もないだろう。そして高速走行で実感したのは、アドベンチャーならではの風当たりの穏やかさだ。
試乗日は寒さが身に染み始めた11月下旬だったが、頭から胸、腰に至るまで、アドベンチャーは風当たりが少ないのだ。横幅を拡大したウインドスクリーンや、弁当箱のように張り出したサイドパネルが貢献しているようで、腰下から足元まで(元々ボクサーツインは前方にある左右シリンダーの恩恵で足元に当たる直接風は少ない)、風から守ってくれる。STDのにはないアドベンチャーのボリュームは迫力のみならず、高速ステージでの移動の快適さにも貢献しているのだ。
(左グリップ操作系説明)
■BMWの操作系で象徴的な機能の左端マルチコントローラーリングのほか、上からクルーズコントロール、2段目:右がハザードランプ、左が機能リスト、3段目:右がマルチロッカースイッチ、左がメニューロッカースイッチ、その下がウインカー、一番下がホーン。一番右(ハンドル内側)にあるボタンがASA用のAT/MTモード切り替え。
(右グリップ操作系説明)
■右グリップの操作スイッチは、上からステアリングロック集中ロックシステム兼用のイグニッションボタン、走行モード切り替えボタン、キルスイッチ兼用セルボタン。
ライダーの意に沿う、オートマチック変速の「D」シフトは、ワインディングでも楽しい
高速から下道に降りて、ワインディングへ。ここからはマニュアルモード変速の「M」シフトの出番だと思って進んでいくが、実はATモードの「D」シフトが実にいい仕事をしてくれるのを実感できた。Mシフトは言わば、発進・停止時もクラッチ操作が不要の、全回転域で使えるクイックシフターのようなもので、フライ・バイ・ワイヤでオペレートされるスロットルは自動制御で滑らかなシフトアップをアシストする(変速時に乗り手がスロットルをわずかに緩める操作は不要)。そして減速時のシフトダウンでは、後輪ロックをしない程度にエンジン回転を合わせてブリッピング(回転をあおる操作)を自動で行ってくれる。
そうした細かい制御の恩恵に浴しつつ、乗り手は変速操作を行えばいい。街中の低中速域で違和感のない性能を見せてくれたASAはここでも好印象で、想像どおりにフレキシブルだったが、それよりも感心したのはDシフトだった。
Dシフトは、エコ・レイン・ロード・ダイナミック・エンデューロという5つの主要なライディングモードの特性に合わせて自動変速を行う。これは他社のクラッチレス機構用ATモードも同様ながら、BMWのASAはより緻密な制御を見せる。特に感心したのはダイナミックモードでのワインディングで、加速時には、最も速度の乗る段数へときめ細かにシフトアップ。おそらく乗り手が「そんなに引っ張らなくてもいいのに……」とか「シフトアップタイミング早いなぁ」とか感じる間もなく滑らかに自動変速していく。
そしてシフトダウン時は、緩い減速ではゆったりと少ない段数が切り替わり、高速からコーナー手前でのハードブレーキングでは、短いブリッピングを挟みつつ瞬時に4→3→2と自動でシフトダウン。そしてタイトコーナーからの脱出では、ストレスもなく適切なギヤから立ち上がっていく。ATモードでのワインディングでは、乗り手の意にハマらないシフトダウンやアップがありがちだと思っていたのだが、この違和感のなさは未経験。さらに乗り込んで行けば、乗り手の意に沿わない自動変速は現れるかもしれないが、ASAは現状では特に不満を感じられない自動変速のマナーを持っているように思えた。
ASAを引っ提げ、クラッチレス機構にもしっかりと参入してきたBMW。その最初の導入モデルをGSアドベンチャーにしたのは、いいポイントを突いていると思う。長い距離を走れる一方で、疲れのたまってきた帰路にはクラッチ操作をサボって楽をしたい気分にもなるだろう。ましてや取り回しには気を遣う大きなサイズのモデルゆえ、イージライディングの恩恵は大きいはずだからだ。
そうした中で、BMWは通常のマニュアルスポーツ車に比肩して違和感のないマニュアルモードのほか、かなり万能なATモードも実現した。そうして既存のライダーにストレスのない手法として、足での操作を残した。それがBMWの考えるイージークラッチレスでの現状の最適解だと考えたからだろうが、個人的にはこれにも共感できる。既存のライダーが戸惑わない操作感と挙動マナーをしっかりキープし、なおかつ新しいことを提案する。BMWのASAは、R1300GS/同アドベンチャー自体と同様に、万能かつ秀逸にライダーを補助する機構に仕上がっていたのだ。
(液晶メーターパネル説明)
■走行時の通常表示パターン。中央に速度、周囲にエンジン回転を表示。速度の右にクルーズコントロール表示、一番右端にAT/MTのモードとギヤ段数を表示(写真はドライブ=ATモード1段の状態)。走行モードは上端右に表示(写真はROADモード)。MTモードに切り替えた場合は(写真下)、1Mのように先に段数、後にマニュアルのMが表示される。
(シフトペダル説明)
■マニュアルモードでの変速用ペダル。アクチュエータにつながるためスイッチ的な役割ながら、自然なシフトタッチのような感触を実現している。
(シート説明)
■GSアドベンチャー・ツーリングの日本仕様はアダプティブ車高制御コンフォートが標準採用され、シート高は低速・停止時に30mm下がる。そのほか、前側シートはシート裏ステー位置で20mm高さ調整可能なため、シート高数値はローシート時=820~850、ハイシート時840~870mmとなる。
(乗車姿勢説明)
■ボリューム満点でシート高も相応に高いGSアドベンチャーだが、上体はアップライトな姿勢で、長距離走行も快適にこなせる乗車姿勢。また、アダプティブ車高制御により停止時に30mm車高が下がる恩恵で、身長173cm・体重76kgのライダーの両足接地では足裏の半分ほどが浮く程度。重量はあるが、車体を支えるには十分に力を入れられる。
BMW R1300GSアドベンチャー ツーリングASA主要諸元
■エンジン 空水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク106.5×73mm 総排気量1300cc 圧縮比13.3 燃料供給装置:フューエルインジェクション 点火方式フルトランジスタ 始動方式セル
■性能 最高出力107kW(145ps)/7750rpm 最大トルク149Nm(15.1kgm)/6500rpm 燃費20.4km/L(WMTC値)
■変速機 6段リターン 変速比 1速2.438 2速1.714 3速1.296 4速1.059 5速0.906 6速0.794 一次減速比1.479 二次減速比2.910
■寸法・重量 全長2280 全幅1012 全高1540 軸距1534 シート高820/840-850/870※アダプティブ車高制御comfort装備車両(各mm) キャスター26.2° トレール118.8mm タイヤF120/70R19 R170/60R17 車両重量269kg
■容量 燃料タンク30L エンジンオイル5.0L
■車体色 レーシングレッド/レーシングブルーメタリック/ブラックストームメタリック/アウレリウスグリーンメタリックマット
■価格 343万2000円~
report●モーサイ編集部・阪本一史 photo●岡 拓/BMW
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