2018年6月7日、マツダ「ロードスター」「ロードスターRF」の商品改良が行なわれ、エンジンの改良やキャンバストップ、インテリアをキャメルカラーにした『Camel Top』特別仕様車を設定し、本日から予約受注を開始、7月26日から発売すると発表した。その改良されたエンジンに試乗してきたので、その様子もお伝えしよう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>
商品改良の概要は、ロードスターRFに搭載するSKYACTIV-G 2.0のトルク特性を見直し、また、回転部品の軽量化、エンジンサウンドの変更を行なった。特別仕様車はSKYACTIV-G 1.5を搭載するロードスターのキャンバストップのカラーにキャメルカラーを設定し、同時にレザーシートにタンカラーを採用した。また、全車にマツダの先進安全技術『i-ACTIVSENSE』を標準装備化し、サポカーS・ワイドに該当する仕様とした。
マツダ「ロードスター」が安全運転サポート車に、特別仕様車「キャラメルトップ」も設定
さらに、ボディカラーのコーディネーションを増やし、ボディカラーとのコーディネイトバリエーションが増えたことも魅力の増す要因となっている。
■大幅エンジン改良
さて、気になるエンジン改良だが、詳しく見てみよう。
狙いは、人馬一体感を高めることと、高い加速度を連続させることだ。つまり、より滑らかなトルクカーブが描けるような出力特性を目指した改良ということになる。その結果出力も向上している。従来の最大トルク200Nmから205Nmとなり、馬力は158psから184psへと大幅にアップしている。またレッドゾーンも6800rpmから7500rpmへと、より高回転まで回せるエンジンになった。
既存のエンジンの高出力化の手段として、バルブスプリングの強化が一般的だろう。バルブタイミングを高速化することで、高回転側のパワーがアップする。だが中速トルクが落ち、燃費も悪くなるという結果になる。そのため、SKYACTIV-Gでは燃費の改善も含め、また、出力制御に関するすべての部品の再設計を行ない、ノック限界の向上も狙ったエンジンとしている。
具体的に行なった改良ポイントは、まず、高回転域での空気量の確保だ。スロットルバルブの内径を大径化し、中のシャフトを小さくする。このことで通路面積を28%拡大。インテークマニホールドでは、インテークバルブを拡大し、ポート断面積を18%拡大している。そして、従来は1つのポートで1つのバルブだったが、今回2つのバルブで1つのポートというコモンポートを新たに採用し、通気抵抗の低減とシリンダーヘッドからの受熱を低減している。その結果、冷えた空気をシリンダー内に送り込めノッキング防止に貢献している。
次に、慣性重量とフリクションの低減に取り組んでいる。パーツとしては、ピストントップの形状変更とピストンスカート部を短くし、27gの軽量化をしつつ、摺動抵抗も低減している。そしてコンロッドは、ピストンが軽量化できたため、コンロッドボルト径の縮小、短縮ができ41gの軽量化除肉ができている。また、クランクシャフトは形状の最適化とカウンターウエイトの配置の最適化を行ない、高回転までスムーズに回るエンジンになっている。
そして、高回転域の排気ロスの低減では、排気ポートで高温高圧の排ガスが一気に流れるとき、排気の剥離が起こっており、ポート径に対する有効面積が小さかった。その対策として、ポートのRを大きく取って剥離を抑制している。結果として有効通路面積が拡大し、さらに排気バルブ径の拡大、ポート出口の拡大で一気に排気を流すことができたという。また、エキマニも同時に拡大し、排気カムは開弁角を広げ、リフト量をアップした。その結果30%の排気ロス低減ができているということだ。
一方、燃焼のさせ方では、全域でのトルク向上を狙い、吸気ポート形状のRを大きく取り、形状変更により指向性をつけてやることで入り口の流速を下げ、吸気抵抗を抑えながら、タンブル流の強化ができたという。発生したタンブルは高さを抑えたピストンにより、阻害されず強タンブル流を維持することができる。また、高価なインジェクターの採用により微粒化でき、気化を促進。噴霧時間も短くすることで、噴霧距離が短くなり壁面付着の無駄な燃料を低減している。そして燃圧を高くして噴射回数を増やし燃焼時間の短縮を図っている。従来の2回から3分割の噴射となった。
こうしたエンジン内部の改良に伴い、エンジンサウンドにも手を入れた改良行なっている。狙いは、リニアに澄んだ力強いサウンドだ。エンジンサウンドのノイズの除去をすることが必要で、ラトル音を排除。つまり歯打ち音を消すために、低イナーシャのデュアルマスフライホイールを採用している。フライホイールを重くすることでラトル音は消せるが、レスポンスが悪くなるため、ロードスターにはふさわしくない。そこで、デュアルマスフライホイールの採用により、回転変化を抑え、ラトル音を消している。さらにサイレンサーの構造変更も行なっており、クリアなサウンドを演出したという。
■試乗レポート
さて、こうした改良を行なったSKYACTIV-G 2.0を搭載するロードスターRFを、クローズドコースで試乗することができた。試乗コースはサーキットではないが、アップダウンもしっかりあるワインディングコースに似た環境で、RFにマッチするコンディションだ。また改良前、改良後の乗り比べもできたので、その違いは分かりやすかった。
今回の改良では、従来のロードスターにはなかったテレスコピック・ステアリングが新たに装備された。ドライビングポジションにはこだわりの強いマツダだが、やはりグローバルモデルでもあるわけで、体型にあったポジションを取るために採用。これも重量増とならない工夫があったという。
エンジンをスタートさせATから試乗。ワインディングでは2速、3速を使って走行する状況で、エンジン回転が3000rpm付近で新旧の差が歴然と出た。改良前ではトルクの落ち込みがある特性部分であり、新型はその落ち込みがなくなり、フラットなトルク特性なっている。そのためドライブフィールとしては息つきがなくなった、という印象になる。
そして登り勾配のストレートでレッドゾーンまで引っ張る。5000rpm付近から7500rpmまでのトルク感、サウンドで違いがある。走りに余裕が持てる印象となり、サウンドではザラツキが消え、棘がなくなった上質な印象を受ける。
次にマニュアル仕様で試乗してみる。3000rpm付近でのトルクの落ち込みは、MTだと意図的にその回転域にならないような走り方をしてしまうため、あまり差を感じることがなかった。また、高回転側の伸びの違いはAT同様、乗り比べているため明確な違いとして体感する。が、単体で試乗した場合、どこまで感じられるか?は疑問だが、オーナーであれば明確にその違いを体感するだろう。
ここまで説明してきたように、あれだけのエンジンへの大幅な改良を施しながら、体感するのは、こうした感性に響く違いだったというのが本音だ。だが、乗り比べて分かるものではあるが、明らかに改良型のほうが気持ちよく高回転まで回せ、ストレスなく軽快に走れるというのは間違いなく、トータルで上質になった印象があり、マツダのこだわりが十分に伝わってくる試乗だった。
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