8月2日に発売された新型ランクル300は、納車が4年以上に延び、転売や海外への輸出目的で購入するのを防ぐために、「車両登録後1年以内に転売や輸出を行わない」という誓約書を提示し、購入者にサインをさせているそうだ。これほど厳しくしたのは今までなかったことではないか。
日本では200台、300台といった限定車や特別仕様車、そして生産終了が決まった新車に注文が殺到し、即完売となるケースが多い。その後、中古車市場に出回ると、新車価格の数倍の価格で取引きされていることも珍しくない。
そうした限定車を購入する人のなかには、転売目的で購入する“転売ヤー”が暗躍している。純粋にその新車が欲しいと思っている人たちにとっては、迷惑でやっかいな存在であることは間違いない。
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そこで、そうした転売ヤーに負けないために、いち早く新車を手に入れるためにはどうすればいいのかなど、諸々の情報を解説する。
文/谷山 雪
写真/ベストカーweb編集部、トヨタ、ホンダ、スバル
【画像ギャラリー】経済発展の敵「転売ヤー」が付け狙う名車たちをチェック!
■「転売ヤー」が暗躍して限定車や少数生産機種が欲しい人に行き渡らなくなっている
8月2日に発売された新型ランドクルーザーは早くも注文が殺到し、納期は4年以上ともいわれている
自動車に限らず、ゲーム機などさまざまな分野で「転売ヤー」の“活躍”が目覚ましい。本来であれば多くの人が定価で買えたはずの商品を素早く買い占め、高値で転売して利益を得る行為が批判の対象となっているわけだが、このたび発売された新型ランドクルーザー300では、ついに販売会社が「転売ヤー対策」を行うに至った。
ランドクルーザー300を販売するディーラーでは、注文者に「輸出および転売目的での購入ではない」などの旨の誓約書へのサインを求めているのだ。それだけ、新型ランドクルーザーは転売ヤーにとって「おいしい商品」であり、メーカーにとっては「頭の痛い問題」ということなのだろう。
ランクル300におけるメーカーおよび販売店と転売ヤーの駆け引きが今後どうなるかは未知数だ。しかし我々フツーのクルマ好きにとっても、転売ヤーというのはやっかいな存在である。
なぜならば、奴らのせいで(もちろん、それだけが理由でないことは重々承知だが)欲しいと思った限定車が、まったく買えなかったりもするからだ。
シビックタイプRリミテッドエディション。価格は550万円。発売後の業者オークションに出品され、約1600万円で落札されたらしい。ちなみに標準仕様のシビックタイプRが475万2000円
例えば2020年11月に発売されたシビックタイプRリミテッドエディション。マイナーチェンジ後のシビックタイプRにBBS製鍛造ホイールや20インチタイヤなどを装着しつつ、防音材などを省いて軽量化を図った国内200台限定のファイナルモデルだった。
だが200台中190台はユーザーではなくディーラーに割り当てられ、各ディーラーにて瞬殺で完売。そして抽選で「商談権」が得られるという残り10台の抽選倍率も、聞くところによれば800倍以上に達したという。
もちろん、シビックタイプRリミテッドエディションの購入申し込みを行ったのは「転売ヤーではない普通のホンダ車愛好家」が大半である。
だが普通の愛好家だけでなく、多くの転売ヤーもそこに紛れ込んでいたことは、リミテッドエディションのデリバリー開始直後に数台のそれがオートオークションに出品され、約1600万円という新車の約3倍というプライスで落札されていることからも明らかなのだ。ちなみに同車の正規価格は550万円である。
愛好家であれば「しばらく乗って、割とすぐに売却する」ということはあり得ても、「デリバリー直後に数十kmで売却する」などという行為は絶対にしないはずなのだ。
■転売ヤーに先んじる方法はあるのか?
スバル WRX STI EJ20ファイナルエディションは転売ヤーを防ぐため? 厳正なる抽選販売となった。555台生産され、抽選販売された限定車で車両本体価格は485万1000円だった。2019年10月24日に発表され、同年11月11日に優先購入権の応募が締め切られたが、その数はなんと555台の約23.4倍となる、約1万3000件。その後、厳正なる抽選の末、555台が販売
スバル WRX STI タイプRA-R 2018年7月/限定500台。車両本体価格499万8240円、2018年7月19日~2018年12月17日の期間限定で販売された。スバルおよびSTIから度重なる希少なクルマが発売され、転売ヤーの標的となった
では、今後たとえばシビックタイプRリミテッドエディションのような「魅力的だが希少な限定車」が発売される際に、我々一般的な自動車愛好家が転売ヤーに先んじて、それを確実に確保する手立てはあるのだろうか?
……結論から申し上げると「なかなか難しい」ということになる。
前述したシビックタイプRリミテッドエディションの場合、全200台のうち190台が各地の販社に割り当てられたわけだが、そのディーラー割り当て分をゲットするには、
1:ディーラー内で申し込みのうえ、抽選に勝利する
2:抽選は行わず「顧客を選んで恣意的に差配する」というディーラーの場合は、そのディーラーにとっての「上客」になる
という2つの方法が考えられるわけだが、これがまた実質的にはかなり難しいのだ。
1の抽選方式の場合は、そもそも「倍率」が死ぬほど高く、当たる可能性は宝くじ並み……とまではいかずとも、かなり低い。また抽選それ自体が公正に行われているという保証もない(抽選という名の忖度が行われている可能性も大というか、たぶん行われているのだろう)。
もしもあなたがその販売店にとっての超上客であるならば、つまり2の条件に当てはまるならば、正式な申し込み期日の前に、かなり優位な順番で仮申し込みをさせてもらえたり、「抽選という名の忖度」の恩恵を受けられる可能性はある。
だが問題は「これから上客になるには時間もお金もかなりかかる」ということと、「仮に上客になれたとしても、そのディーラーにとっての上客は他にもたくさんいる」ということだ。すなわち、すでにかなり太いパイプをディーラーと通じさせている人以外にとっては、上記「2」も現実的ではない……ということである。
ならば転売ヤーはどうやって希少限定車を手に入れているかといえば、主には「動員方式」を用いている。
希少限定車の商談権が抽選となる場合、1人の人間が何口も応募することはできない。その条件は転売ヤーにとっても同じである。
しかし新車の転売ヤーというのは中古車販売店などの「企業」である場合が多いため、社長命令などで数人あるいは数十人の従業員を抽選に参加させることで、1人の個人が抽選に臨むよりは数倍から数十倍高い「当選確率」を確保しているのだ。
ちなみにそういった「総動員態勢」で抽選に臨み、仮に2台分が当選したならば、転売ヤーはそのままその2台を購入するだろう。
だが、もしも超極端な話として20台分の枠が当選してしまったら、転売ヤーの資金力にもよるが、せっかく獲得した枠の大半をキャンセルすることになる。
これが、希少限定車が秒で完売したはずなのに、なぜか「2次抽選」や「3次抽選」が行われることもあるメカニズムだ(もちろん、普通の当選者がさまざまな事情によりキャンセルすることもあるわけだが)。
……本来であれば「こうすれば転売ヤーに先んじて人気限定車をゲットできますよ!」という方法をお伝えしたいところだが、現実は厳しく、そんな方法は(ほぼ)ない。まぁそうであるからこそ、転売ヤーという仕事はけっこう儲かるのだが……。
とはいえ、確実ではないし見込みも薄いが、一応、確率がゼロではない手法としては「そのディーラーでまずは1台か2台の新車を買い、ディーラーにとっての『一応のお得意様』になっておくことだろう。
そうすれば、正規の先行予約スタート前に担当セールスがさまざまな情報を教えてくれ、関係性と運次第では「いち早く申し込める」という可能性はある。まぁ1台か2台買った程度で、どのぐらいの順位に置いてくれるかはわからないが……。
ただしこの手法は、「シビックタイプRリミテッドエディション(200台限定)」やスバルWRX STIの「S208 NBR CHALLENGE PACKAGE(350台限定)」などの超希少限定車ではない「普通のニューモデル」にいち早く乗りたい場合には、もちろん普通に有効である。
筆者の場合は近所の某ディーラーで同じ車種を都合2台買ったせいか、まだ正式には発表されていない仕様の新車に買い替えないか? みたいな話が担当セールスから来ている。
もしも「うむ、買いますよ!」と返事をすれば、そこそこ早いタイミングで車両が納車されることになるだろう。
■新車から3倍~5倍? 中古車市場で高騰している人気車たち
希少限定車を手に入れるための、残る手段は――転売ヤーに負けたようで気分は良くないのだが――「中古車販売店にて、プレミアム価格がついたそれを買う」ということだ。
前述してきたシビックタイプRリミテッドエディションやWRX STI S208 NBR CHALLENGE PACKAGEなどの人気希少限定車は、新車ではもはや買えず、スズキジムニーなどの「納期が超長いモデル」も、新車としては非常に買いづらい。
だがそういったモデルも、一部の中古車販売店に行けば普通に即納状態で売られているのだ。ただし、相応のプレミアム価格が乗っかってはいるが……。
転売ヤーたちがちょっと前に狙った希少モデルや納期の長いモデルが今、どのぐらいの価格で売られているのかを見てみよう。
●ホンダシビックタイプR(新車価格475万円)
→流通台数:22台 中古車価格:580万~1200万円
シビックタイプR後期型。2020年10月のマイナーチェンジでフロントグリルの開口面積を従来のモデルから大きくすることによる冷却性能の向上と、フロントバンパーエアスポイラーの形状変更などで従来モデル以上のダウンフォースレベルを実現。またブレーキフィールやサスペンションなどもアップデート
●ホンダシビックタイプRリミテッドエディション(新車価格550万円)
→流通台数:2台 中古車価格:応談のため不明だが推定1500万円以上
国内限定200台のリミテッドエディションでは、防音材撤去や構造合理化により、マイナス13キロ、鍛造ホイールでマイナス10kg、トータルで23kgの軽量化を実現。タイヤもミシュランパイロットスポーツCup2を採用
●ホンダS660モデューロX 6MT(新車価格304万2600円)、バージョンZ 6MT(315万円)
→流通台数:18台 中古車価格:350万~540万円
ファイナルバージョンの特別仕様車モデューロXバージョンZは即完売。特別色としてソニックグレーパールを設定し、ブラッククローム基調のエンブレム、ブラック塗装の専用アクティブスポイラー、ステルスブラック塗装のアルミホイール、専用のカーボン調インテリアパネルなどを装備
●スバルWRX STI S208 NBR CHALLENGE PACKAGE Carbon Rear Wing(新車価格710万6400円)
→流通台数:5台 中古車価格:790万~950万円
2017年10月に限定450台で販売されたS208。商談エントリー期間:2017年10月26日~11月12日、価格はS208標準仕様が626万4000円(限定100台)、S208NBR CHALLENGE PACKAGE Carbon Trunk Lipが638万円、S208NBR CHALLENGE PACKAGE Carbon Rear Wingが710万6400円。NBR CHALLENGE PACKAGEは合わせて限定350台だった
●スズキジムニーXC(新車価格177万6500~187万5500円)
→走行50km以下車の流通台数:279台 走行50km以下車の中古車価格:174万~250万円(※カスタム済み物件の場合は~370万円)
相変わらず納期は1年以上と人気は衰えることをしらないジムニー
……どんなクルマであっても、普通に欲しい人が、普通に定価で買える時代になってほしいものである。
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みんなのコメント
例えば555台も、次の555単位出せば良いと思う。
欲しい人に行き渡らないように作ってるのはメーカーです。普通車だってほとんど受注生産やん。
限定車はボロ儲け