前後独立モーターで実現する4WD駆動
三菱自動車のウインター試乗会でアウトランダーPHEVの試乗を行った。会場は新千歳モーターランドの中のみ、つまり完全にクローズドコースでの試乗であったが、雪道における電動車の優位性、さらにいうならアウトランダーPHEVと雪道との親和性の高さを十分に確認することができる試乗会となった。
雪道を走る上で大切なクルマの機能は何だろう? と考えたときに多くの人が答えるのが「4WD」だ。じつはそれ以上に大切なのはタイヤの性能なのだが、そう言っては元も子もない。タイヤが同条件ならば、やはり4WDであるかどうか? は非常に最重要な要素となる。
アウトランダーPHEVはもちろん4WDなのだが、一般的な4WDとは少し構造が異なる。一般的な4WDはエンジンの出力をプロペラシャフトを使って前後に振り分ける。この場合は前後のトルク配分をデフなり、クラッチなり流体継ぎ手などが担当することになる。しかし前後に独立したモーターを持つアウトランダーPHEVの場合は、そうした機械的な結合は一切不要。前後のモーターをそれぞれ制御すれば、トルク配分を行えることになる。
アウトランダーPHEVにはS-AWC(スーパー・オール・ホイール・コントロール)と呼ばれる機構が付く。これはツインモータードライブの4WDを核として、AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)、ASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)、ABSを統合制御する機構。AYCは前後左右のブレーキを独立制御することでアンダーステアやオーバーステアを解消するように働くものだ。
ピュアエンジン車でも同様の機構を働かせることは可能だが、アウトランダーPHEVのように基本駆動力をモーターから得ている場合は、その制御の細かさと緻密さ、そして反応速度の速さはかなり高く、ピュアエンジンでは実現しがたいものだ。
モーターならではのレスポンスがスポーティな走りを後押し
さて走りだ。アウトランダーPHEVには、ノーマル、スノー、ロック、スポーツと4つのドライブモードがある。このうちスノーモードが2018年のマイナーチェンジで与えられたモード。雪道で走るならば、どのモードよりもこのモードがマッチするはずだ。スノーモードでの走りを一言で言うなら「なにも起きない」だ。発進からコーナリング、そしてブレーキングからの完全停止までが、つねに安定した状態で走ることができる。注意したのは、スタート直後、ストレートを走ったあとの左コーナー。何も起きずに加速してしまうので、ここはしっかり減速しないとコースアウトする。
ためしにノーマルモードで走ってみたが、これでもけっこういける。しかし安定感はやはりスノーモードが上。ノーマル、スノー、ロックともにアクセルを思いっきり踏んだときはほとんど変わらない発進となる。コーナーでクリップ以後にアクセルを強く踏むと、適性な加速を得ることができた。同時にエクリプスクロスにも乗ったのだが、ピュアエンジンであるエクリプスクロスは、かなりきつめに制御が掛かってしまう。このあたりでキッチリと効率よく加速していく様はまさに電動車のPHEVならではだと言える。
せっかくのクローズドコースの雪道、スポーツモードを使って少し振り回してみると、これがじつに気持ちいい。パドルスイッチを使って6段階に調整できる回生レベルをもっとも強くしておく。コーナーに向かってアクセルをオフすれば、ブレーキを踏まなくてもフロントに荷重が入る。そこからステアリングを切るとキレイにリヤが流れ出すので、すかさずカウンターステアを当てて、アクセルをオンにすれば適性にトルクが4輪に配分され、クルマが安定し前に出ていく。アクセルに対する反応が鋭いので、ヨーを消してクルマを安定させるのが楽なのだ。
2018年のマイナーチェンジによって搭載エンジンが2.4リッターとなった。モーターもよりパワフルとなったおかげで、走りに関しては力強くなっているが、それにも増してモーターのトルクの発生のピックアップのよさ、エンジンでいうところのレスポンスのよさが走りにキビキビ感を与えている印象だ。
アウトランダーPHEVは充電することによってEVとして機能する。2018年のマイナーチェンジでバッテリー容量がアップ、65kmのEV走行(JC08モード)を可能にしている。しかし、それよりもエンジンを持つことがスノードライブでの優位性があるのだ。
現状でEVはまだまだ暖房に難がある。しかしアウトランダーPHEVはエンジンを搭載するので暖房への心配は無用。さらにAC100Vのアウトプットを使って、電熱ポットを使うことなども可能。給油ができるので、航続距離の心配もない。
さまざまな面から見て、ウインタードライブでの優位性にあふれるのがアウトランダーPHEVだといえる。
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