年収276万円でも買えたフェラーリ!! 平成中期は謎に大衆化していた!? 当時のフェラーリの魅力って？

　平成中期から後期であれば、普通のサラリーマンでも買えてしまったフェラーリ。令和に入って数年の今では高嶺の花と化してしまった。それでもフェラーリに乗ってもらいたいワケがあった！　オススメしたいフェラーリとは？

※本稿は2023年7月のものです
文／清水草一、写真／FERRARI、ベストカー編集部
初出：『ベストカー』2023年8月26日号

■「フェラーリの大衆化」は終わった！　がしかし……

「皆さんお元気ですか」的アングルで表情をキメつつフェラーリを駆る清水草一氏

　2000年から2015年前後にかけての中古フェラーリ安値安定期、日本では、ごく平均的な年収のサラリーマンが次々にフェラーリを買うという、世界でも例を見ない「フェラーリの大衆化」が進んだ。

　その背景には第一に1970年代後半に巻き起こったスーパーカーブームの影響がある。スーパーカーブーマーが大人になった時、階級がなく治安のいい日本社会の特性や、低金利や円高がフェラーリ購入の後押しとなった。

　日本では露天の月極駐車場にフェラーリを保管しておいても（カバー2枚重ね）盗まれたり、イタズラされたりすることはまずない。拙著『そのフェラーリください!!』の影響も、少なからずあっただろう。

　茨城県在住の大野さんは、年収276万円ながら、10年前、総額700万円の底値でF355を購入。今年、10年120回ローンを完済した。F355の相場は、この10年間で3倍近くになったのだから、信じられない大勝利だ。

　千葉県在住の直人さんは、昨年、総額1380万円で360モデナを購入した。年収は400万円だが、直人さんは長年初代NSXを所有しており、加えてS2000も持っていた。それらを下取りに出すことで、念願のフェラーリオーナーになった。

　「ウチでは、直人さんが最後の大衆フェラーリオーナーです。ということは自動的に、人類最後の大衆フェラーリオーナーだと思います」（コーナーストーンズ・榎本代表）

■大衆化が終わってもフェラーリの素晴らしさは不変

若かりし頃の清水氏と愛車。昔からヒゲとフェラーリがトレードマーク

　日本におけるフェラーリの大衆化は、本来貴族階級が乗るフェラーリという超高級スポーツカーを、一般大衆がローンで購入するという未曽有の現象だったが、近年の中古フェラーリの高騰と、スーパーカーブーマーの高齢化によって、ついに終止符が打たれた。

　スーパーカーブーマーも、もはや50代半ば。そろそろ老後の備えに入る時期だ。その年になってローンを組み、「夢だったフェラーリに乗るぞ！」と元気を出すのは、並大抵のことではない。

　40代以下は、スーパーカーブームはもちろん、好景気を一度も経験していない「足るを知る」世代。無理してフェラーリを買う動機がない。

　しかしそれでも、フェラーリの素晴らしさは不変だ。その美しいスタイリングを見、その芸術的なエンジンを吹かせば、感動に打ち震えない者はまずいないのだ！

■それでも叫ぶ!!「328GTSを買え」と!!

私（清水草一）は328を通算4台買っている。なぜそんなに買ってしまうのか？　328は私にとって初恋のフェラーリであり、結局これが一番最高だからなのだ！　一生乗り続けます！

　多くの人にとって、フェラーリは手が届かない存在になってしまったが、それでも私はあえて叫ぶ。「フェラーリ328GTSを買えっ！」と。なぜなら、自分が今、乗っているからだ!!

　13台のフェラーリを乗り継いだ後、最後に辿り着いたのが328GTS。「これぞ我がフェラーリライフの終着駅」と感じている。328を買うならエンジンレスポンスのいいヨーロッパ仕様を薦める。

　もともとフェラーリは速さよりも、芸術性や官能性のクルマだ。その点から考えると、フェラーリは古いモデルほど素晴らしいが、古いモデルは億円単位になる。

　ところが328は、古典的なフレームボディや、手作りが残るボディワークに、クラシックフェラーリの香りがあるにもかかわらず、1000万円台で買える。このクラシック感は328が最後。F355のほうが人気は高いが、古いスポーツカーらしいよさなら、328が上だ。

■速さではなくエモさを味わえ！

30年間にわたり数々のフェラーリに乗り続けた清水氏。もはや「過剰な速さは快楽の邪魔になる」という領域に至っているという

　328は、決して速くはないけれど、ゼロヨン13秒9を出す実力はあり、全開で加速すれば、シャシーの古さゆえに、スピード感は296GTBをはるかに上回る。3.2L、V8の快音は、古いレーシングカーそのもの。アドレナリンが噴出する。

　かつては異次元のコーナリングや加速を求めて、458イタリアまで乗った私だが、いまはもう過剰な速さは、快楽の邪魔になるだけと感じている。すべてにおいて328が最高なのだ！

　しかも328は、驚くほど丈夫だ。部品も揃っているし、構造がシンプルなので修理もラク。長く所有するにはもってこいだ。

　もしもあなたがフェラーリに激しく憧れていて、しかもGT-RやNSXなどの絶版国産スポーツを大事に所有しているなら、それらを下取りに出し、人生の記念に328GTSを買ってみたらどうだろう。

　GTBよりGTSを薦めるのは、そのほうが安いうえにオープンも楽しめるからだ。フレームボディなのでボディ剛性は変わらない。ルーフを外す構造も単純で完全な手動。絶対に故障しない。

　328のことを考えると、今でも胸の鼓動が高まってくるぜぇぇぇぇ～っ!!

●結論!!　やっぱりフェラーリは素晴らしい。自動車の頂点に君臨する女王様だ。特に古いフェラーリは素晴らしい！

Comments

[36アルター]

360は外観の好き嫌いが分かれるでしょうね。私は反パドル派なので、今でもベストバイはF355のMTだと思います。

[コタロー]

大昔、ベストカーに308が高騰すると投稿（ハガキ）
したら、バカにしたようなコメントが付いたことがありました。
いわく、タマ数の多い308や328が高騰するはずがないとか。