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ターボ・テクニクス・フォード・フィエスタ ST S285へ試乗 懐かしのドッカンターボ

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ターボ・テクニクス・フォード・フィエスタ ST S285へ試乗 懐かしのドッカンターボ

フィエスタ STのターボを増強

FFレイアウトで受け止められる最高出力が250ps程度だと考えられていたのは、それほど昔のことではない。しかし、昨年試乗したスペインのクプラ・レオン 300は300ps。素晴らしい走りに、進化のスピードを実感させられた。

【画像】ターボ・テクニクスとマウンチューンのフォード・フィエスタ 競合ホットハッチも 全162枚

日本を見れば、白眉のホンダ・シビック・タイプRは更に上の320psを誇る。ルノー・メガーヌ R.S.やヒュンダイi30 Nも、それに迫る数字が与えられている。

もちろんこれらのモデルは、メーカーが充分な予算を投じて、巨大なパワーを受け止められるように開発が施されている。非力なFFモデルを大幅にパワーアップしたクルマとは、話が違う。

それでは、本来200psのフォード・フィエスタ STを300馬力近くまでチューニングしたら、どんなクルマに仕上がるのだろうか。ターボチャージャーを増強して。ターボ・テクニクス社は、そんな疑問に答えを示してくれた。

このターボ・テクニクス社は、ジェフ・カーショー氏が立ち上げた英国のチューニング・メーカー。1970年代にターボで有名なギャレット社で勤務していた彼は、サーブ99用ターボエンジンの開発に尽力。その後独立し、1981年に同社を立ち上げている。

得意とするのは、使い込んだターボのリビルトやバランシング・マシンの開発にある。それと同時に、日産フィガロからフォルクスワーゲン・ゴルフRまで、様々なモデルにターボキットを提供してきた。ゴルフRなら、550馬力以上も可能だという。

ドッカンターボ的でエキサイティング

今回ご紹介するフィエスタ ST S285には、ハイブリッド・ターボと呼ばれる技術が導入されている。といっても、駆動用のバッテリーが必要なわけではない。

標準のターボと関連機器を取り出し、シャフトとコンプレッサー・ホイール、ベアリングをアップグレード。ハウジングに手を加え、効率に振った特性からパワー優先のターボに仕立てるという内容だ。

同社によれば、フォード社製エンジンの内部構造は、特に手を加えることなくパワーアップを受け入れてくれるらしい。それでも、一部の部品の寿命は短くなると、カーショーは認める。

加えて、S285チューニング・キットに含まれるECUのリマッピングやインタークーラーとインダクション・システム、高効率なエグゾーストシステムなどは必須だとも話す。ターボ・チューニングの効果も得やすい。

経験豊富な技術者による仕事だけあって、チューニングに抜かりはない。標準の1.5L 3気筒ターボよりラグが大きく、実際のパワーを引き出すには2500rpmは回す必要はあるが、いわゆるドッカンターボ的でエキサイティング。サウンドも気持良い。

吹け上がりも鋭く、7000rpm目掛けたクライマックスに気持ちが満たされる。特に神経質なところはなく、低回転域でも扱いやすさは残されている。回転域の途中でパワーが落ち込む、谷間もないようだ。

自然で懐の深いシャシーバランスが機能

迫力の排気音は上品とはいえないかもしれないが、スコーピオン社製のシステムのおかげ。日常的な回転域では、少々不満げにゴロゴロと唸る。ターボブーストが高まる頃には痛快に吠え、3気筒らしい粒の粗いビートも覆い隠してくれる。

彼によれば、スコーピオン社のエグゾーストである必要もないという。別のメーカーのものも指定はできる。

エンジンは暴力的なほどパワーアップしているが、それを受け止めるシャシーには限界がある。試乗させてもらったのが冬の寒い時期で、路面は軽く湿っていたこともあり、明らかにオーバーパワーだった。

コーナリング途中でターボブーストの山が来ると、ミシュラン・パイロット・スーパースポーツ・タイヤは突然トラクションを失う。狙っていたラインから外れてしまう。

アクセルペダルを少し緩めれば、フィエスタ本来の自然で懐の深いシャシーバランスが機能。アンダーステアで外へ膨らんだラインを、オーバーステア側へ引き戻してくれる。アスファルトが乾燥していくほど、ハンドリングも改善していく。

ハイペースで目的地まで走りたい程度なら、トラクション・コントロールがフィエスタ ST S285をなだめてくれる。それでも、コーナーではトルクステアが盛大。春が待ち遠しく感じられるだろう。

フォーカス STを追い回せるフィエスタ ST

ターボ・テクニクス社のS285チューニング・キットは、英国では専門ショップなどを通じて購入可能。取り付け費用は別として、3026ポンド(約47万円)で必要なパーツ一式を入手できる。

ターボ単体なら、標準のものとの交換で1140ポンド(約18万円)。同社は試していないが、クロスオーバーのフォード・プーマ STにも搭載可能だろうと話していた。

マウンチューン社が手掛けるM260チューニング・キットの価格は、2340ポンド(約36万円)。それより30馬力ほど大きく、キットに付随するパーツも考えれば、悪くない金額だといえる。

このチューニング・キットに価値を見出すかどうかは、フォード・フィエスタ STへ何を求めるかで変わってくる。普段使いもできる、天候を問わず楽しめるホットハッチがお望みなら、ターボ・テクニクスのS285は手に余るかもしれない。

しかし、フォーカス STを追い回せるフィエスタ STに仕立てたいというドライバーもいるはず。あるいは、サーキット・メインのフィエスタ STを望む人にとっても、S285は訴求力のある選択肢になると思う。

念のため、自動車メーカーが289psを前提に設計したモデルのように、角は丸められていない。そこが面白い部分でもあるのだが。

ターボ・テクニクス・フォード・フィエスタ ST S285(英国仕様)のスペック

英国価格:3026ポンド(約47万円/S285チューニング・キットのみ)
全長:4040mm
全幅:1735mm
全高:1476mm
最高速度:231km/h(参考/標準フィエスタ ST)
0-100km/h加速:6.5秒(参考/標準フィエスタ ST)
燃費:14.3km/L(参考/標準フィエスタ ST)
CO2排出量:158g/km(参考/標準フィエスタ ST)
車両重量:1262kg
パワートレイン:直列3気筒1497ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:289ps/5400rpm
最大トルク:42.0kg-m/3750rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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