カタログモデルとして登場
執筆:Wataru Shimizudani(清水谷 渉)
【画像】新モデル「A110 R」 デザイン/内装を見る【発表会場で撮影】 全63枚
10月4日、アルピーヌ日本法人が、「A110 R」の日本導入を発表した。11月下旬から受注を開始する。
アルピーヌA110は、1960年代にラリーなどで活躍した同名のスポーツカーをオマージュしたモデル。ルノーがアルピーヌ・ブランドを復活して、2017年に発表したスポーツカーだ。
日本では2018年から発売され、2022年の一部改良でシリーズ体系が変更された。
今回発表された「A110 R」は、軽量なアルピーヌA110の車体をさらに軽量化し、専用シャシーにより走りの性能を劇的に向上。ラインナップ中で最もラディカル(過激)なモデルだ。
とはいえ、クローズドコースでその刺激的な走りが味わえる一方、一般道でもドライビング プレジャーを得られるよう設計されている。
日本でお披露目されたA110 Rのボディカラーは、アルピーヌF1チームの今シーズン用マシン、A522と同じレーシング マットブルーにペイントされていた。
A110、A110 GT、A110 SというA110シリーズに新たに加えられたA110 Rは、ほかのモデルと同様にカタログモデルとして販売される。なお、日本仕様のA110 Rの車両価格は、後日発表される予定だ。
では、パフォーマンスを追求したラディカルな1台、アルピーヌA110 Rの概要を紹介していこう。
車重1082kg カーボンを大胆に
数値はすべて欧州仕様
A110 Rは、カーボンボンネット、カーボンエンジンカバー、フルカーボンホイール、専用カーボンシートなど、軽さと強度に優れたカーボン(CFRP)を用いてさらなる軽量化を図った。
A110シリーズの高性能バージョン、「A110 S(1120kg)」よりも軽量な、1082kgという車両重量に仕上がっている。
パワーウェイトレシオを3.6kg/psにまで抑えたことにより、0-1000m加速はわずか21.9秒という、カテゴリー内でトップのパフォーマンスを誇る。
また、空気抵抗を減らしつつ強力なダウンフォースを生み出すようにエアロダイナミクスを強化。F1マシンの開発に使用される風洞実験技術や設備により、新たに設計されたスワンネックマウントのリアスポイラー、フラットアンダーフロア、ディフューザー、そしてフルカーボンホイールが、コーナーや高速走行時の安定性を高めている。
A110 Sのエアロキットよりもさらにダウンフォースが強化され、トップスピードの向上や、高速コーナーでより優れた安定性を実現。空気抵抗を5%削減し、トップスピードはA110シリーズで最高の285km/hに到達した。フロントのリップスポイラーはフロントのダウンフォースを14kg増加している。
フロントまわりでは、カーボン製のボンネットには2つのエアインテークが装備されており、より強力なエアロダイナミクスと、よりラディカルなデザインを両立。
リアまわりでひときわ目を引くのは、すべてがカーボン製となったリアウインドウだ。エンジンルームを覆う形状で、その中心部には3つ目のストップライトを設けた。また、エンジンに空気を送り込む2つのエアインテークバルブが配置され、アルピーヌブランドのアイコンである「スノーフレーク」が描かれている。
内装 本格派6点式シートベルト
A110 Rのインテリアは、すべてマイクロファイバー生地で覆われている。
モータースポーツへのオマージュとして、レースカーらしく内部のドアハンドルは赤いストラップを採用し、ステアリングホイールもマイクロファイバーで覆われ、グレーのステッチが施されている。
シートには、サベルト社製のシングルシェル・シートを採用。これもまた、モータースポーツの世界を強く感じさせる。シェルはカーボンファイバー製で、マイクロファイバーの生地に覆われ、ステアリングホイールと同様にグレーのステッチが施された。
運転席、助手席ともに6点式の競技用ハーネスを装備。本格的なスポーツカー体験を演出しながらも優れた安全性・快適性を提供する。
なお、シートには「シートベルト着用警告サイン」も設置されており、運転席は上下左右にポジション調整が可能だ。ただし、助手席は固定されている。
また、ヘッドレストに刺繍された「A」の文字は、アルピーヌのユニークなブランド・アイデンティティを象徴している。
面白いのは、車内でも後述のエンジン音を強烈に感じられるよう設計されたこと。エンジンサウンドを直接楽しめるように、ガラスのパーティションをより軽量なアルミのパーティションへと変更した。
「A110 R」専用シャシーとは
コクピットの後ろに横置きミドシップ搭載されるパワーユニットは、ほかのA110シリーズと同様、1.8Lの直4 DOHCターボエンジン。だが、最高出力は300ps/6300rpm、最大トルクは34.7kg-m/2400rpmと、シリーズ最強のA110 SやA110 GTと同じパワースペックを発生。
組み合わされるトランスミッションも7速DCTと同じだが、ローンチコントロールを使用すれば0-100km/h加速はわずか3.9秒(A110 SとA110 GTは4.2秒)という俊足を誇る。
シャシーもA110 R専用で、最低地上高はA110 Sより10mm低められ(さらに10mm低く設定することも可能)、車高調整機能、減衰力調整機能付きダンパーを搭載。
アンチロールバーの剛性はA110Sよりもフロントで10%、リアで25%強化され、サスペンションスプリングの剛性も同じく10%以上強化されている。
ブレーキはブレンボ製の高性能システムで、前後とも複合素材の320mm径ディスクを採用。また、クローズドコースで高いパフォーマンスを発揮するため、アッパーアーム両側に取り付けられたスクープと、車体下部のフェアリングに取り付けられたダクトから成るブレーキ冷却システムも搭載。
ホイールは、Duqueine社と共同開発した100%カーボン製のオリジナル。タイヤは、フロントが215/40R18、リアが245/40 R18サイズのミシュラン・パイロット・スポーツカップ2を装着する。
装備について
アルピーヌのエンジニアや熱力学専門家は、A110 Rのエグゾーストパイプの改良に取り組んだ。
A110の象徴的なデュアルエグゾーストパイプは3Dプリンターで製作されており、「ダブルウォール」と呼ばれる「二重構造」。これは近くにあるパーツを排気ガスから守るための配慮だ。
その構造はいたってシンプルで、内側の層は排気ガスで熱くなるが、外側の層は低い温度を保つことができる。周囲への熱の対流を防ぎながら、内側の温度と外側の温度のバランスをキープするのだ。
そのテールエンドから発せられるエグゾーストノートは、ポスト・インジェクションと二層デュアル・エグゾーストパイプ装備の排気システムの働きにより、一段と力強いサウンドに。パイプ内部の形状の変更や、排気バルブを配したことにより、調律されたエンジンサウンドを奏でる。
また、インテークには、インテークレゾネーターを設置する加工も施されている。
またA110 Rは、A110シリーズの他モデルと同様に、「ノーマル」「スポーツ」「トラック」の3つのドライビングモードが選択できる。モードに応じて、アクセルやエンジンの反応、パワーステアリングやギアシフト、ESCの設定が変更される。
アルピーヌ・ブランドのモータースポーツへの情熱とコミットメントを具現化し、デザインの段階からトップレベルのエキスパートたちの知識やアイデアが注ぎ込まれたA110 Rは、クローズドコースでの圧倒的なパフォーマンスに疑いの余地はない。
フランスのディエップ工場で製造されるA110 Rは、モータースポーツに輝かしい足跡を残すアルピーヌ・ブランドの歴史において、新しい1ページの始まりとなるモデルなのだ。
価格は未発表
前述のように、A110 Rは限定車ではなく、A110シリーズのカタログモデルとして販売され、11月下旬から受注が開始される予定だが、現段階では車両価格はまだ発表されていない。
それでも、A110 Rは「シリーズ最高峰のモデル」と謳われていることから、その車両価格は今までのものよりも高くなることは間違いないだろう。
現在、シリーズ中で最も高いA110 Sが897万円(税込)だから、果たして、いくらのプライスタグが付けられるのだろうか?
A110 R スペック(欧州仕様値)
最高速度:285km/h
0-100km/h加速:3.9秒
エンジン形式:1.8L 4気筒 直噴ターボエンジン
最高出力:300ps
最大トルク:34.7kg-m/2400-6000rpm
車両重量:1082kg
パワーウェイトレシオ:3.6kg/ps
最低地上高:A110 S比10mm減(さらに10mm低下も可能)
ブレーキディスク:320mm複合素材(前・後)
ホイール:18インチ 100%カーボンファイバー
タイヤ:ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2・セミスリック
タイヤサイズ: 前215/40 R18、後245/40 R18
シャシー:
専用設定アンチロールスプリング&バー
専用アクスルジオメトリー
車高調整機能・減衰力調整機能付ダンパー
コイルスプリング10%高剛性化
アンチカントバー
スポーツ排気システム
ブレンボ高性能ブレーキシステム
シート:
シングルシェルカーボンファイバーSabeltトラックシート
(運転席は上下左右調整可、マイクロファイバー生地にグレーのステッチ)
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