■2024年7月3日、都内にて開催された「Volkswagen New Model Press Presentation2024」
長年、輸入車の大定番として、幅広い世代から愛されるドイツのフォルクスワーゲンが、2024年内に4車種もの新型車を発売することを明らかにしました。
【画像】「えっ…!」かっこいい! これが新VW車です。(37枚)
フォルクスワーゲンジャパンは、2024年7月3日、都内にて開催された「Volkswagen New Model Press Presentation2024」にて発表したのは、コンパクトSUV「T-Cross」とコンパクトカー「ゴルフ」シリーズのビッグマイナーチェンジに加え、ミッドサイズSUV「ティグアン」とミッドサイズモデル「パサート」のフルモデルチェンジです。
まずは簡単に、今回のモデルチェンジの特徴を紹介しましょう。
コンパクトSUV「T-Cross」は、VWの末っ子SUVとして、2019年11月末に発表されました。
発売を開始した2020年から2022年までの3年連続で、輸入車SUV登録台数1位を記録。
さらに2023年は惜しくも2位となりましたが、その順位を破ったのも、同じVWの兄貴分となるコンパクトSUV「T-Roc」でした。
また2020年から2023年までの輸入車年間登録台数モデル別の順位でも、T-Crossは、4位から6位に収まるなど優秀な成績を残しています。
今回の初のビッグマイナーチェンジでは、前後マスクやインテリアなどの内外装の改良に加え、全グレードに同一車線内全車速運転支援システム「Travel Assist」を標準化。
さらにLEDマトリックスヘッドライト“IQ.LIGHT”や前席シートヒーターをグレードにより標準化しています。
さらにプレミアムサウンドシステム「beats サウンドシステム」を新たにオプション設定することで、より移動時間を愉しめる提案も行っています。
全車が「1.0L TSI(3気筒ターボ)」の前輪駆動車であることは、従来同様です。
もう一つのビッグマイナーチェンジモデルは、「ゴルフ」シリーズです。
VWの看板商品であり、抜群の知名度を誇る現行型ゴルフ8の大幅アップデートモデルであり、通称「ゴルフ8.5」と呼ばれるものとなりました。
改良型も、5ドアハッチバックとステーションワゴン「ヴァリアント」の2本立てとなります。
ゴルフ8は、薄型ライトに象徴されるシャープな顔付きが特徴ですが、より磨きを掛けたクールな顔付きに変身。
最大の目玉となるのは、12.9インチの大型ダッチスクリーンを備えるインフォメーションシステム「MIB4」の採用で、IDA(アイダ)ボイスアシスタンスと呼ばれる音声操作機能が搭載され、操作性が向上されています。
また標準タイプのガソリンエンジン車は、全車48Vマイルドハイブリッド仕様の「1.0L eTSI(3気筒ターボ)」と「1.5L eTSI(4気筒ターボ)」の2種類から、「1.5L eTSI(4気筒ターボ)」に統一され、2種類の性能違いものが搭載されるようになりました。
アクティブなユーザーに人気のクリーンディーゼル「2.0L TDI(4気筒ターボ)」が継続されることも明かされました。
フルモデルチェンジを行った新世代モデルの導入が明かされたミッドサイズSUV「ティグアン」とフラッグシップモデル「パサート」の2台に共通するのが、基本構造であるプラットフォームの刷新です。
現行世代の「MQB」から改良型となる「MQB evo」へと進化させました。つまり、新世代VWの導入が開始されることを意味するものです。
SUV「ティグアン」は、2019年以降はVWグループ全体でも、最量販となるモデルへと成長を遂げた近代VWの大ヒット作です。
日本でも、第2世代となった現行型は、SUVブームもあり、VWの上級SUVとして、力強さと燃費の良さを両立したクリーンディーゼルターボ4WD「TDI 4MOTION」や高性能仕様の「R」も導入するなど、日本でのVWのフラッグシップSUVとしての地位を確立しています。
3代目となる新型では、よりSUVらしい力強いデザインが与えられると共に、乗り心地や走りのキャラクターを変化させられるアダクティブシャシーコントロール「DCC Pro」に代表される上級車向けの最新機能が積極的に採用されています。
またVW初の機能としては、センターコンソールに配置された「ドライビング・エクスペリエンス・コントロール」を装備し、車載機能をダイヤルとプッシュボタンを組み合わせた装置で、簡単に操作できるように。
もちろん、インフォテイメントシステムには、IDAを内蔵する最新型の「MIB4」が搭載されています。
ボディサイズは、全長4545mm×全幅1840mm×全高1650mm(標準車)と、現行型と比べて、全長こそ30mm拡大されているものの、全高は25mm低くなり、全幅は同等を維持しています。
パワートレインは、ガソリン車が、ティグアン初の48Vマイルドハイブリッド仕様の「1.5L eTSI(4気筒ターボ)」 となり、待望のクリーンディーゼルターボ「2.0L TDI(4気筒ターボ)」が復活。この「TDI」は、人気の4WD「4MOTION」の組み合わせとなります。
VWの上級車として長年活躍してきたパサートですが、従来のセダンとステーションワゴン「ヴァリアント」の2本立てから、新型ではステーションワゴンに集約されたのが最大のトピックスです。
モデル自体の更なる上級化も図られており、ボディサイズも全長4915mm×全幅1850mm×全高1500mmまで大型化。
その結果、ラゲッジスペースの最大容量も、現行型比で+140Lの1920Lまで拡大されています。
さらにアダクティブシャシーコントロール「DCC Pro」や大画面化されたインフォメーションシステム「MIB4」などの最新機能も積極的に搭載されています。
パワートレインも多彩で、48Vマイルドハイブリッド仕様の「1.5L eTSI(4気筒ターボ)」の前輪駆動車と、クリーンディーゼルターボ「2.0L TDI(4気筒ターボ)」の4WD「4MOTION」に加え、プラグインハイブリッド「eHYBRID」が用意されています。
「eHYBRID」は、1.5L eTSIにモーターを組み合わせたもので、19.7kWhのリチウムイオン電池を搭載し、120km越えのEV走行を可能としています。
■フォルクスワーゲンの日本戦略はどうなる?
フォルクスワーゲンが、年内導入を試みる4車種もの新型車を一気に発表した背景には、VWの存在と戦略の改めてアピールするのが狙いでしょう。
日本でのVWの販売は、2019年以降、前年割れを記録し、厳しい状況に置かれています。
その背景には、車両の供給を含めたコロナ過の影響もありますが、2018年の51958台から2023年の32229台と大きく落ち込んでしまいました。
さらにコロナ過以降は、話題性の高いフルモデルチェンジモデルが、2021年6月のゴルフ、同年7月のゴルフヴァリアント、2022年11月のBEVのSUV「ID.4」に限られたことで、話題性に乏しかったことが挙げられます。
主力車のひとつであるゴルフは、コロナ過による車両の供給問題もあったとし、初期売り上げが振るわなかった現実も。
またVWブランドとしても、次世代を担うBEVモデル群「ID」シリーズによる電動化戦略のアピールしたことで、保守的なユーザーも多い日本でのエンジン車の導入もしっかりと行っていくこともアピールしたかったのでしょう。
そのため、今回の発表会では、BEVに関する話題は限られ、将来的にBEVのコンパクトカー「ID.2 all」の導入を検討中であることに留められました。
現在、円安や世界的な物価高騰の影響を受け、輸入車の価格は上昇中です。特に親しみやすいブランドは、価格帯が上昇したことで、買え控えだけでなく、既存のユーザーが国産車を含めた他ブランドへの流出も起きています。
このため、VWも価格面での努力を行っており、発表会で唯一価格を公表したT-Crossも、価格上昇を現状維持から数万円程度に抑えるだけでなく、装備を強化することでコスパを高めています。
今回発表された他モデルでも、日本の現状に適した競争力のある価格を提示するために、ギリギリまで本社との交渉がおこなわれているとしています。
クラスが上昇し、法人ユーザーも強く意識したパサートは、価格上昇も止む無しといった雰囲気ですが、ゴルフとティグアンが、どれほどの価格設定を行ってくるかで、VWの今後を左右するかもしれません。
事実、ゴルフも2023年4月にお買い得仕様の「プラチナムエディション」を追加したことで、年間登録台数が1万台越え、輸入車モデル別登録台数で2位まで回復を見せています。
長年、親しまれてきたVWだけに、堅実なファンも多いだけに、良い商品だけでなく、魅力的な価格である点も重視されます。
それだけに、新型車の価格提示には、VWの未来が掛かっているといっても過言ではないでしょう。
今後の3台は、いずれも9月には予約受注を開始するとしているので、そのタイミングで価格が発表されると見られます。
既に装備や仕様は発表済であるため、T-Cross同様に、最小限の値上げと装備向上によるコスパの良さを示せるかに、注目です。
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