エンジンの回転数を示す「タコメーター」は、安価な車や商用車等を除き、多くの車に採用されてきた、いわば性能を示すメーター。速度を示すスピードメーターと並んで、車になくてはならない装備のひとつであった。
しかし、ハイブリッドなど電動車の急増で、タコメーターを持たない車が圧倒的に多くなってきている。性能を示すメーターは、このまま車から消えていってしまうのだろうか?
ホンダが来年発売を明言!! 新型シビックタイプRは電動化するのか
文/渡辺陽一郎
写真/編集部、HONDA、TOYOTA、NISSAN
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ホンダは全エンジン付き車に採用! タコメーターの現状は?
タコメーターは、1分間のエンジン回転数を示すメーター。車種によりレッドゾーンまでの回転数は異なる
ハイブリッド車や電気自動車など、クルマの電動化が進むと、装着車の減る装備もある。この典型がタコメーターだ。エンジン回転数を示すメーターで、1分間の回転数を表示する。そのために単位は「rpm/レボリューションズ・パー・ミニッツ」となる。
タコメーターは、MT(マニュアルトランスミッション)車で、動力性能をフルに発揮させる走り方をする時に便利だ。タコメーターには許容回転数の上限を示すレッドゾーンも示され、シフトアップのタイミングがわかりやすい。
シフトダウンする時も、タコメーターがあれば、高回転域でギアを下げてエンジンを過剰に回すトラブルを避けられる。
ただし、クルマに慣れると、タコメーターをチェックする必要性は薄れる。エンジン音を聞いていれば、回転数も感覚的にわかるからだ。タコメーターがなくても、的確なシフトアップ/シフトダウンをおこなえる。
AT車の場合は、アクセルペダルを踏み続ければ、エンジン回転が上限に達すると自動的にシフトアップする(一部車種のマニュアルモードを除く)。
高い速度域でATレバーを低いレンジに入れても、MTと違ってエンジンを過剰に回転させる変速はおこなわない。従ってAT車にタコメーターは不要ともいえるが、装着車は多い。
逆にワゴンRの標準ボディなどは、5速MTを用意するからタコメーターを活用する余地もあるが、装着されていない。マーチは上級グレードには装着され、ベーシックなグレードは非装着だ。こういった点を踏まえると、タコメーターは、実用装備というよりも付加価値をねらった快適装備に近い性格を備える。
ホンダは、全エンジン車でタコメーターを標準装備。商用バンのN-VANもタコメーターが標準装備されている
N-VANの開発者は、タコメーターについて以下のように述べた。
「N-VANは商用車だが、CVT(無段変速AT)も含めて、タコメーターを全車に標準装着した。ホンダの場合、インパネの基本的な機能として、タコメーターの設置があるからだ」
タコメーターに替わる? HVのパワーメーターは何を示しているのか
写真は、日産キックスe-POWERのメーター。パワーメーター(ハイブリッドシステムインジケーターとも呼ぶ)が装着されており、モーターの作動状況が表示されている
タコメーターのとらえ方は、メーカーによっても異なる。そして冒頭で述べたとおり、ハイブリッド車や電気自動車が増えると、タコメーターの役割は薄れる。電気自動車はエンジンを搭載していないから、当然ながらタコメーターも装着されない。
ハイブリッドでも、日産のe-POWERやホンダのe:HEVは、駆動はモーターが担当してエンジンは主に発電機の作動に使われる。e:HEVには高速巡航時にエンジンが直接駆動する制御もあるが、基本的な役割は発電だ。
そうなると駆動を担当しないエンジンの回転数を示しても、加減速の状況を正確には反映させない(エンジン回転数と走りの間にある程度の相関関係はあるが)。タコメーターを装着してもメリットは乏しい。
そのためにハイブリッドには、パワーメーター(ハイブリッドシステムインジケーターなどの呼び方もある)が装着されている。タコメーターに似ているが、示しているのはエンジン回転数ではなく、エンジン+モーターの作動状況だ。
具体的にはアクセルペダルを踏むと、指針や光の帯が右側へ振れる。ハイブリッドシステムの負荷が小さい時はエコゾーン、さらに踏み増して駆動力が高まると、さらに右側へ振れてパワーゾーンに入る。
逆にアクセルペダルから足を離して減速状態になると、モーターが減速エネルギーを使って発電を行い、駆動用電池に充電する。この時には指針や光の帯は左側のチャージゾーンに入る。電気やガソリンをどの程度使っているのか、あるいは充電状態に入ったのか、という制御の状態が分かる。
写真は、トヨタ センチュリーのハイブリッドシステムインジゲーター。「アクセル開度とエネルギーの回生状態」を表示している
ただしタコメーターと違って、エンジン回転数のような具体的な数値は刻まれていない。右側に振れるほど高い動力性能が発揮され、左側になるほど経済性が向上するのはわかるが、漠然としている。
そこでパワーメーターの基準は何なのか。発揮されている出力なのか、それともアクセルペダルの踏み方なのか、複数のメーカーに尋ねると以下のように返答された。
「アクセル開度と、エネルギーの回生状態を示す」あるいは「走行中の出力と回生力を示す」。
返答も漠然としているが、過去を振り返ると、2005年に発売されたハリアー/クルーガーハイブリッドのパワーメーターには、0/100/200kWという出力数値が刻まれていた。
この時にはパワーメーターがkWを単位とする共通の表示方法になり、タコメーターのように位置付けられるのかと思ったが、実際には各メーカーとも独自の表示方法を採用している。
タコメーターがない電動車でも「性能を示すメーター」は生き残る
写真は、トヨタ カローラスポーツハイブリッドのタコメーター。ハイブリット車には珍しく、エンジン回転数を示すタコメーターが装備されている
実際の使い勝手を考えれば、ハイブリッドの制御状態がわかれば良い。パワーメーターの指針や光の帯が右側へあまり振られず、一定に保てるようにアクセルを操作すれば、経済的な運転ができる。
タコメーターのように、表示の具体的な基準が分からないと信頼性では疑問が残るが、実用的には問題ない。正確な燃料消費量を知りたければ、燃費計も装着されているので、パワーメーターの表示にこだわる必要もない。
またレクサス車などは、ハイブリッドでもエンジン回転数を示すタコメーターを表示できる。高速道路を走行中にアクセルペダルを戻すと、エンジンが停止してモーターによる回生が開始され、タコメーターの針はストンと落ちて「0」を示す。
昭和世代のドライバーは、この瞬間に肝を冷やす。従来のクルマでエンジンが停止すると、パワーステアリングは作動せず、ブレーキブースター(倍力装置)の負圧を使い切れば制動性能も低下するからだ。
慣れるまでは嫌な感じだったが、エンジンの停止と作動がわかることは、モーター駆動を併用しない従来のクルマとは違う楽しさではあるだろう。タコメーターが「0」の状態で走る時は、燃料を消費していないからトクした気分にもなる。
この効用を考えると、電動化が進む今後も、タコメーターに代わるパワーメーターは存続するだろう。ハイブリッドシステムや電動機能の負荷、回生による充電の状態がわかると、経済的な運転に役立って走りの楽しさにも繋がるからだ。
最近は運転支援機能も普及して、先行車との車間距離を保ちながら追従走行できる。運転支援機能の作動中と、自分でペダル操作をする時では、パワーメーターの動きがどのように変わるのか。燃費計と併用して、運転支援機能を相手に経済運転を競う楽しさも味わえる。
電動化の時代には、新しいクルマの楽しみ方が生まれるわけだが、純粋にエンジンのみを搭載したクルマで、タコメーターを見ながら操るのも楽しい。
「5500回転を超えた領域の吹き上がりはタマランなぁ!」、といった運転をいつまで味わえるのか。昭和世代のドライバーとしては、高回転域まで回せる自然吸気エンジンの6速MT車が、妙に愛らしく思えてきた。
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みんなのコメント
またアイドリングの時は一定の回転数
維持してるか見ることでエンジンの調子が
分かる オートマでもタコメーターは有った方が
良いと思う