クルマはあらゆる点で進化を続けています。クルマの安全意識の高まりから、視界確保という重要な役割を担っているヘッドランプの進化は目覚ましいものがあります。
最近、道行くクルマのヘッドライト(ヘッドランプ)がやたら眩しくなったなと感じている人は多いのではないでしょうか。
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もちろんハイビームに設定しっぱなしのマナー違反なクルマのケースもありますが、物理的にライトの性能がすごく向上しているという、シンプルな事情もあったりします。進化が思わぬ弊害の要因になっていたりもします。
進化し続けるヘッドランプにあって、早くもLEDヘッドランプの次の一手が登場しています。その名は『レーザーヘッドランプ』。
ヘッドランプの進化と最先端のレーザーヘッドランプとはどんなものかを岡本幸一郎氏が解説していきます。
文:岡本幸一郎/写真:LEXUS、BMW、ベストカー編集部
ヘッドランプの進化スピードに愕然
自動車のヘッドランプは、より明るく照射することはもとより、充分な光量を確保しつつ消費電力を抑えることや、デザインの自由度を高めることを念頭に、ハロゲン、HID、LEDと進化してきた。
最近ではLEDの性能向上がめざましく、1素子あたりのルーメン数やワットあたりの効率が短期間で格段に向上した。
日本車では、2007年にレクサスLS600hに採用されて以降、徐々に採用する車種が増えており、LEDヘッドランプは近年の自動車におけるひとつの大きなトレンドとなっている。
さらには次なるステップとして、ついに光源にレーザーを用いたものが、ドイツ製の高価なスポーツカーへの採用など、すでに実用化されている。
最大の特徴として、普通の光は四方八方に広がる性質を持っているのに対し、レーザーの光は指向性が高く、広がることなくほぼまっすぐに遠くまで進むことが挙げられる。
ゆえに、レーザーヘッドランプはLEDに比べて、より遠方まで照射可能である点で大きな優位性がある。
BMWの場合、LEDのハイビームでは300mのところ、レーザーヘッドランプであれば倍の600m先まで照らすことができるとしている。
さらには、コヒーレンス(可干渉性)もレーザーの光の大きな特徴だ。
自然放出光である一般の光は光波の位相やエネルギーがランダムであり干渉することはない。
対するレーザーの光は誘導放出光であり、光波の位相やエネルギーが揃っていて干渉する。
すなわち光の波の山と山、谷と谷が時間的にきっちりそろっていて、重ね合わせるとお互いが強め合うという特徴を持っている。
加えて、普通の光は一般的にいくつかの色が混ざっているのに対し、レーザーは単色性と呼ぶ、ひとつの色でできているのも重要なポイントだ。
これらの性質により、レーザーは「究極の点光源」と称されている。
応用範囲は広いが、解決すべき課題も少なくない
最近ではアダプティブヘッドランプなどと呼ばれる可変配光機能を備えたものも増えてきているが、光源がレーザーになれば、よりきめ細かく配光を制御できることが期待される。
それだけでなく、集積回路等を用いることで、例えば路面に自車の進行方向を示す図柄を投映したり、他の車両や歩行者など周囲に意思表示をしたりと、従来の照明装置としてのヘッドライトの枠を超えた機能を実現することもできるようになる。
レーザーの採用によりヘッドランプは、これまでの概念を超えたものへと進化する可能性を秘めているわけだ。
さらには、デザインの自由度も大きく向上するだろうし、消費電力の低減や灯体の軽量化など多くの面で優位性があると考えられる。
半面、普及のさまたげとなる課題も少なくない。
まずはいうまでもなくコストだ。現状、高価なクルマに限られているのも、コストの問題が大きい。
また、出力の大きいレーザーを使用すると安全面での懸念も残る。
レーザーというのは、たとえ低出力でも人間の目を傷めてしまう可能性があり、失明の危険性すらある。
前出のドイツ製スポーツカーの場合も、レーザーを「無害」としながらも、現状は高速走行時に限りハイビームの補助光として用いているのは、安全面での問題が無視できないからだ。
あるいは技術面でも少なからず課題がある。
例えば放熱の問題だ。これはLEDでもしばしば指摘されることだが、光源自体はバルブに比べて圧倒的に小さくなったものの、ヒートシンクは大型化していて、ユニット全体ではむしろ重くなったといわれている。
これがより熱に敏感なレーザーとなると、さらに緻密な熱対策が求められることになる。
ひいては自動車という諸条件の厳しいものに搭載するにあたり、耐用年数分を担保できる耐久性はもとより、搭載する場所にも制約があるなかで、配線等の関連部品もそれなりに性能の高いものが必要となる。
レーザーヘッドランプの開発においては現状ドイツのメーカーがだいぶ先行しているが、今後、日本のメーカーや関連省庁がどうするのか、その動向が気になるところだ。
例えば日本の道交法では現状、ハイビームの照射距離は100mと定められているので、そのあたりも今後どうなるのかも今後の日本車におけるレーザーヘッドランプの開発に大きく影響するのはいうまでもない。
流れるウインカーはなぜ流行っているのか?
最後に最近増えてきた、いわゆる流れるウインカー(正式名称:シーケンシャルウインカー)についても触れておこう。
2014年に方向指示器に関する基準が改定されたことを受けて徐々に採用例が増えているところだが、たとえ流れなくても、印象的な光り方をするものが多く見受けられるようになった。
これについても、光らせ方まで含めてデザインの一部になっていると考えてよい。
ヘッドランプもそうだが、光による表現の重要性をいちはやく認識したドイツのメーカーが、LED化を積極的に進めた。
そこに部品を主に供給していたのが、実は日本のライトメーカーだったというのも皮肉な話だが、やがて日本のメーカーも追随して今のようになってきた。
確かにヘッドライトやウインカーなどの光り方によってクルマ自体もずっと新しく見えるようになることを思うと、機能はもちろん、やはり見せ方も大事ということだ。
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