ジムニーが！ ムーヴが！ 入金したのに納車されず 奈良県のスズキ/ダイハツ正規販売店で納車詐欺？ 代理人弁護士から「受任通知」

スズキとダイハツの「優秀正規販売店」として営業

2022年1月13日にAUTOCAR JAPANがメディアとして最初に報道した長野県の新車販売店「デュナミスレーシング」の納車詐欺事件は、元社長の小谷徹被告に対して今年2月27日に詐欺罪（被害者3名）としての初公判がおこなわれた。

その後、4人目、5人目の起訴が確定しており、今後も再逮捕→起訴を繰り返していくと考えられる。

そしてこのたび、筆者が情報提供をいただいたのはまたしても「納車詐欺」的な事案である。

納車前に全額を代表本人の個人口座に入金させながらクルマを発注せず、当然納車もされない……。というあたり、デュナミスレーシングと状況が非常によく似ているが、大きな違いはこのお店がスズキとダイハツの「正規販売店」であることだ。

いわゆる「サブディーラー」的な存在であるが、さらに、スズキ優秀正規販売店/ダイハツ優秀正規販売店/JAF取扱店（優秀賞獲得）と、それぞれ「優秀」の称号も与えられている。

その店舗とは奈良県北葛城郡広陵町にある「SQUARE AUTOMOTIVE」（スクエアオートモーティブ）である。中古車情報誌のクチコミ評価は異常なほど高く、しかもスズキやダイハツの「優秀正規販売店」とあれば、信用してしまうのも無理はない。

グーグルマップのストリートビューでお店の様子を見ると展示スペースには展示車両や試乗車両が置かれ、入口近辺にはディーラーでよく見かける横断幕や宣伝ポスターなどが見える。

駐車場には正規販売店らしく、「SUZUKI」や「DAIHATSU」などの他、JAFやKUMHOタイヤ、TOYOTIRES、ダンロップなどののぼりが何本も立っている。

その店から購入し、入金を済ませ納車を心待ちにしていた人々のところに、弁護士からの「受任通知」が届いたのは3月末のことだった。

2021年秋にジムニーをスクエアオートモーティブに注文し入金した被害者から筆者に届いた「受任通知」には驚く内容が記されてあった。

「納車できない、返金もできない」　そんなことが許される？

受任通知の日付は令和5年3月29日である。

「当職らは、後記債務者の受任を受け、同人の破産申立の任に当たることになりましたことを通知致します。債権者の皆様には、大変ご迷惑をかけますが，債務者の窮状をご理解していただいたうえ、次のことをお願いします」。このような文章から始まる受任通知をまとめると以下となる。

・債務者は20名以上の債権者に対し，少なくとも合計6000万円の負債をおっており、支払不能状態となっている。

・加えて30名以上の自動車購入者に対して合計6000万円の自動車の売買代金相当額の所有権移転債務が未履行のまま残っているが、債務者には納車できるだけの資力がない。

・債務者，債務者の家族への連絡や返済の要求など一切することなく、問い合わせは当職（弁護士）らに対してのみおこなうこと。

・債務者との間で締結した売買契約は履行不能の状態です。契約を解除したい場合は債権調査票にその旨の記載をお願い致します。※契約を解除しても返金されるわけではない

このほか、担当弁護士の氏名や連絡先、そしてスクエア代表者N氏の生年月日や住所などの記載もあった。

被害者の何人かが担当弁護士に問い合わせたところ、契約を解除したところでお金は返ってこないとの回答だったという。

要するに、30名以上からクルマ購入代金合計6000万円以上を受け取っているが納車できる資力もないし、返金もできない。窮状を理解して債務者やその家族への連絡や返済要求はするな。という非常に身勝手で一方的なお願いである。

正規販売店だから安心して購入し、納車を心待ちにしていた被害者は突然、届いた受任通知に強い憤りを感じている。一人当たりの平均被害額は約200万円だ。

奈良ダイハツは即座に展示車を回収　公式サイトでお知らせ

スクエアオートモーティブに新車を業販していた奈良ダイハツでは、4月6日にお知らせを公式サイトに出している。

「まったくの別法人」であるのは確かだろうが、スクエアオートモーティブに展示されていたダイハツ車両は奈良ダイハツ香芝店からの借り物であったという。

2022年10月にダイハツムーヴ・キャンバスをスクエアオートモーティブに注文した被害者が状況を説明してくれた。

「スクエアオートモーティブの担当店舗は奈良ダイハツ香芝店です。スクエアオートモーティブと連絡が取れなくなって、3月終わりにスクエアオートモーティブに行った時に展示車がまだおいてありました」

「なぜ破産するのに展示車をお金に替えないのか？　と不思議に思っていたのですが、それはダイハツ香芝店から借りていたクルマだから換金はできないと聞きました」

「香芝店がその後すぐに展示車両を回収しにいったようで、いまはクルマもノボリも全部なくなっていると思います」

「代理人弁護士から破産手続申請の連絡を受けて、展示車の回収などすぐに対応しているのに、奈良ダイハツが『うちとは無関係。スクエアオートモーティブの代理人弁護士に問い合わせしてください』と言うのは、あまりにも冷たいですよね。非常に腹立たしいです。法律的には関係ないのでしょうけれど」

一方で、奈良ダイハツも被害者では？　という情報もある。今年1月にムーヴ・キャンバスを注文した被害者曰く「ディーラー（奈良ダイハツ）もスクエアオートモーティブからリース料が支払われていないそうです。われわれと同じ今回の被害者かもしれません。2年くらい前までは正常な取引をしていたそうですが。顧問弁護士に相談していると言っていました」とのこと。

これは言い換えれば奈良ダイハツは2年くらい前からスクエアオートモーティブとの取引に問題があることを認識していたことになる。

実際に200万円前後を正規販売店に入金したものの、受任通知を受け取って驚きと怒りの中にいる被害者の皆さんはいまどんな思いでいるのか？　話を聞いてみた。

「優秀正規販売店」だから、安心して購入したのに！

今回取材に応じていただいた5名全員から注文書の写真や領収書、入金の記録などを送ってもらい、本当に注文し入金していることが確認できている。

なぜ、スクエアオートモーティブから買ったのか？　今の思いを聞いてみた。

Aさん（奈良県在住）2021年10月にスズキ・ジムニーを注文

「正規販売店だからディーラーと同じと思い契約しました。銀行からいったんお金を借りてその分を全額スクエアオートモーティブに入金しました」

「ジムニーの納車に時間がかかることは聞いていたので疑うこともなかったのですが、1年半待って結局納車もされず突然、破産手続きの案内が来ました」

「納車しない、返金もしない。スクエアオートモーティブ代表N氏の窮状を理解しろなんて。そんなこと到底認められません。詐欺にあったと思っています」

Bさん（大阪府在住）2022年10月にダイハツ・ムーヴ・キャンバスを注文

「ディーラーより少し安かったのと正規販売店だからディーラーと繋がっていると思い信用していました」

「もちろんN代表には憤りを感じていますが今は何故こう言う商売の仕方になったのか？　疑問点がいくつもあります」

「スクエアオートモーティブにクルマを卸しているディーラーは『うちは関係ない』と言っていますが、今被害にあっている人ほとんどが正規販売店だから信用して買っています」

「ディーラーの管理体制はどうなっているのかと思いました。展示車もスクエアオートモーティブに貸していたようですし販売促進物もディーラ－と変わらない物が置いてありました」

「ディーラーにも憤りを感じています。正規ディーラーがこんな対応でいいのか！」

Cさん（奈良県在住　2022年11月にダイハツ・タントを注文

「納車前の現金一括入金が不安だったので、手付＋納車後に残金入金を申し出たら断られました。なんだかんだ言われて結局一括先払いになりました」

「スクエアオートモーティブN代表からは、『ネット販売は世の中で普通のことなので絶対に大丈夫です。不安に思われるかもしれませんが僕はほとんどの客がネット販売です。皆さん普通に入金されてますよ。絶対に大丈夫なので、安心してください。』って」

「入金してからの発注を何度も確認しました。そのたびに『発注完了しています』と言われましたが、結局、奈良ダイハツには発注されていませんでした」

Dさん（三重県在住　2021年11月にスズキジムニーを注文）

「早期枠（6か月前のキャンセル分）で通常（1～1.5年）よりも早く納車されるといわれこの店で買おうと思いました。注文から2年経ちますが、納車されていません」

「スズキ正規販売店という看板があり安心していました。スズキ自販奈良に発注があったのかどうかを聞いていますが、まだスズキ自販の担当者と連絡が取れていません」

過去には「合同商談会」も

ちなみに、スズキ自販奈良とスクエアオートモーティブはこれまで「合同商談会」などを開催している。

また、スズキの「副代理店」として登録されるにはスズキ直営のスズキ自販が、副代理店を名乗るにふさわしいかどうか判断した上で、さらに年間24台の販売実績が必要とされる。

スクエアオートモーティブを副代理店に認定したスズキ自販奈良には何の責任もないのだろうか？　引き続き取材を進める。

Comments

今や歩くのすら困難な無一文のじーさんなんだろ？
取りようがない
臓器でも売らせるしかないよ

自分も車を現金一括で買う時に先に全額先に入金し、もしこのまま車両を受け取れなかったら…と不安になったことがあります。
買う側からすれば、車両を受け取る時に支払いが出来れば安心なんですけどドタキャンする客も可能性として有れば店側はリスクですよね…。
結局信頼できるディーラー、販売店にお願いするしか無さそうですね。