現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 欲しいクルマを手に入れるなら原体験+αが重要かもしれないという話

ここから本文です

欲しいクルマを手に入れるなら原体験+αが重要かもしれないという話

掲載 3
欲しいクルマを手に入れるなら原体験+αが重要かもしれないという話

運営元:外車王SOKEN
著者 :松村 透

「続・悪口が似合わない」日本で愛され続ける輸入車 VWゴルフ&フィアット500

人生初の輸入車体験は高校1年生のとき、いわゆるこれが「原体験」だ。



もう30年以上の前のことだけど、強烈な体験だったのでいまだによく覚えている。輸入車初体験となったクルマは、親友のお父さんが念願かなってついに購入したジャガーXJ6だった。年式は忘れてしまったが、たしか当時5年落ちくらいで、1986年あたりだったはずだ。



親友からは、ジャガーが納車されたら見せてもらえるという約束を事前に取り付けてあったが、当日になって同乗させてもらえることになった。こんな機会はめったにないので、親友とそのお父さんの厚意に甘えさせてもらうことにした。



当時、筆者が住んでいた自宅はマンションの5階だった。そのマンションには駐車場が隣接されていて、暇さえあればベランダから駐車してあるクルマのフォルムを眺めていた。ミニバンもRV車も少数派でほとんどがセダンだった。同級生の自営業のお父さんが発売されたばかりのV8クラウンが止めてあり、カローラクラスとは2まわりくらい違うボディサイズに驚いたっけ。この日も、自宅のベランダからジャガーの到着を待ちわびていた。



そして夕暮れどき。これまで見たこともないような曲線を描いたガイシャがすべりこんできた。それこそまさに親友のお父さんのところに納車されたばかりのジャガーだ。上からの眺めだと、リアの絞り込みがより強調される。マンションの駐車場に止まっている日本車とはあきらかに役者が違う。一瞬で先述のV8クラウンが色褪せてしまうほどだ。まさにエレガントという表現がぴったりなクルマだと思った。



とはいえ、このまま見とれていては物事が先に進まない。玄関を飛び出し、急いで階段を駆け下りると、そこには堂々とした、まさに「ジャガー」がたたずんでいた。



何しろそれまで、自分の親はもちろん、親族を含めて輸入車に乗っていた人が誰もいなかったので、突如目の前に現れたジャガーの雰囲気にただただ圧倒されてしまった。



それでもおそるおそるジャガーに近づいてみると、せっかくなので助手席に乗せてくれるという。ドアを開けようとするとそこは運転席だと気づく。おじさんの購入したジャガーは左ハンドル仕様だったのだ。



「イギリス車なら右ハンドル仕様でしょ?」みたいな声が外野から聞こえてきそうだが、もはやそんなことはどうでもいい。人生初の輸入車&左ハンドル体験が同時に体験できることになったのだから。



おそるおそる助手席に乗り込んだ瞬間、革シートの匂いが鼻をくすぐった。そして厚みのあるシートはクルマのそれというよりソファみたいに思えた。ドアを閉めると「バチャン!」と硬質な音とともに室内は静寂に包まれる。革とウッドパネルとメッキパーツが広がる景色。プラスチックを用いている部分は最小限だ。これが「ガイシャ」なのか・・・。この時点ですでに夢見心地なところに、おじさんからシートベルトの装着を促され、ハッとなる。シートベルトを着用しようとするといつもと逆の動きに戸惑う。右ハンドルの眺めってこんな感じなのか。



おじさんが日本車と比べるとえらく細身なセレクターレバーをドライブに入れるとバクンとギアが入り、するするとジャガーが動き出した。初めての輸入車&左ハンドル体験、そしてジャガー特有の加速と乗り心地。何しろいちどに流れ込んでくる情報量が多すぎる。ついさっきまで雑誌で読んでいたことが、いま目の前で現在進行形として起こっている。頭のメモリがパンクしている間にも、ジャガーXJ6は停止位置からすぅーっと走り出し、信号で停車するときもやはりすぅーっと止まる。「こ、これがうわさの猫足か・・・」。おじさんの運転も、今日納車されたばかりとは思えないほどスムーズだ。



そのうち、スピードが乗る90度左コーナーが近づいてきた。ここはオーバースピードで飛び込むとタイヤがたちまちスキール音をあげる。このスキール音狙いで、あえてオーバースピードで侵入するクルマがいるくらいだ。果たしてこのジャガーは・・・?



多少ロールしたものの、何ごともなくするすると90度左コーナーをクリア、そのまますぅーっと加速していった。このとき、高校生の身分で不覚にも思ってしまったんである。こんな感覚がいつでも味わえるのなら「いつかガイシャに乗りたい」と。



こうして1時間弱の助手席体験で、すっかり輸入車の魅力に取り付かれてしまった。



それから数年後、運転免許を取得し、若葉マークも無事に取れて、少しずつ運転にも慣れはじめていた。21才の誕生日を数ヶ月後に控えたある日、無謀にも「ポルシェ911に乗ってみたい」思いたった。



ジャガー助手席体験後、アルバイト先の社長が所有していたポルシェ911にすっかり魅せられてしまい、やがて自分でも運転してみたいという思いがふつふつと湧きあがっていたものがついに臨界点を突破したのだ。



しかし、社長の911は当時納車されたばかりだし、そもそも高額すぎてちょっと貸してくださいとはいえる雰囲気ではなかった。いまでこそ、ポルシェ911のレンタカーのサービスもあったりして、お金を払えば乗れるようにはなったが、いまから30年も前にはあるわけない・・・かと思いきや・・・あった!バブル期に流行った、会員制の高級レンタカーサービスの1台として911を借りることができた。とはいえ、入会金やら年会費でウン十万という費用が掛かる、特権階級(?)向けのサービスだ。貧乏学生にはあまりにも現実からかけ離れていた。



で・・・どうしたかというと、正面突破して、無謀にも当時の正規ディーラーに行って「試乗させてください」と乗り込んだんである。



向こうだって二十歳そこそこの若造が911を買えるとは思ってもいない。でも乗せてくれたんである。車種は忘れもしない。993カレラの6速MT。初の輸入車のドライブが左ハンドルのMTのポルシェ911。いま思うとよく乗せてくれたと思う。



ショールームの横にデモカーが横付けされ、さぁどうぞと運転席へと案内される。今度は失敗することなく左ドアから運転席へとすべりこんだ。半ドアにすることなくスターンとドアを閉め、シートポジションを合わせてからシートベルトを締めて、左手でスターターをひねり、無事にエンジン始動(このあたりの一連の所作はアルバイト先の社長さんの動きを見ていたのですんなりできた)。いよいよ背後で空冷フラットシックスがうなりを上げる。あぁ・・・。自分の意思でここまで来ておきながらもう後には引けない。



自宅に帰るまでにクラッチがなくなったとか、素人がまともに運転できるクルマじゃないとか・・・耳年増になりそうなことをさんざん聞かされていたので、緊張はピークに達していた。おそるおそるクラッチミートしてエンストすることなく路上に出られたときは自分はニュータイプなんじゃないかと本気で思った(笑)。自分がポルシェを運転している。夢に見た光景が現実となった瞬間だ(デモカーだけど)。



実はこの初輸入車ドライブ、クルマの印象はあまり残っていない。ディーラーから路上へ飛び出した記憶と、993運転に少しずつ慣れてきたころ、ふとルームミラーを見ると・・・。お目付役として同乗したセールス氏の「ったく、やってらんねーよ」な態度丸出しで居眠りをしていたからだ。視線があうとさすがに居住まいを正したが、何しろこちらは無理矢理試乗をお願いしている身。悔しいが何もいえないし、そういう態度を取られても仕方がない。



いまにして思えば「いつかは911を手に入れたい」が、このときから「今に見てろよぜったいに手に入れてやるからな!」に変わった瞬間だったかもしれない。その後、多少の紆余曲折があったにせよ、どうにかこうにか911を手に入れることができた。その後、このディーラーはおろか、輸入元もなくなってしまうのだけど、あのとき、同乗したセールス氏の不遜な態度がエネルギー源になったことは確かだと思う。



原体験という刷り込みと、何が何でも手に入れようというある種の意地。諦めたらそこで終わりだ。



事実、自分のなかでも「もう、このクルマは買えないだろうな」と思わざるを得ない車種が増えてきた。



欲しいクルマを手に入れるなら原体験+αが重要かもしれない。



この2つの要素が掛け合わされることで、欲しいと思っているクルマが手に入る確率がグッと高まるような気がする。



[画像/JAGUAR・Porsche、ライター・松村透]

こんな記事も読まれています

N-VANは乗り手を選ぶ…… 「おれはこのクルマに選ばれるだろうか」と試されるぞ!! 【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
N-VANは乗り手を選ぶ…… 「おれはこのクルマに選ばれるだろうか」と試されるぞ!! 【テリー伊藤のお笑い自動車研究所】
ベストカーWeb
ランドクルーザー250を本気で買いに行ってきた! すでに[完売] これから[抽選販売] [まだ買える] 販売店によって違いすぎる売り方に驚愕!
ランドクルーザー250を本気で買いに行ってきた! すでに[完売] これから[抽選販売] [まだ買える] 販売店によって違いすぎる売り方に驚愕!
ベストカーWeb
全部当てはまったら「クルマ好き老害」認定! ついついやりがちな「他人に煙たがられる」カーマニアの行動7つ
全部当てはまったら「クルマ好き老害」認定! ついついやりがちな「他人に煙たがられる」カーマニアの行動7つ
WEB CARTOP
率直に聞く あなたはなぜ「クルマ」が好きなのか?
率直に聞く あなたはなぜ「クルマ」が好きなのか?
Merkmal
愛車の履歴書──Vol35. 益若つばささん(前編)
愛車の履歴書──Vol35. 益若つばささん(前編)
GQ JAPAN
日産R32「スカイランGT-R」を思い続けて30余年。カスタムの目標は「400R」に負けないパワーです!
日産R32「スカイランGT-R」を思い続けて30余年。カスタムの目標は「400R」に負けないパワーです!
Auto Messe Web
40アルファードの静粛性が一変!調音施工で快適性が飛躍的に向上
40アルファードの静粛性が一変!調音施工で快適性が飛躍的に向上
レスポンス
街で見かけるダイハツ車たちがサーキットを攻める!「D-SPORT & DAIHATSU Challenge Cup 2024」に密着してみた
街で見かけるダイハツ車たちがサーキットを攻める!「D-SPORT & DAIHATSU Challenge Cup 2024」に密着してみた
くるまのニュース
【面白ストーリー】クラシック911を新車に生まれ変わらせる「Singer(シンガー)」のエリート向けポルシェ964とは?
【面白ストーリー】クラシック911を新車に生まれ変わらせる「Singer(シンガー)」のエリート向けポルシェ964とは?
AutoBild Japan
R34GT-Rはタービン交換に40万円!? 中古で激安の過走行車購入はアリなの? 10年/10万kmのメンテ費用はいくらかかるのか
R34GT-Rはタービン交換に40万円!? 中古で激安の過走行車購入はアリなの? 10年/10万kmのメンテ費用はいくらかかるのか
ベストカーWeb
【20世紀名車コレクション】ボクのクルマが好きになった原点、叔父の初代トヨタ・セリカがヒーローだった!by 西川淳
【20世紀名車コレクション】ボクのクルマが好きになった原点、叔父の初代トヨタ・セリカがヒーローだった!by 西川淳
カー・アンド・ドライバー
クルマ愛ゆえの辛口? 自動車評論家「徳大寺有恒」没後もうすぐ10年、モータージャーナリストの私が今でも尊敬し続けるワケ
クルマ愛ゆえの辛口? 自動車評論家「徳大寺有恒」没後もうすぐ10年、モータージャーナリストの私が今でも尊敬し続けるワケ
Merkmal
安かろう悪かろうなクルマをつかまされないために知っておくべき……[修復歴]と[事故歴]の違いとは  どうやって見分けりゃいいの
安かろう悪かろうなクルマをつかまされないために知っておくべき……[修復歴]と[事故歴]の違いとは  どうやって見分けりゃいいの
ベストカーWeb
世界でいちばん売れたテスラ モデルYは何がいいの?【工藤貴宏】
世界でいちばん売れたテスラ モデルYは何がいいの?【工藤貴宏】
グーネット
進化したマツダ「ロードスター」山道での印象は? “一体感と走る楽しさ”はバイクに匹敵! 新型は“究極のロードスター”なのか?
進化したマツダ「ロードスター」山道での印象は? “一体感と走る楽しさ”はバイクに匹敵! 新型は“究極のロードスター”なのか?
VAGUE
【竹岡圭 K&コンパクトカー ヒットの真相】ホンダN-BOX「独自のユーティリティ性と確かな走行性能」
【竹岡圭 K&コンパクトカー ヒットの真相】ホンダN-BOX「独自のユーティリティ性と確かな走行性能」
カー・アンド・ドライバー
最高に楽しい! スズキの最新「軽トラ」が“遊びクルマ”に最適! 5速MT搭載の「スーパーキャリイ Xリミテッド」何がスゴい?
最高に楽しい! スズキの最新「軽トラ」が“遊びクルマ”に最適! 5速MT搭載の「スーパーキャリイ Xリミテッド」何がスゴい?
くるまのニュース
新事実[ロードスターは世界一] ナンバーワンのスポーツカーである8つの理由
新事実[ロードスターは世界一] ナンバーワンのスポーツカーである8つの理由
ベストカーWeb

みんなのコメント

3件
  • hab********
    一番大事なのは「先立つもの」
  • fxnhe501
    乗せてもらって、いいなと思った輸入車の原体験がサターンのSL2(セダン)だった。これが残ってないんだよ。先立つものがあっても、個体そのものがなければどうしようもない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1620.04118.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

261.213900.0万円

中古車を検索
911の車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1620.04118.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

261.213900.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村