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スバル BRZの進化をサーキット試乗で体感。安心して愉しめる新時代のFRスポーツだ

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スバル BRZの進化をサーキット試乗で体感。安心して愉しめる新時代のFRスポーツだ

初代誕生から9年を経てのフルモデルチェンジとなるスバルのFRスポーツカー、新型BRZ(ZD8型)にサーキットで試乗する機会を得た。その進化はまさに驚くべきものだった。(Motor Magazine 2021年9月号より)

排気量を400ccアップして全域でトルクが向上した
トヨタとの共同開発で生まれ、スバルにとっては初のチャレンジであるFRライトウエイトスポーツBRZの誕生から約9年。いよいよその第2章が始まる。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

これまで毎年のようにアップデートされ、時間の経過とともに洗練されていった。とりわけ2016年7月の大幅改良で、かなり走りが進化したことを思い出す。

新型はさらに大幅に進化していた。アルミルーフの採用をはじめ、その他の積み重ねが効いて、これまでも低かった重心高は、さらに4.3mmも低くなったというから驚く。さらに、前席のカップルディスタンスを近づけるなどヨー慣性モーメントの低減も図っている。

リフレッシュされた外観は、見た目のアクセントになっているヘキサゴングリルの脇に配された空力アイテムには、鮫の肌を模したという独自の空力テクスチャーを採用するなど、新しい試みも見られる。新たに設けられたフロントアウトレットも、レースで得たノウハウを活かしたものだ。

インテリアはスポーティさに上質さが加わった。シートに座ってみただけでもその進化幅の大きさがうかがえ、走り出してより一層、その成果を実感する。

初代のFA20型も自然吸気ボクサーエンジンとしていい仕上がりだったが、モアパワーを期待する声も少なくなかった。そこで新たに開発されたのがFA24型だ。型式からすると既存ユニットの改良版のような気もするが、ほぼ新設計されており、同型式のエンジンの集大成とスバルでは位置づけている。

むろんパワーアップには過給機の追加という手法もあり、実際それも検討されたようだが、この排気レイアウトにターボチャージャーを追加するのはスペース的にも厳しい上、何よりキャラクター的に自然吸気で高回転まで気持ち良く回して楽しむのが似合うクルマであることを重視したという。

FA24ではFA20の86mm×86mmから94mm×86mmにストロークを変えずボアを拡大し、全域でトルクの向上を図った。これだと通常は最大回転数が落ちてしまい出力を求めにくくなるのだが、各部の改良により最高到達回転数の7500rpmは変えずに、出力も28ps向上している。

肝心のトルクも、FA20のピーク値に約2000rpmで到達し、そのまま7000rpmまでほぼフラットにトルクを維持する。その恩恵は、低回転域で扱いやすく、こうしたサーキットを全開で走るとよくわかる。コーナー立ち上がりで路面を蹴る感覚が初代とはだいぶ違って、ストレートエンドでの車速がおおむね10km/hほど速い。

この差は小さくない。エンジン自体も部品の軽量化等が効いて音や振動も低減しているのも進化点のひとつだ。

アクセルレスポンスはあえてゲインを控えめにして、リニアな味付けとされている。加速側だけでなく減速側の味付けも絶妙で、ピッチング挙動で雑味が出ないように、あまりストンと落とさず、スーッと荷重がフロントに移動するようにセッティングされているので、コーナリング中にアクセルをオンオフしても挙動が乱れにくい。成熟した味付けだ。

MTは当然楽しいが、今回はATも進化して愉しめる
MTのシフトフィールも細かな改良により大幅に改善している。また、トルク増に合わせてギア強度とクラッチ容量をアップするとともに、初代は軽すぎたペダル操作力も20Nmほど重くされたことで、ABC(アクセル/ブレーキ/クラッチ)ペダルの踏力のバランスがちょうど良くなった。

一方でATもまた大幅に進化していて、巧みな「なまし制御」により変速時のショックがまったく気にならないほど抑えられている。それでいてダイレクト感もあり、ドリフトだってできてしまう。サーキットを全開で走って楽しめるATである。

スポーツモードの設定も秀逸。半ばAR(拡張現実)的な制御も入っており、ターンインでイメージどおりにシフトダウンするとともに、コーナー立ち上がりでも適宜ギアを維持して引っぱってくれて、本当にこうだといいなと思ったとおりにギアをチェンジしてくれる。これなら多くのドライバーにとっては、マニュアル操作するよりもDレンジのままクルマに任せた方が速いのではないかと思ったほどだ。

コーナリングの印象も新旧では別物だ。試乗したのは18インチのミシュランPS4を履く最上位グレードだが、17インチのミシュランHPと比べると、グリップ感が段違いで、コーナリングスピードもそれなりに違う。

実はシャシについても大きな変更があり、正直「そこまでやるか」と思わずにいられないほどこだわって作り込まれている。姉妹車のGR86に対してバネレートの前後バランスを均等に近くしているのも特徴だが、よりフロントを軽くして前後重量配分を最適化するため、フロントハウジングをアルミ化し、軽量高剛性な中空スタビライザーを採用したことも特筆できる。

さらには、従来型とGR86のいずれに対しても、より大きく差別化されているのがリアだ。上屋とスタビライザーの効きが一体になっていた方が良いというSGPの思想により、サブフレームを設けボディ直付けとした。直付けすることでスタビライザーの効率が良くなるので、線径を下げることもできた。

加えて、コントローラブルな操作性を狙って、ハウジング下のトレーリングアームブッシュの硬度を引き上げた。こうすることでバンプトーインがほぼゼロにできるという。

走りは感性に訴えかける「質」の高さを感じさせる
実際のコーナリングでは、限界は高いものの一線を超えるとピーキーだった初代の前期型を思うと、新型は隔世の感を覚えるほど印象が変わっている。限界を超えても緩やかに流れ出し、そこからの流れ具合もとてもコントロールしやすい。むろんこれにはリニアなトルク特性でプラス400ccの余裕のある新しいエンジンも寄与しているに違いない。

スバルでは、あらゆる運転操作はゆっくりの方が良いと考えており、一般道を普通に走るにもサーキットでドリフトするにも、先読みができて自分の操作がどうクルマに反映されるのかを感じ取りながら走れるようにしている。それがスバルの謳う「安心・安全」にもつながる。

新型BRZはまさしくそうで、あらゆる面での数値的な実力を高めただけでなく、感性に訴える「質」の高さを感じさせた。

こうしてサーキットを全開で走らせても、手頃な価格で適度なサイズとパワーのFRスポーツとしての高い完成度とともに、そこにはスバルの根底にあるグランドツーリング思想が垣間見えた。(文:岡本幸一郎/写真:永元秀和)

■スバル BRZ S 主要諸元
●全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1270kg《1290kg》
●エンジン:水平対向4気筒DOHC
●総排気量:2387cc
●最高出力:173kW(235ps)/7000rpm
●最大トルク:250Nm/3700rpm
●トランスミッション:6速MT《6速AT》
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●WLTCモード燃費:11.9km/L《11.7km/L》
●タイヤサイズ:215/40R18
●車両価格(税込):326万7000円《343万2000円》
※《》内は6速AT仕様

[ アルバム : スバルBRZ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

1件
  • シビックが、売れない決定。テンゴのターボで、300万はない。タイプR待ちの人多いんじゃないかな、それからでもこちらを選んでいいのでは?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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