昭和のサーキットを華やかに駆け抜けた名レーサー
都平健二(とひらけんじ)氏が、先月(2024年4月25日)お亡くなりになりました。日産の契約ドライバーとして活躍した武勇はサーキットに轟いています。1965年にブルーバードSSSでデビューしてから日産一筋のレーシングドライバー人生を過ごしました。1969年には日産の伝説的名機R382で日本グランプリに故・高橋国光とのコンビで出走しています。1970年代は通称「ハコスカ」スカイラインGT-Rをドライブして神話となった50連勝にも貢献しています。
日産の主力マシンが第2世代のR32型スカイラインGT-Rになってもワークスドライバーとして活躍。その頃から僕(筆者:木下隆之)とコンビを組む機会が増え、数々の優勝を飾っています。R32型スカイラインGT-Rのデビュー優勝の記録も、都平健二氏のドライブによるものなのです。
伝統のスパ・フランコルシャン24時間レース(ベルギー)では、僕とのコンビで遠征しています。優勝も飾っています。国内外でのサーキットレースで数々の勝利を重ねてきた記録と記憶に残る名レーサーなのです。
興味深いのは、都平健二氏はモトクロスライダーだったことです。名門「城北ライダース」に所属していました。
1960年代は、まだサーキットレースはメジャーではありませんでした。ですが、時代は高度成長期の真っ只中で、自動車産業に勢いがあり、その波に押されるように4輪レースも盛んになっていきます。
ところが、自動車レース黎明期であったために。プロのサーキットレーサーがいない。そこで日産が目をつけたのが、モトクロスで活躍しているライダーだったわけです。
実際に日産には、都平健二氏の他にも「城北ライダース」から4輪に転身したドライバーが数多く存在します。高橋国光、長谷見昌弘、星野一義……。日産が注目したモトクロスライダーたちが、その後の日産を支えたのです。
バイクとクルマでは、どこか操縦スタイルに違いがありそうですが、マシンを限界まで操るというバランス感覚には共通項があります。速いライダーがクルマで遅いわけがない。それを証明してくれたような気がするのです。
とくに当時のレーシングマシンは、驚くほどのビッグパワーを秘めており、それでいてシャシー性能はプアでした。タイヤのグリップ性能も現代とは雲泥の差があります。
ですからマシンは常にスライドしていました。カウンターステアでマシンコントロールするのが日常です。まさにモトクロスのライディングに似ています。
モトクロスで活躍した都平健二氏が、4輪レースに転身しても適合したのも納得できます。
そんな伝説の名レーサー、都平健二氏の冥福をお祈りします。
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