新型プリウスはコンセプトも含め、さまざまな領域でフルモデルチェンジを行なった。早速、公道で試乗することができたのでお伝えしよう。
新型プリウス「Z」 E-Fourボディサイズは全長4600mm、全幅1780mm、全高1430mm、ホイールベース2750mmで、Cセグメントサイズは変わらない。そして最量販カテゴリーでの存在感を狙っていることも変わらないが、そのデザインではこれまでとは大きくシフトチェンジし、斬新なデザインで登場した。
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鋭角に寝かされたAピラーのデザインは、「これが本当にプリウスなのか?」という疑問を持つほどで、昨年(2022年)のクラウンと同様、見るものを驚かせている。開発責任者の大矢賢樹氏は「愛車を目指した」と話す。
大矢賢樹氏(左)とモータージャーナリストの高橋アキラプリウスはその高い環境性能が世界中で評価され、反面タクシー利用などにも波及している。それはそれで高い評価につながり販売台数が伸びているものの、個人所有という観点からは、魅力が環境性能以外に見つけにくいという側面があったとも考えられる。
そうしたことからコンセプトを「ハイブリッド・リボーン」としながら、高い環境性能はそのままに、「一目惚れするデザイン」「虜にさせる走り」を掲げ、エモーショナルなクルマを目指して開発したというわけだ。
実際に公道で走ってみるとそのデザインはやはり目立つ。Aピラーの角度に目は行きがちだが、市中でみればフロントフェイスの特徴が際立つ。デイタイム・ランニングライトと細い目、従来車のような大きなグリルはなく、未来感のあるルックスは間違いなく目を引く。そうした意味からも成功したエクステリアだ。
インテリアはトヨタのEV車bZ4Xと共通する部品が多く、コンセプトも同じベクトルだ。ダッシュボード周りは幾何学的で複雑な直線が多く、メーター表示類も小さくコンパクトにまとめている。エクステリア同様未来感があるインテリアだ。
しかし、視認性の悪さや機能が多機能化することによるスイッチ類、操作系がどんどん複雑になることもあり、使い勝手という点では気になるポイントは多い。とくにナビモニターの位置がドライバーに近く、視線移動は大きい。タッチパネルを搭載しているため、そうした位置になるのだろうが、視線移動によるモニターの見やすさという点では疑問が残る。
インテリアカラーはグラディエントブラック7インチのフードレスメーターエアコンは物理スイッチでまとめられているインテリアで気になるのはやはり天井高だ。とくに後席の天井高は低く、圧迫感がある。身長にもよるが、大柄な人にはやや厳しいポジションだと感じた。逆に運転席はそれほど天井高の低さは気にならずに座ることができた。
そうしたインテリアでのネガは、あのエクステリアデザインを活かすためであり、かつ、ハンドリングやパワートレインの頼もしさを引きて立たせるためのものと考えれば納得だ。数十年昔のスペシャリティカーは、見た目はカッコ良くともインテリアは狭いというのが当たり前で、新型プリウスの狙いもそうした位置付けにすることで愛車感を出すということかもしれない。
Zには前席シートヒーターに加えベンチレーションも標準装備センターコンソール後部とラゲージルームにAC100Vコンセントを備えている(非常時給電システム付)リヤモーターの出力が大幅にアップ
ハンドリングではE-Fourが印象に残った。リヤモーターの出力を5.3kWから30kWへと大幅に出力アップさせたことで発進時のみならずAWDの効果を体感することができた。特にワインディングでは旋回性が上がり、曲がりやすく感じられ安心感に繋がる。コーナーアペックス付近からジワリとアクセルを踏み込めば、リヤモーターが車体をグイと押し出す感覚がある。だからクルマは操舵方向へクルッと向きを変え、脱出速度も上げることができる。
ステアフィールもしっかりとした手応えがあり、切り戻しのステア操舵の重さも感じられスポーティに思えるほどだった。TNGA-Cを熟成した2巡目と説明するが、プラットフォームの熟成によりフロントのストラット、リヤのWウイッシュボーンとダンパーがうまく機能している印象で、ボディ剛性の高さも感じられ、足がよく動いているという感覚がある。
新型プリウス「Z」 ボディカラーはアッシュトヨタからはエンジン音もこだわりの部分という説明があったが、もっと演出してもいいと感じた。素のエンジン音が聞こえているのだが、ダイナミックフォースエンジンは燃焼音も大きく、気持ちのいい音という類ではないと思うので、音を作る方向が良いのではないかと感じた。
そして高い静粛性も謳っているが、非常に静粛性に優れているというよりは、クラスレベルではないだろうか。積極的にEV走行をするので、そうした時は静粛性が高いものの、他社のハイブリッドでも同様の傾向があり、高い静粛性というポイントでは印象が薄かった。
マチュアレッドのインテリアカラーオプションのパノラマルーフ装着するタイヤは195/50-19インチで、細幅大径のコンセプトにシフトしている。これはクラウンでも同じ傾向で、タイヤの考え方が少しずつ変わってきていると思う。かつてBMW i3がその先駆車で、ブリヂストンのオロジックタイヤが装着されていたが、同じベクトルにあるタイヤというわけだ。もちろん、走行時にそうした特徴を感じることはなく、大径サイズによるカッコいいデザインに繋がるメリットは感じる。
「G」「Z」グレード専用の19インチアルミホイール地味な部分になるがブレーキのタッチが良かった。ハイブリッドは回生ブレーキと油圧ブレーキの両方を使うが、その切り替え場面で減速度が変わったり、特に停止寸前でギクシャクすることがままあるのだが、新型プリウスではまったくそうした挙動はない。
全域油圧ブレーキで止まるように滑らかに、スムースに停止する。それは前型ではアキュムレーター(蓄圧器)を使っていたが、今回油圧ポンプで発生させた油圧をダイレクトにブレーキに伝えるオンデマンド式としたことで可能になったと説明している。言ってみればデバイスを介さない分ダイレクトに制御できるようになったということだ。
パワーユニットは「G」「Z」グレードには2.0L4気筒ガソリンのハイブリッドを搭載し、FFとE-Four(AWD)から選択できる。そしてエントリーグレードの「X」とサブスクのKINTO用が1.8L4気筒ガソリンのハイブリッドということになる。
「Z」グレードのエンジンルームハイブリッドシステムもシリーズ・パラレル式という呼称になり、EV走行するシリーズ式の場面が多くなった。エンジンはバッテリー残量によって稼働するが、それだけではなく、要求トルクによっても稼働し、またTHSIIが基本なので、エンジン出力を充電と駆動に分配する制御も含まれている。
そのパワートレインはアクセルレスポンスがいいと感じられるが、制御はアクセルの踏み込む速度、踏み込み量をセンシングしながら加速度を速く立ち上げる制御としているためで、ドライバビリティがいい。
特に10~20km/hあたりからの緩加速で力強さを感じることができ、また40km/h付近からの加速でも駆動モーターによる反応遅れのない加速をするので、気持ちのよい走りが楽しめるというわけだ。
PHEVモデル
また、この日は2023年3月発売予定というPHEVにも少し試乗することができた。プラグインハイブリッドはハイパフォーマンスモデルに位置付けているという説明で、出力は164kW(223ps)を発揮し、EV航続距離は従来のPHEVの50%アップというので、日常使いはほぼEV走行で賄うことができるレベルだ。
新型プリウスPHEVプロトタイプ試乗はサーキットで、市街地を想定した走行をしたが、ボディ剛性の高さから横Gがかかる場面でも安定して走れる安心感があった。
じつは、この日現行型PHEVとの比較試乗ができたのだが、PHEVの仕組みの評価よりもボディの違いのほうが印象に強く残った。とても現行型PHEVでは新型PHEVと同じように走行できないわけで、それはボディのねじれやサスペンションの違いによるもので、大幅な進化を遂げていることを実感したのだった。
新型プリウスPHEVのスペック等、詳細は未公開なので、詳しくはわからないが乗ってすぐに違いが顕著にわかるレベルの進化があることをお伝えしておこう。
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そりゃアンチも騒ぐわな