Porsche 356 A 1600 Speedster
ポルシェ356 A 1600 スピードスター
ジープ誕生80周年記念モデル「ラングラー 1941」、特別なパフォーマンスパーツを装着して登場
今はなきサーキットを疾走していた356
古く錆びたポルシェ356 スピードスターへの熱い情熱が、ロン・サッツァー(Ron Szasszer)を突き動かした。そして、そのヒストリーを辿ることで、彼はこのクルマでレースを戦っていた男へと近づくことができたのである。
アメリカ・メリーランド州のアッパーマールボロにある「マールボロ・モーター・レースウェイ(Marlboro Motor Raceway)」は白樺の木々に囲まれている。今ではすっかり寂れてしまったが、1974年まではマリオ・アンドレッティ、ロジャー・ペンスキー、ジャッキー・スチュワート、ポール・ニューマンといったレジェンドたちがここでレースを戦っていた。
「私がモータースポーツから引退して間もなく、このサーキットは閉鎖されました。つまり、今も私が、このコースのラップレコードを保持しているということです」と、かつてこのサーキットを舞台にレースを戦った当時80歳のエドワード・パーレットは語ってくれたという。
パーレットはマールボロ・モーター・レースウェイで競技ライセンスを取得し、ここでの最初のレースに参加。6時間耐久レースでは2度の優勝を果たした。彼はボブ・ロライリエール、ジャック・ヘロン、ナグル・ブリッドウェル、レイ・クラフトソンらが所属していた地元レーサーグループ「フィリー・ギャング(Philly Gang)」のひとりだった。
ある男がネットサーフィンで発見した1台のポルシェ
2008年、サッツァーはドイツ北部にある自宅アパートのソファに座り、片方の目はネットでクルマの売買情報をチェックしつつ、もう片方の目でテレビを見ていた。「本当に何も買うつもりはなかったんですよ。もちろんポルシェだってです(笑)」と、サッツァーは笑顔で13年前のことを振り返る。
子どもの頃からクルマが大好きだったサッツァーだったが、ポルシェとは特に関わりを持たずに育ってきた。ハンガリーから移住してきた父親の写真には、彼が巨大なシボレーにもたれかかっている姿が写っている。そして、サッツァー自身の初めての愛車は、スクラップのフォルクスワーゲン ビートルをニコイチにして作られたバギーだった。
2台目は、サスペンションをローダウンしたキャルルックのビートルで、マットブラックのボディカラーに大径ホイールを組み合わせていた。その後、大学在学中にサッツァーは友人のイェンス・ウィルケと、ハンブルクの東部にある古い駅舎でワークショップをオープン。統一後のドイツでトラバント以外のクルマを所有したいと切実に願う東ドイツ出身の人々のために、フォルクスワーゲンをリビルドしていた。
パティナをこよなく愛するサッツァー
当時、サッツァーはレストア前のジャガー Eタイプを購入したりもしているが、それでもポルシェに惹かれることはなかったという。その後、彼はランドローバー シリーズIII、メルセデス・ベンツ 230 SLと乗り継ぎ、そしてついにポルシェ911(タイプ993)を購入している。
「私はヒストリックカー、特にパティナ(自然劣化した状態)に弱いのです。ドアに貼られたカーナンバーや、レースのヒストリーを持つクルマにグッときてしまいます。ソファでネットサーフィンしていた時も、無意識に探していたのかもしれませんね」
最終的に彼はオーストリアのディーラーで「356 A 1600 スピードスター」を発見した。その356は1957年製で、オリジナルのレーシングトリムとオレンジ色のペイントが施されていた。
「説明はほとんどなくて、価格さえも付けられていませんでした。ただ、アメリカ東海岸でたくさんのレースに出場していたことと、『エド・パーレットというドライバーが所有していたことがある』というコメントのみ。でも、その瞬間にひと目惚れしてしまったのです」
彼はすぐに頭金を支払った。この突発的な散財は、妻には言わない方がいいと思ったことを彼は覚えている。
未知のアメリカ人ドライバーを探す日々
サッツァーが残りの金額を送金したことで、ついにオーストリアのディーラーで356と対面を果たす。ハンブルクへと持ち帰ると、すぐにエンジンを再整備して走行可能な状態にしてくれるガレージを探した。
この時、彼はこのクルマの外観を変えたくないと思っていたという。しかし、ある程度の近代化は不可避だった。オリジナルのレーシングバケットシートを交換し、助手席のスペースを確保。大型ロールケージも取り外され、古びた燃料タンクは新しい金属製タンクに取り替えられている。
ウィンドディフレクターはオリジナルのウィンドスクリーンに交換。サッツァーは1960年代にパーレットが使用していたのと同じ、実に50年前に製造された古いマグネシウムホイールも探し出した。彼がこの未知のドライバーのことを調べ始めたのは、まさにこの時からだった。
「インターネットで彼の名前を検索しても1件しかヒットしませんでしたし、何の役にも立ちませんでした(笑)」と、サッツァーは肩をすくめる。ところがある日、アメリカでパーレットと話したことがあるという知らせが届いた。
「エドは生きていたのです! まさに大興奮でした」。それから1週間も経たないうちに、サッツァーは通訳と共にメリーランドへと向かう機上の人となっていた。
1960年代にラリーやレースを戦ったパーレット
「エド・パーレットは60年代の初めにレースキャリアをスタートしています。 彼は学生時代の1959年には、日々のドライブ用に中古のポルシェ356を購入していました。その後、医療機器業界で働いていた時に、『フィリー・ギャング』のひとりであるナグル・ブリッドウェルと知り合い、彼からレースに誘われたのです」
ブリッドウェルは1965年にレースを辞め、パーレットは彼がレースで使っていた356 A スピードスターを譲り受けることになった。
しかしこの貴重なプレゼントは、1969年にリメロックでクラッシュ。エンジンとトランスミッションを抱えたまま、パーレットは新たな愛車を探すことになった。そして、彼は友人のブルース・ベイカーが経営するディーラーで、シャシーナンバー「84333」と出会った。
「84333」は、1957年12月にシュトゥットガルトのロイター社で製造された最後のスピードスターのうちの1台だった。そして、ブレーマーハーフェン経由でニューヨークのマックス・ホフマンへとデリバリー。ベイカーはレーシングドライバーのディック・スカーボローから譲り受けていた。この356 A スピードスターを手に入れたパーレットは、その後長年にわたり乗り続けることになる。
パーレットは生まれながらの才能に恵まれているわけではなかったが、細部にまでこだわる性格を持っていた。彼は専用のウィンドディフレクターをデザインし、さらに8mmカメラをホイールハウジングに装着。驚くべきことに、この時代にあって走行中にシャシーがどのように機能するかを動画で確認している。
1963年9月21日には、バージニア州チェサピークで開催された「バレル・オブ・ファン・ラリー」で優勝。1967年9月末にデトロイト近郊の「スチールシティ・インターナショナル・レースウェイ」で開催された国内レース、1969年にフィラデルフィアで開催された「アパラチアン・ナショナル・ラリー」にも参加したことが分かっている。
2011年にすべてのレストアを完了
1975年にレースから引退したパーレットは、ペンシルバニア州ベツレヘムのTWAドライバー、ジャック・クリンゲスに356 A スピードスターを売却。2008年にコレククターのフランツ・ヴィットナーがオーストリアへと持ち込むまで、クリンゲスの納屋に保管されていた。
サッツァーは2011年にようやくこのクルマのレストアを完了。その歴史をより深く理解するために、パーレットのもとを頻繁に訪れている。2012年にはパーレットがかつて使用していたヘルメットと、356 A スピードスターに関するすべての請求書と詳細なレース記録がサッツァーにプレゼントされている。
残念ながら2013年にパーレットは亡くなったが、彼が成し遂げてきたことを後世に伝えるべく、サッツァーは様々な活動を行ってきた。そして、ハンブルクの完璧とは言えない天候にもかかわらず、半世紀近く前に刻まれたレースの痕跡が今も残っているこの356 A スピードスターを定期的にドライブしている。
その様子は、自身のインスタグラムアカウント(@unitedgarages)で公開されている。
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