長きに渡って所属したARTAを離れ、2022年シーズンはK-tunesに移籍して盟友・新田守男と共にスーパーGTを戦う高木真一。その移籍の舞台裏を、ARTAの鈴木亜久里監督に聞いた。
ARTAと高木の付き合いは、実に20年以上に渡る。高木はARTAのドライバーとして、トヨタ・MR-S、ASL・ガライヤ、ホンダ・CR-Z、BMW M6 GT3、そしてホンダ・NSX GT3と、様々な車両のステアリングを握ってきた。その中で2010年までは新田とコンビを組み、以降は主にホンダ系若手ドライバーの指導役を担ってきた。
■ホンダ有望若手を預かる“先生兼お父さん”。スーパーGTの大ベテラン高木真一が言動で示すプロドライバーの心得
高木の面倒見の良さは、鈴木監督も高く評価している。高木はGT300クラスを主戦場としているが、近年は福住仁嶺や大湯都史樹など、才能あるドライバーをGT500クラスに送り出してきた。それに対して鈴木監督は以前、「高木は先生タイプ。自分は東大に入れなくとも、生徒を東大に連れていっている」と評していた。
若手の指導には定評がある一方で、高木も2020年に50代に突入。レーシングドライバーとして第一線でキャリアを積める時間は、そう長くは残されていないだろう。2020年シーズンには、スーパー耐久の岡山戦で大クラッシュを喫し、腰椎と右手首を骨折。レースを長期間欠場したこともあった。
実はこの時、鈴木は高木へ指導者側への転身のオファーをしていたという。
「一昨年に真一がスーパー耐久でクラッシュして(負傷し)、2021年は乗れるかどうか分からない、という状況になったことがありました」
鈴木監督はそう切り出した。
「結果的に真一は回復して、2021年はレースに出場しましたが、一昨年に怪我をした時に『もうレースは辞めて、若手を指導する立場になりなさい』と言ったんですよ。どちらにせよ、いつまでも乗れる訳ではないし、いつかどこかで線引きをする時が来ますからね」
「ただ、2021年は乗るということだったので、それを最後にして、2022年からはうちのチームで、若い子たちの指導に回ってくれという話をしたんです」
「そしたら真一が『最後に新田さんと組んで終わりたい』と言うから、『それならしょうがないね』と言いました」
鈴木監督の発言からも、高木のスーパーGTでのキャリアが“最終章”に突入していることを伺わせる。これまで数多くの勝利を積み重ねてきた高木・新田組。ふたり合わせて100歳を超える大ベテランコンビだが、2022年スーパーGT最注目の存在と言えるだろう。
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