この記事をまとめると
■マツダファン・エンデュランス(通称マツ耐)はナンバー付きマツダ車による耐久レース
「ライセンス不要」「レーシングスーツも不要」でもガチなレースが激安で楽しめる! RX-8でマツ耐に参戦したら得るものだらけだった
■2024年のマツ耐にはドライバーを女子だけで構成したチームが続々と登場した
■マツダの女性開発エンジニアだけのチームもマツ耐に初挑戦していた
マツダ車で気軽に参加できる耐久レースに女子チームが続々参戦中
マツダ車で参加できるグラスルーツ系カテゴリーの人気が近年は右肩上がりで上昇中だ。これには主に3つの種目があり、ロードスター・パーティレースIII(PR)とマツダファン・サーキットトライアル(MFCT)、そしてマツダファン・エンデュランス(マツ耐)と正式名称はどれも少し長いので、以下は略称でお伝えしたい。なかでも今回、焦点を当ててみたのがマツ耐だ。
見ての通り「耐」の文字が入っているので、耐久レースの一種になる。参加資格はまずナンバー付きのマツダ車であることと、国内で有効な免許証をもっていること。そして製造10年以内の規格に合ったヘルメットにグローブ、燃えにくい素材の長袖&長ズボンという服装の規定もある。でも、いわゆる「A級ライセンス」とかいう競技専用の資格がなくてもOKで、少し値段の張るレーシングスーツじゃなくても許されるため、ビギナーも参加しやすいことは確かだ。
競技のルールも基本は至ってシンプル。ひとりでも参加できるが、通常は150分(2時間30分)という決勝レース中に最低3回のピットストップが義務。これによりドライバーも最大4名まで登録できて、交代で走ることのできる団体戦なのだ。途中の給油はできないので、決勝は満タンで最後まで走り切る必要がある。もちろん、時間内に走破した距離(ラップ数)の長さで順位を決めるから、より速くと同時により燃費に優しい運転も求められる、頭脳戦の要素もあるバトルなのだ。
さらにマツ耐は、なんと全国6カ所のサーキットで開催されて、年間のシリーズポイントを争っている側面もある。チャンピオンを目指して戦っているチームたちのレベルは近年非常に高くなってきているので、異種格闘技のような雰囲気もある。じつは筆者も最近、年に2~3回はこのマツ耐に参戦していて、前述の上級者チームには、コース上でビュンビュン抜かれるのだが、SUPER GTの300クラスの気分を味わうようで、これもまた一興なのだ。
さて、そろそろ本題に入ろう。モータースポーツのなかでもサーキットを走るレースは、どうしても男子が圧倒的なのが実情。ところが、2024年のマツ耐にはドライバーを女子だけで構成したチームが続々と登場して、大いに注目を浴びた。さらに取材してみると、意外な事実がいろいろと判明して興味が尽きない。どうして女子だけの参戦となったのか、そして顛末は……3チームにフォーカスした結果を報告させていただきたい。
まずは、2024年度に設定された「ウーマンズチーム・オブ・ザ・イヤー」に輝いた「muramoぴよロードスター」の皆さんだ。多くの車種が参戦するマツ耐は細かくクラスわけされるのだが、このチームは3代目ロードスターで改造範囲の広いNCチューンドと呼ばれるクラス8をチョイスした。運営しているのは愛媛県が本拠の村上モータース。スーパー耐久という全国シリーズにNDロードスターで参戦していて、2017~2018年に2年連続でチャンピオンも獲得している強豪だ。
チームは開幕戦のSUGOラウンドから、もてぎ/筑波/富士(特別戦)/岡山という合計5戦に参戦した。メンバーは固定ではなく、最終的には7名が交代で出場。そのうち3名は富士スピードウェイで開催されている「KYOJO」にも参戦中。その一方で、レースはほとんど未経験というビギナーもいたが、すべて完走を果たしてポイントを獲得。チームを全戦完走に導いたのは、スーパー耐久参戦で培われた村上博幸代表以下のコーチングの賜物であることは想像に難くない。
筆者は主に筑波ラウンドで取材させてもらったが、このときもKYOJOドライバー2名と、初出場を含む経験の浅い2名という編成。各自のスキルに応じて無理のない目標を設定して、それを実行していくことでチームが成長していく勢いを感じた。
なお、すでに村上モータースでは2025年も参戦の予定を明らかにしている。女子チームもドライバーが揃えば継続するとともに、男性ドライバーもウエルカムだそう。つまり、2台体制での参戦もスタンバイしている模様で、希望者はメールで問い合わせてほしいとのことだ。
そして、次に新たなプライベートの女子軍団として、10月の岡山ラウンドに「ADR犬好きロードスター」がデビューを果たした。こちらは熊本にあるガレージアウトデルタが運営の主体。森岡秀樹代表は自身もNDロードスターでマツ耐に参戦中だが、昨年まで使っていたNCをチューンドからノーマルに戻して、クラス7でのエントリーとなった。
ドライバーは全員が20代で、中央の木村真生選手はブレーキメーカーのディクセル勤務。両脇は近畿大学自動車部の現役部員(右が田中愛美選手、左が宮内幸亜耶選手)で、3名ともジムカーナ経験のみで、今回の参戦に至った。
チーム結成の発端は2024年の5月頃、スーパー耐久のNOPROチームのメカニックも務めている森岡代表が「女子チーム募集中」と呼びかけたところ、同チームのサポートで顔見知りだった木村選手が、それに応じてまず決定。さらにTwitterの告知で女子大生のふたりが加わったというのが経緯だそう。当然、ある程度の費用負担は前提での募集だったので、女子大生のふたりもいることで、このシーズンは岡山ラウンドの1戦のみで最初から計画を進めることになった。
ただ、森岡代表の太っ腹なところは、この女子チームの専任コーチとしてS耐NOPROチームでドライバーを務める小西 岬選手を招聘したところ。この小西コーチが初レースの女子3名をつきっきりで指導。前日に設けられた練習走行や予選を通じて着実にスキルアップさせ、本番の決勝でも見事に完走させてみせた。
木村選手は「サーキットは怖いと思っていましたが、意外と楽しく走れました」とコメント。田中選手は「言語化できないくらい楽しい経験でした」と振り返り、宮内選手は「他のチームともライバルだけど仲間のような雰囲気が印象的です」と語った。
マツダの車両開発女子チームも参戦中
そして今回、最後に紹介したいのが「人馬一体RDCロードスター」の皆さんだ。これはマツダの車両開発本部に所属する女性エンジニアだけで結成されたチーム。10月20日に開催された特別戦の富士(これのみ5名まで参戦可能)と、11月10日の岡山ラウンドの2戦にエントリー。石川美代子選手/伊東景子選手/鎌田理紗子選手/酒井千尋選手/見森雅美選手という5名で富士に臨み、見森選手を除く4名が岡山にも参戦。参戦マシンは現行NDロードスターの市販状態に近いクラス5。人気のPR(パーティレース)車両と同じ規定のため、ダブルエントリーも目立つ激戦区を選んでいる。
その経緯について昨年の12月、彼女たちの所属部署のボスである京免 章本部長にお話をうかがうことができたので、報告させていただこう。
以下は京免本部長のコメント。
しばらく前からマツ耐に、役員や自分たち部長クラスが参戦するようになりましたが、「皆さん、ご参加ありがとうございます。自分たちも一緒に楽しませてもらいます」という感謝を込めたメッセージ性が軸にあるといっていいでしょう。一方で、今年から実現した女性チームのマツ耐への挑戦は別物で、少し先を見据えた大事な意味合いをもっていると思います。
自動車メーカーにとって開発ドライバーの育成はとても大切な要素です。マツダもいまは亡き片山義美さんの時代からトップガンの育成には注力してきたと認識していて、それをインタープロトへの参戦に繋げて9年目になります。ところが、歴代のインタープロト参戦ドライバー5名を含めて、いままでのマツダのクルマづくりは、どうしても男性が主体でした。
じつは弊社の運転スキルのランキングに5段階があるのですが、最初に思いついた2023年の秋の段階で、女性では最高が「3」で、それが6名というのが実情でした。全員が車両開発に関わっているメンバーではあったので、彼女たちにモータースポーツの現場を体験してもらうことで、次の段階に繋げたいと考えたのです。呼びかけたところ、そのうちの5名が手を挙げてくれたので、昨年末から今年のマツ耐参戦に向けたプロジェクトがスタートしました。
もちろん全員が日常業務をもっているので、スケジュールの調整も大変でした。それでもインタープロト参戦のトップバッターだった佐藤と、その3期生で現在はスーパー耐久で55号車のドライバーも務めている寺川を中心にインストラクターも選抜し、最終的には(スタッフを増やして)マンツーマンの体制も構築。社内の美祢試験場やタカタという広島のミニサーキットを利用して、月に2回程度、トレーニングを重ねてきました。
ここから先は彼女たちに聞いてもらえばいいと思いますが、最初は皆さん、忙しい日常業務のなかで「自分が迷惑をかけたくない」という不安のほが先に立っていた印象です。それでも「モータースポーツは楽しむことが一番大事」という当初の目的が伝わったようで、どうやら夏あたりからですが、明らかに表情や姿勢が変わってきたのを感じましたし、それを見ている我々も手応えを得られました。来シーズンも現段階では未定ですが、この経験はマツダの将来のクルマづくりに活かせると思っていますし、できれば継続したいと個人的には思っています。
と、このように京免本部長は女性エンジニアチームの意義を語ってくれた。
参戦した女性エンジニアの皆さんからもコメントを頂戴したが、京免本部長のいうとおりで、最初は「不安が9割、やってみたい気持ちが1割」という方もいたようだ。ところが訓練を重ねるごとに「少しずつ違いがわかるようになり、過程を楽しむことができた」という前向きな姿勢に変化。戦いを終えてからは「お客さまの熱を感じられたことで、改めてよいクルマを作っていきたいと思った」とか、「女性が無意識に取る行動や特性についても、ヒントを得られた」という前向きな感想をもらうことができたのは、意義あることだったと思われる。
この女子チームの参戦をはじめとして、2024年のマツ耐シリーズは大いに盛り上がった。2025年の開催日程もすでに暫定スケジュールが発表されている。それによると、年間6戦(そのうち4戦のポイントが有効)のシリーズに変更はないが、富士スピードウェイの特別戦がシリーズに組み込まれるために、九州・大分県のオートポリスでの開催がなくなるのは残念。北は北海道の十勝スピードウェイから西は岡山国際サーキットまで、全国各地を転戦するシリーズの概要に大きな変更はない。
筆者もシリーズ全戦の現場に顔を出しつつ、事情が許せば2~3回はチャレンジしてみようと思っているので、また新たな話題が見つかればご報告させていただこうと思っている。
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