弱点ともいえた内装の質感が圧倒的に高まった!
三菱自動車が世界に誇るPHEVシステム搭載車「アウトランダーPHEV」をフルモデルチェンジさせ、秋以降に登場させることがわかっている。アウトランダーPHEVは2012年に現行モデルが登場し、すでに8年以上の歳月が流れている。この間に、世界累計販売台数は30万台以上に及ぶという。とくに欧州での評価は高く、近年はPHEV搭載車が矢継ぎ早に登場しており、アウトランダーPHEVはパイオニアとして君臨していた。
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これまでに何度かシステムの向上や意匠変更などのモデルチェンジを受けてきたが、今回はフルモデルチェンジということで車体デザインやパッケージング、装備、プラットフォームにパワートレインなどすべてが進化させられている。
試乗場所は「袖ヶ浦フォレストレースウェイ」だ。発表発売前のプロトタイプ車であることから公道走行は不可能なためクローズドコースでの会場が選ばれたといえるが、エクリプスクロスPHEVの試乗会も富士スピードウェイのショートトラックだったことを思い出し、三菱開発陣は「サーキットでの限界領域」の仕上りにも相当な自信があるのだなと感じさせられた。
眼前の新型車を見ると、ひとまわり以上大きくなった印象を受ける。三菱車のデザイントレンドであるダイナミックフォースデザインをフロントマスクに継承し、高いボンネット位置、余裕の感じられるロードクリアランスなどから迫力さえ感じさせられるのだ。
実際、車体寸法のディメンションを見ると、全長は4710mm、全幅は1860mmとなり、それぞれ拡大している。さらにトレッドは前1595mm、後ろ1600mmと拡幅され、しっかりと地に足を着けた安定感のあるフォルムとなっている。
運転席に乗り込むと、水平基調ながら、ソフトパッドにステッチが縫い込まれたレザー調ダッシュボードなど、質感が高く、欧州のプレミアムモデル並みの風格さえ備えさせられている。
前席シートは電動アジャスト機能を備え、メーターは12.3インチの液晶パネルで表示項目を任意に設定可能なモダンさを与えられた。センターディスプレイモニターも9インチと大型で、どちらも視認性や操作性まで丁寧に仕上げられているのがわかる。
スタート/ストップボタンを押し、システムを起動するとメーター内のイルミネーションがグラフィカルに展開し、走行準備が整ったことを表示する。センターコンソールの左よりにレイアウトされたシフトレバーでDレンジにセットし、アクセルを踏み込めばスルスルとEV走行で走り始めるのだ。今回のモデルからヒートポンプ式電動エアコンが装備され、冬期でもエンジンを始動することなくEVモードで走行を始めることが可能となった。
アウトランダーPHEVは2.4リッターのMIVECガソリンエンジンを搭載するハイブリッド車なわけだが、走行にほとんどのシーンで車両を動かしているのは電気モーターだ。そのため発進から加速、減速などあらゆる走行シーンにおいてEV車と同様な走行フィールが得られるのである。EVモードスイッチがコンソールに備わっているのだが、基本がEV走行なので使用機会がほぼないとも言える。
新型も従来どおり前後それぞれに駆動用モーターを配し、独立制御で4輪を駆動するフルタイム4WDとなっているが、その駆動用モーターが大幅に強化された。フロントモーターは60kwから85kwに。リヤモーターは70kwから100kwへと大幅に出力アップし、メインバッテリーは13.8kwhから20kwhへと容量アップしている。これでEV航続距離は約60kmから80km以上へと増え、日常的な使用ではほぼEV車として使えるほどの性能となった。
このサイズのヘビー級SUVが見せた圧巻のコーナリング
コースインして加速させると、EVらしいトルクフルな加速を見せる。近年、電気モーターの瞬間的に発揮される高トルクを活かして、暴力的と思えるほどの加速立ち上げを見せるEV車が多いが、新型の加速フィールはトルクフルでありながらもスムースで静か。ジェントルささえ感じさせるような穏やかな加速感だ。それは音の静かさによる効果も大きい。新型が遮音ガラスを採用したり、防振や遮音性能を高めて静かで快適な室内を実現している。フルスロットルでエンジンを始動させても、以前のようにエンジンノイズが大きく入ってくることもない。100km/hを超える速度域でも静かで快適性が高い。
サスペンションの設定を含め、車両姿勢が常にフラットで安定していることも、快適さを高度に達成することに貢献している。
前後にスタビライザーを備えロールを抑制。そのスタビライザーは中空タイプで軽量化にも貢献しているのだ。新型は車体が大きくなり、駆動モーターが強化されたことなどで重量が増加し、車両重量は2トンを超える。しかし、ボンネットフードをアルミ化し、フロントフェンダーは軽量の樹脂製とするなど軽量化と重心低下を図ってもいるのだ。もともとフロア下のバッテリーレイアウトやアクスル上の駆動モーター配置などで重心は見た目ほど高くなく、走行安定性は高いレベルの素性がある。
コーナーで限界特性を試してみると、自慢のS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)システムが威力を発揮し、大型SUVとは思えぬシャープなターンイン特性を見せた。デュアルピニオンの電動パワーステアリングが路面キックバックを抑制し、20インチに255幅サイズとなった大型ホイール/タイヤを見事に制御している。またコーナー内輪にブレーキをかけヨーレートを立ち上げるブレーキAYCが前輪だけでなく後輪内輪にも装備された。ロックtoロックが3.3回転から2・6回転へとクイックになったステアリングギアレシオと相成って、大型SUV+4WDのパッケージングであるながらスポーツカー並みに旋回ヨーを立ち上げられる。
タイヤが限界を超えたり、ブレーキングでABSが作動したり、またロールオーバー(横転)の危険性をセンサーが感知するとASC(アクティブスタビリティコントロール)が制御介入し、強いブレーキをかけて速度を低下させて安定を確保する。これでサーキットのような場所でも安心して走破することができるわけだ。
今回路面状況がハーフウエットで滑りやすく、また装着タイヤのブリヂストン。エコピアの限界特性がピーキーで、車両姿勢を意のままにコントロールするには制御ロジックを理解するなど一定のスキルが求められた。
ドライビングモードはデフォルトのNORMALに加えパワートレイン系を制御するECO、POWER。S-AWC制御をメインに行うTARMAC、GRAVEL、SNOW、MUDなど場面に適したモードを選択することで通常走行では特別な運転スキルを必要としない。POWERモード選択時のS-AWCはNORMAL値となっている。
今回は舗装路のサーキットコース試乗だったが、新型が登場した際には雪道や砂利道など悪路性能も試してみたい。じつは「フラットダートがとてもコントローラブルで楽しいんですよ」というテストドライバーの囁きが真実を物語っているのを知っている。
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