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売れると思っていたのに「想定外に売れなかったクルマ」「期待を裏切ったクルマ」

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売れると思っていたのに「想定外に売れなかったクルマ」「期待を裏切ったクルマ」

 2020年2月に登場した現行型4代目フィットが「登場時の月間販売目標台数の1万台に対し、今年に入ってからその半分程度しか売れていない」という記事をよく目にする。

 自販連(日本自動車販売協会連合会)の通称名別ランキングを見ると、2020年こそ年間4位だったものの、2021年1~6月は12位、2万9686台で対前年比は59.3%と失速している。

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 片や同じ時期に発売されたヤリスの2021年1~6月の新車販売台数は11万9112台、対前年比237.5%で、堂々の1位。ただヤリスの台数にはSUVのヤリスクロスも含まれている。ちなみに2021年1~6月のヤリスの販売台数は5万8990台、ヤリスクロスは5万5490台(トヨタ調べ)。

 つまり、5万8990台のヤリスの約5割にあたる2万9686台しか売れていないということになる。

 初代フィットは後席の座面を跳ね上げると背の高い荷物が積めるセンタータンクレイアウトというパッケージングは他のコンパクトカーを圧倒し、2002年には年間販売台数1位の座を奪った。それ以降、アクアやノートe-POWERの台頭により、かろうじてベスト3圏内に入っていたが、まさかここまで落ちるとは……。

 新型コロナ禍や部品供給の滞りといった事情もあるにせよ、ホンダにとってはまさに、“想定外”の事態だろう。

 そこで本企画では、「想定外に売れなかったクルマ」、「期待を裏切ったクルマ」を振り返ってみたい。

文/永田恵一
写真/トヨタ、日産、スバル、ダイハツ、スズキ

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■トヨタMR-S:予想外に売れず消滅/ラゲッジが狭すぎるのがいけなかった?

MR-Sは1.8Lエンジンを運転席後方に配置したミドシップスポーツ。2シーターかつラゲッジスペースは合計78Lと、実用面では難があった

 1999年に登場したMR-Sは、二世代続いたミッドシップスポーツとなるMR2の後継車である。MR-SはMR2が2代目モデルで2リッターターボエンジンを搭載したことにより、「過剰なところがあった」という反省もあり、ミッドシップレイアウトはそのままながら、エンジンは1.8リッターのスポーツエンジンではない実用性を重視した汎用性の高いNAとした。

 その代わり全長を約3885mmに縮小したオープンボディとし、車体は大パワーへの対応が不要となったこともあり、特に初期モデルの車重は1トン以下と軽量で、価格は約200万円という手軽なスポーツカーとなった。

軽量化にこだわり、車重は980kgに抑えられた。MRならではのクイックなハンドリングも特徴

 MR-Sはこのコンセプト通りの扱いやすく、燃費のよさによりガソリン代などのランニングコストも安く済む、手軽ながら楽しいスポーツカーに仕上がった。

 しかし、この頃からスポーツカーやスポーツモデルに対する需要の減少に加え、MR-Sは2人乗りという点以上に荷物を置くスペースがMR2のようなリアのトランクルームはなく、ボンネット部分とシート後方の78リッターのスペースしかなかったことがいけなかったのか、登場時の月間販売目標台数1000台に対し、約8年間のモデルサイクルにおいて日本では2万台強しか売れなかった。

 手軽で楽しいスポーツカーだったMR-Sがあまりに売れなかったのはトヨタにとっても想定外だったようで、2007年にMR-Sが絶版となってからは2012年に86が登場するまで、トヨタのラインナップにスポーツカーが空白となってしまった。

■トヨタiQ:1代で消えたシティコミューター/コンパクトカーの客層を取り込めなかった?

2008年に登場したiQ。全長は3mを切る超コンパクトサイズながら全幅を1680mm、全高は1500mmと広くとり4人が快適に乗れる室内空間を確保した

 iQは主にスマートフォーツーのようなシティコミューターとしての使われ方を想定した超小型車として2008年に登場した。シティコミューターが主な使われ方というのはスマートフォーツーと同じでも、iQがスマートと大きく違ったのは全長2985mm×全幅1680mm×全高1500mmというボディサイズながら4人乗りを可能としたことである。

 このボディサイズで4人乗りを実現するべくiQにはタイヤを前に出すためのトランスミッションの構造の変更、燃料タンクのフラット化、エアコンの小型といった新技術が盛り込まれた。

スマートフォーツーとは違い、iQは4人乗車することができる

 しかし、iQはこれだけの新技術を盛り込んだため、原価を下げられなかったのも分かるのだが、マイクロプレミアムカーという点を強調し、価格も1リッター3気筒エンジンを搭載した初期モデルで140万円からと、安くはなかった。

 さらに当時140万円出せば、4人がちゃんと乗れて維持費の安い軽乗用車やファーストカーとしても十分使えるフィットの1.3リッターといったコンパクトカーがいくらでも買えたのも事実だった。

 結果iQは登場時の2500台という月間販売目標に対し約7年半のモデルサイクルにて、2014年までの約6年間で約3万台しか売れず、2016年に絶版となった。

 iQに関しては、普遍性のあまりないiQを登場時に「日本で月に2500台売れるだろう」と想定したことに対し今になると驚くと同時に、新技術のための投資も大きかったことも考えると、iQの収支決算はよくなかったであろう点を気の毒に感じる。

■ホンダHR-V:デビュー時の勢いを取り戻せず絶版に/時代の先を行きすぎた?

HR-Vはロゴをベースとして最低地上高を高くとり、全高を低く抑えた。国内販売は低迷したものの欧州では人気を博した

 HR-Vはフィットの前身となるロゴのプラットホームなどを使った、当時ホンダが展開していたJムーバーシリーズとしてはマルチワゴンのキャパに続く第二弾として1998年に登場した。

 HR-Vは今でいうコンパクトクロスオーバーで、登場時は3ドアでスタートし、翌1999年に5ドアを追加。3ドアはスペシャリティな部分も持っており、近年のモデルで例えるなら日産ジュークのような部分も備えていた。

 HR-Vは機能的な問題はなかったのだが、クロスオーバーということで腰高に見えるスタイルが悪かったのか、コンセプトが当時の日本人には新しすぎて理解できなかったのか、月間販売目標は登場時の3500台から拡販の要素となる5ドアが加わった約1年後に3000台と減少し続け、最後の改良となった2003年のマイナーチェンジの際には300台になってしまった。

 最終的にHR-Vは2006年に絶版となるのだが、日本での7年少々の販売期間における販売台数は約7万台に留まった。ただ、HR-Vは欧州では人気だったため、HR-Vの車名は北米や欧州では今もヴェゼルの現地名として使われているのは救いである。

■ホンダアヴァンシア:ひっそりと消えた上級ワゴン/オデッセイに顧客を奪われた?

1999年に登場したアヴァンシアは3L、V6エンジンと2.3Lエンジンを用意するFFの5人乗りワゴン。短命に終わったもののホンダファンからの人気は根強い

 1999年登場のアヴァンシアは当時のアコードワゴンとオデッセイの中間的な存在となる、ミニバン寄りでラグジュアリーな部分も持つ5人乗り2列シートのステーションワゴンである。

 当時の2代目オデッセイと同じ2.3リッター直4と3リッターV6を搭載していたアヴァンシアは、乗っている人によると「ビッグセダンみたく快適ないいクルマだよ」という声を聞くなど、オーナーの満足度は高かった。価格も初期モデルで223万5000円からと、オーナーの満足度も加味すれば、リーズナブルだったと思う。

「トップライトウイングハッチ」と呼ばれる個性的なテールゲート形状は狭い駐車スペースでも荷物の積み下ろしがしやすいように設計された

 しかし、アヴァンシアはコンセプトの分かりにくさが決定的だったのに加え、同じような価格でオデッセイが買えたこともあり、中途半端な感は否めず、当初の月間販売目標の3000台には到底及ばないほど販売は低迷。

 テコ入れのため2001年のマイナーチェンジでは2.3リッター4気筒エンジン搭載車にほどよいスポーツ性をミックスしたヌーベルバーグを追加。ヌーベルバーグは215万円という低価格ながら、乗るとさらにいいクルマ度が増していたにも関わらず、浮上のきっかけにはならなかった。

 結局、アヴァンシアはオデッセイが3代目モデルとなった2003年に絶版となり、4年の販売期間での販売台数は約2万4000台と想定を大幅に下回った。

■スバルR2:スバル渾身の力作/軽ハイトワゴンブームに乗り遅れた?

2003年12月に発売されたスバルR2。全高はプレオより50mm低い1520mm。走りの質を高める4気筒エンジンやストラット/コイルの4輪独立懸架サスペンション、前輪ベンチレーテッドブレーキディスクを装備。軽自動車にはもったいないくらいだ

 R2は軽ハイトワゴンのプレオに置き換わる存在として、2003年に登場した現在のアルトやミライースのような軽セダンである。

 アルトやミライースのような軽セダンと書いたが、R2は全グレード4気筒エンジンの搭載や独立懸架となる四輪ストラットサスペンションの採用に加え、インテリアの質感なども上々と、スバルらしいこだわりや上質感ある軽セダンだった。

R2のインテリア。2+2の4シーターだが後席はミニマム。その設計は人々が「軽に求めるもの」とはかけ離れていった

 しかし、R2は軽自動車業界においてすでに主流がワゴンRのハイトワゴンに移行していたことに加え、スーパーハイトワゴンのタントの登場、初期モデルのスプレッドウィングスグリルのクセが強かった点が原因だったのか、販売は月間販売目標の8000台に遠く及ばず。

 2005年にはグリルをオーソドックスなものにするなど、スバルらしく毎年のように改良も行われたものの、2006年にハイトワゴンのステラが登場すると、ステラに流れるユーザーが多かったこともあり、R2の生産台数は約6年で約13万3000台に留まった。

 R2の伸び悩みはスバルの軽撤退の原因の1つだったと思うが、スバルは何でも渾身の力を込めてしまうメーカーだけに、収益の良くなかった軽乗用車からの撤退は長期的に見れば大幅な収益改善につながったのも事実で、R2の伸び悩みは怪我の功名と言えなくもないのかもしれない。

■スバルエクシーガ:価格も商品力も文句ないが…/乗用車型ミニバンの縮小が致命傷に

エクシーガはインプレッサをベースとした7人乗りのステーションワゴン。着座位置が徐々に高くなるシアターシートレイアウトのおかげで3列のどこに乗っても見晴らしが良い

 エクシーガは、スバルとしてはオペルザフィーラのOEMとなるトラヴィックの絶版以来約3年振りの3列シートミニバンとして2008年に登場した。

 SIシャーシを使い、ヒンジドアで全高を1660mmに抑えた3代目オデッセイのような乗用車型ミニバンだったエクシーガは、スバル車らしい完成度の高さに加え、3列目シートもシッカリ使える広さを備える点、スバル車の登録車ではあまりないFF車も設定し、価格を初期モデルで199万5000円からと抑えた点など、クルマ自体や商品力は文句なかった。

 しかし、ミニバン業界自体がエクシーガの登場した時代にはスライドドアを持つBOXタイプにシフトしており、エクシーガの同級生だった3代目と4代目のオデッセイですら販売が下降していたこともあり、エクシーガの販売は伸び悩んだ。

2015年4月、エクシーガの販売終了に伴って発売されたエクシーガクロスオーバー7。全幅を1800mm、最低地上高を170mmに拡大したSUVとして生まれ変わった

 それでもエクシーガもスバル車の伝統により毎年のように改良を重ね、最後はSUVブームにより2015年に最低地上高を上げるなどしたクロスオーバーとなるクロスオーバー7に移行するという延命も行った。だがエクシーガが浮上することは最後までなく、エクシーガは残念ながら2018年に絶版となった。

 エクシーガの絶版以来スバルのラインナップにミニバンはなく、エクシーガユーザーの受け皿も含め、3列シートラージSUVとなるアセントの日本導入やアウトバックに3列シートを設定するといった、何らかの3列シート車の登場が望まれる。

■ダイハツソニカ&スズキセルボ(5代目モデル):販売目標には遠く及ばず/ワゴンRが強すぎた?

ダイハツムーヴのフルモデルチェンジが重なり、設計の古さが目立ったソニカは存在感が薄くなった

兄弟車のスズキセルボ

 この2台はどちらも5ドアボディながらの軽乗用車ながら、スタイリッシュなエクステリアを持つスペシャリティ&プレミアムな軽自動車として2006年に登場した。

 どちらも機能的にはそう申し分はなく、価格が高い訳でもなかった。しかし、ソニカは登場時2000台の販売目標台数に対し約3年間の販売期間で約3万台、セルボも登場時5000台の販売目標台数に対し約4年間で約6万8000台、どちらも想定していた販売台数には遠く及ばず、短命に終わった。

 想定していた販売目標台数に及ばなかった理由としては、どちらも近い価格で必要性はともかくとして、より実用的なワゴンRやムーヴといった軽ハイトワゴンも選べ、そちらに流れるユーザーが多かった点は大きい。

 また、ソニカに関しては同じ2006年に当時としては最新のプラットホームを採用するなどしたムーヴのフルモデルチェンジにより、ムーヴが素晴らしい軽自動車に進化したため、結果的にプラットホームが1世代前のものとなったソニカは選ばれにくかったという不運も浮かぶ。

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