充実装備にスポーティな走りのGTX
確かに運転席周辺やボディの前半、シャシー構成などにフォーカスを当てるなら、2021年のフォルクスワーゲンID. 4と目立った違いはない。それでも、ID. 5にも触れるべき部分は少なくない。
【画像】スポーティな純EV VW ID. 5とID. 4の「GTX」 欧州で競合する電動モデルと写真で比較 全143枚
ID. 5の基礎骨格となるプラットフォームは、ID. 4と同じMEB EVアーキテクチャ。後輪駆動と四輪駆動が選べるパワートレインが用意され、動力性能や航続距離も基本的には同じだ。
しかし、クーペ風シルエットとするべく、ルーフラインはボディ後半でなだらかに傾斜している。欧州で売られるID.ブランドとしては3台目、フォルクスワーゲンとしては9種類目のSUVとして、独立したモデルという位置づけにある。
パワートレインのラインナップは、後輪駆動のシングルモーター仕様が、174psと203psという2種類。さらに、今回試乗した四輪駆動のツインモーター、GTXも選べる。こちらは総合で299psを発揮し、0-100km/h加速6.3秒という俊足を誇る。
駆動用バッテリーの容量は、77kWhが標準。航続距離は仕様によって異なるが、489kmから519kmの間がうたわれる。ボディの四角いID. 4と比べると僅かに長い。
フォルクスワーゲンの高性能バージョンといえば、GTIを思い浮かべる読者が多いと思うが、純EVのID.ブランドでも同等の展開がされている。ID. 5のGTXは、ゴルフのGTEやGTDといったバリエーションに並ぶものと考えていい。
つまり、装備が充実していて、見た目がスポーティ。標準のID. 5よりパワフルに仕立ててあり、コーナリング性能も高い。
驚くほど速く、機敏に走れるシャシー特性
実際、ID. 5 GTXは想像以上に速い。パワーウエイトレシオは138ps/tと、活発なハッチバックと同等なことを考えると驚くほど。その理由は、駆動用モーターの特性にある。
最大のパワーを瞬間的に発進直後から生成し、速度の上昇とともに徐々に勢いが弱まっていく。シートへ背中が押し付けられるほどではないが、後輪駆動のID. 5と比較すると、直線加速は見違えて鋭い。スポーティという言葉がよく似合う。
コーナーでの足取りも安定している。ステアリングホイールは、手に伝わる感覚や情報量が乏しいものの、磨かれた精度がそれを補う。反応が常に予想しやすく、速めの侵入速度でも自信が揺らぐことはない。
重さのある駆動用バッテリーがフロアに敷き詰められ、重心が低く、前後の重量配分も良好。GTXには専用サスペンションが組まれ、車高は15mm低い。
ボディロールは巧みに抑えられており、小気味よくフロントノーズが反応する。操舵に対する反応もクイックで、コーナーからの脱出加速も機敏だ。
通常はリアの駆動用モーターが主に仕事をする四輪駆動システムに加えて、旋回性を高めるトルクベクタリング機能も搭載する。ドライバーを中心にボディが回転していくような感覚があり、運転の楽しさを高めている。
一方で穏やかに走っている限り、扱いやすく快適。高く評価したい特性だといえる。
慣れが必要だと思ったのが、感触に乏しいブレーキペダル。それでも効果的に運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、航続距離を伸ばしてくれる。
1度の充電で400km近く走ることも現実的
動的能力に長けたID. 5 GTXだが、ツギハギの多い路面や橋桁の継ぎ目などの処理にも優れる。スケートボード構造が生む剛性の高さが発揮されている。
市街地や高速道路など、複合的な条件で試乗したが、乗り心地で我慢を強いられることはなかった。従来的なフォルクスワーゲン・ティグアンなどとも、相違はない。
エンジンやエグゾーストのノイズがないことで、純EVは一般的にタイヤノイズや風切り音が目立つ傾向にある。しかし、ID. 5の場合はそれも最小限に遮断されている。
純EVのシステムは、フォルクスワーゲン最新となるバージョン3.0のソフトウエアで制御されている。その結果、急速充電能力は最大135kWまで対応するようになった。
出荷時に実装されるのはID. 5が初となり、ID. 3とID. 4もコネクティビティ機能でアップデートされるという。ただし電圧800Vのシステムを採用するモデルには、最大350kWまで対応可能なものもあり、目立って高速化されたわけではない。
またバージョン3.0では、ナビゲーション・システムがルート上の充電インフラを拾い、充電計画も含めたルート提案をしてくれる。途中に、どこの充電器で何分充電するべきか正確に計算してくれるから、着実に目的地を目指せる。
モニターへ表示される航続距離も正確。渋滞や加減速の頻度に関わらず、大きく距離は変化しないようだった。1度の充電で400km近く走ることも現実的だ。
新機能がふんだんで実用的 運転もしやすい
筆者がもう1つ感心したのが、パークアシスト・プラスと呼ばれる機能。最大50mまで、多少複雑なルートでも自律的に駐車してくれるものだ。自宅の敷地の入り口でボタンを押せば、事前に学習させた駐車場までID. 5が自ら戻ってくれる。
ただし、作動中はシステムが頻繁にドライバーへ操作の確認を求めてくる。事前にユーザーからの使用感を得ているというが、もう少し簡素化できたのではないだろうか。
ダッシュボード中央のタッチモニターの下には、タッチセンサー式のスライダー・コントローラーが付いている。エアコンの温度やラジオの音量などを調整できるのだが、クリック感がなく反応もいまひとつ。イルミネーションもないため、夜間は操作しにくい。
多くの車載機能のインターフェイスは、タッチモニターに集約されている。出発前に、予め必要な操作を済ませておく必要があるとも感じた。
フォルクスワーゲンID. 5の訴求力は高い。新機能がふんだんで実用的で、運転しやすい。GTXを選ぶと走りはスポーティだし、ステアリングフィールも良好。見た目も良い。
英国で懸念するなら、その価格。より手頃な予算で、同等の能力を備えるモデルを選べなくはない。近似サイズのキアEV6なら、一層パワフルで動的能力に長けたシャシーを備え、航続距離でも並ぶ。価格も1万ポンド(約160万円)ほど安い。
それでもID. 5は、フォルクスワーゲンらしく装備は充実し、走りは洗練されている。ブランドの魅力もある。有力な選択肢であることは間違いないだろう。
フォルクスワーゲンID. 5 GTX(欧州仕様)のスペック
英国価格:6万520ポンド(約968万円)
全長:4599mm
全幅:1852mm
全高:1615mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:6.4秒
航続距離:489km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2167kg
パワートレイン:AC非同期モーター(フロント)+AC同期モーター(リア)
バッテリー:77kWhリチウムイオン
最高出力:299ps
最大トルク:48.0kg-m
ギアボックス:シングルスピード
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