実はエンジンを使ったクルマでも燃料でカーボンニュートラル可能!?
ブラジルや米国ではクルマの燃料として普及。トウモロコシやサトウキビを原料としたバイオエタノール燃料はなぜ日本で普及しないのか? そして研究が進む次世代バイオ燃料の現状と日本での今後の可能性は?
えっ、カペラにも水素エンジンが!? マツダもBMWも実用化できなかった超難題に挑むトヨタの狙い
既存のクルマを活かした脱炭素のポテンシャルに迫る。
文/高根英幸
写真/Adobe Stock、INDY CAR、MAZDA、TOYOTA、ユーグレナ(トビラ写真=scharfsinn86-Stock.Adobe)
【画像ギャラリー】ブラジルやアメリカで普及するバイオエタノール燃料車 日本での普及の可能性は??
■欧米では流通するバイオエタノール燃料 なぜ日本で普及せず?
アルコール燃料を使うことで知られるインディカーでも2007年からはついに100%バイオエタノール燃料となった
石油産出国ではないブラジルでは、1930年代からサトウキビを原料にしたバイオメタノールをガソリンと混ぜてクルマやオートバイの燃料として利用している。
米国でもトウモロコシを原料にしたバイオエタノールをオイルショック後からガソリンに添加している。インディカーがアルコール燃料で走るのも、モータースポーツと言えど環境に配慮する姿勢を見せるためで、2007年からはついに100%バイオエタノール燃料になった。
欧州でも環境志向の高まりから近年、バイオエタノールをガソリンに混合した燃料が販売されるようになっている。「E85」は85%がバイオエタノールという燃料で、これを使って走るマシンのカテゴリーもニュル24時間レースには設定されている。
ヨーロッパでもバイオエタノールをガソリンに混合した燃料が販売されている。「E85」は85%がバイオエタノール15%がガソリンという比率だ
日本も石油産出国ではないが、バイオエタノールを作るのは不可能ではないにせよ、まず効率が悪い。
それはそもそも原料を輸入して、国内で加工して作った製品を輸出して外貨を獲得している。その外貨で国内経済を回しながら、再び原料を仕入れる原資にしている。その構造から言えば、エネルギーからプラスチックまで様々な製品を作ることができる石油は、非常に都合がいい原料だったのだ。
日本で手に入る原料で大量にバイオエタノールを造ろうと思ったら、米を使うしかない。つまり食用米や日本酒と完全に被ることになる。
食料と競合してしまう第一世代のバイオエタノールは日本で普及しなかったのは、当然とも言えたのだ。
■日本では第二世代と第三世代のバイオ燃料を研究中
バイオエタノール燃料はさとうきびやとうもろこし、植物の繊維などから作られる(metamorworks-Stock.Adobe.com)
それでも原料が豊富にある米国でも、トウモロコシを原料とするバイオエタノールの使用には歯止めがかけられている。そもそもバイオエタノールを製造する過程で発酵や蒸留のために化石燃料が使われており、CO2抑制効果は少ないことがわかってきたからだ。
そのため近年は非食用有機原料を使ったバイオエタノールを先進的バイオエタノールと位置付け、EPA(環境エネルギー庁)が導入目標を定めているものの、なかなか増えてはいかない状況だ。
欧州ではドイツ、英国、フランス、イタリアがEU圏内でのバイオエタノールやバイオディーゼル燃料の導入に熱心で、特に家庭ゴミや食品工場などから発生する産業廃棄物からバイオエタノールやバイオ燃料を作る仕組み作りも進んでいる。
穀物やサトウキビの糖蜜などから作られるバイオエタノールは第一世代と呼ばれ、食料と競合してしまうことが問題だったが、こうして産業廃棄物やセルロース(植物の繊維)から作られる第二世代のバイオエタノールは、食料と競合せず、環境保全にも繋がるのだ。
第二世代のバイオエタノールは植物を発酵させる必要があるため、あまり効率が良くないという問題点はある。
けれども例えば東京農業大学の研究室では、成長の速い植物であるエリアンサスを福島県の避難指定区域の休耕田で栽培する実験を行なった実績もある。しかし、日本でバイオ燃料を生産するのであれば、第二世代ではなく第三世代の方が有力だ。
第三世代とは微細藻類を利用したバイオ燃料のことだ。これは沼や池などで見られる藻のことで、この藻の仲間には細胞内に油を溜め込む性質をもつ種がいることが分かっている。
そんな微細藻類はわかっているだけで2000種類はいると言われ、一説には10万種類を超えるとも言われている。そんななかから、油を作る能力の高い種を見つけ出し、効率的に培養してバイオ燃料を製造しようというのが、第三世代なのである。
これはエタノールではなく、燃料油を作り出すもので、第二世代までのバイオエタノールとはいささか内容が異なる。エタノールでもガソリンエンジンを仕様変更すれば燃料として使用できるが、熱量が低いため効率が落ちる。
ところが微細藻類が作り出す油は基本的に石油由来と同じもので、熱量が高く、燃料としても優れている。そして燃焼時に排出されるCO2は培養時に藻が吸収したものなので、カーボンニュートラルを実現できるのだ。
民間企業でもデンソーが以前から微細藻類の培養を研究しているし、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトとしてIHIが研究していたこともある。
いくつもの研究機関が様々な種の微細藻類の中から、油を作り出すには最適な種と見込んで、研究しており、それぞれに特徴があり、どれが成功するかまだ分からない状況だ。
マツダは、広島大学や東京工業大学の研究室と共同でゲノム編集まで駆使して、微細藻類の培養によるバイオ燃料の実用化に向けて研究を続けている。これらは内燃機関、つまりエンジンの未来を賭けた壮大なプロジェクトなのである。
■産学官入り交じって研究開発が繰り広げられている
マツダは広島大学や東京工業大学の研究室と共同で、微細藻類の培養によるバイオ燃料の実用化に向けて研究を続けている
世界ではじめてミドリムシ(学名ユーグレナ)の屋外培養に成功したユーグレナが、バイオ燃料でジェット旅客機を飛ばす、という構想を掲げて川崎にプラントを建設しており、これからバイオディーゼルの生産を本格化する計画だ。
同社はユーグレナ(和名ミドリムシ)の大量培養に成功して、すでに化粧品や健康食品の分野では成功を収めている。
さらに微細藻類の可能性を追求してモビリティの世界へも進出しているが、コンビニのファミリーマートから出る廃食用油を再生してバイオディーゼル燃料を作るなど、微細藻類による完全なバイオ燃料の実現にはまだ時間がかかりそうな気配だ。
微細藻類には淡水系と海洋性のものがあり、海洋性の方がコンタミ(異物混入)に強く、油を溜める性質も強い、という情報もある。海洋性の微細藻類ならば、日本の領海内に生け洲のようなプールを造って、そこで培養することもできる。
日本企業や研究機関が南米やオーストラリアでバイオ燃料やグリーン水素を製造して日本に持ってこようという計画もあるが、やはり日本国内でエネルギーを作ってこそ意味がある。風力発電は洋上でも思ったような発電成果を得られていないようであるし、太陽光発電も国土が限られた日本では限界がある。
やはり海洋性の微細藻類によるバイオ燃料の開発と、潮流発電、地熱発電による再生可能エネルギーの確保こそ、日本がこれから目指す道なんじゃないかと筆者は思っている。
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