三菱のミッドサイズSUVである「エクリプスクロスPHEV」を鈴木ケンイチ レポーターが1週間ほど試乗する機会を得た。街中から高速道路での長距離ドライブ、そして雪道までを走った印象をレポートする。
熟成が進むPHEV×ツインモーター4WDシステムを搭載
「エクリプスクロス PHEV」がデビューしたのは、2020年12月のこと。ラージSUVであるアウトランダー(第2世代)に搭載された三菱独自のPHEV×ツインモーター4WDシステムを、よりコンパクトなミドルクラスSUVに仕立て直して採用した。システムは、2.4Lのガソリンエンジン+前60kW(82ps)/137Nmのモーター+後70kW(95ps)/195Nmのモーター+13.8kWhのリチウムイオン電池によって構成される。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
アウトランダーのほうは2021年にフルモデルチェンジを果たし、PHEVもモーター出力やバッテリー容量などのバージョンアップが図られていることからスペックは異なる。最新のアウトランダーPHEVは、2.4Lのガソリンエンジン+前85kW(116ps)/255Nmのモーター+後100kW(136ps)/195Nmのモーター+20kWhのリチウムイオン電池を搭載。結果、EVモードでの航続距離は、エクリプスクロスの57.3kmに対して、アウトランダーは最大87kmを実現している。
とはいえそもそもこのシステム自体、2012年に量産化が始まってからも、大小さまざまな改良がコツコツ施されてきた。そのため、エクリプスクロスに搭載されるまでのおおよそ8年の間に、初期のものとは別モノと言っていいほど洗練されたフィールを持つまでに熟成が進んでいる。
あらゆるシーンで実感される、優れた静粛性と快適性
確かに、2台を厳密に乗り比べてみれば、加速の伸び感などでやや控えめな印象を感じるかもしれない。だがエクリプスクロスPHEVのダイナミック性能そのものに、不満を感じるシーンなどまずないはずだ。2トン近い車重を忘れさせるほどに、キビキビと爽快な走りを楽しむことができる。
街中ではEVモード、もしくはエンジンが発電してモーターで駆動するシリーズ方式ハイブリッドで走行する。エンジンの力を直接にタイヤへ伝えるパラレル方式ハイブリッドとなるのは、高速走行などに限られる。そのため、加速はいつも非常にスムーズだ。
加えてエンジン音と振動の抑え込みは、相当に熱心に行なわれているようだ。耳を澄まし、振動に気を配らなければ、エアコンやタイヤの騒音にかき消されてしまうほどエンジンが稼働する瞬間の影響は小さい。つまり全体を通して、とても静かで滑らか。非常に快適だ。
また、リチウムイオン電池への充電具合をドライバーが自在に選べるというのも、三菱のPHEVならではの特徴だ。シフトレバーの後ろにある「SAVE/CHRG」ボタンを押すだけで、簡単にコントロールできる。これは非常に便利な機能だ。
ちなみに三菱のPHEVは、何もしないと基本的にバッテリーの充電は減る一方。ぼんやり乗っていると、いざ必要となったときに充電が足りずにEV走行ができなくなる。そうならないために、意識的に「SAVE/CHRG」ボタンを使いこなすようにしよう。
さすがの三菱4WD。雪道でも「涼しい顔」でクリア
走っていて、非常に印象に残ったのはフラットな乗り心地だ。ロールやピッチングが少なく、フラットな姿勢をキープする。重いバッテリーを低い位置に配置していることも良い影響を及ぼしているのだろう。また、1920kgという重さを支えるため固められたサスペンション、は微低速でコツコツとした振動を伝える。しかしその振動は非常に小さく、市街地で流れに乗って走ると、すぐに気にならなくなった。
また、高速道路での直進性も上々。ステアリングの操作感は軽いがクルマはぴしっと真っ直ぐに走るため安心感が高い。この安定・安心のハンドリングも、このクルマの大きな魅力ではないだろうか。
さらに、今回の試乗ではドライ路面だけでなく雪道を走ることもできた。シフトノブの横にあるドライブモードで「SNOW」を選択して、いざ雪道に挑んだのだ。すると、スタッドレスタイヤを装着していたとはいえ、その走りは安定感にあふれ、まったく不安感を抱かせなかった。ヘビー級の車両重量だが、ステアリングを切った方向に素直に頭を向ける。これは前後モーターと4輪ブレーキなどを統合制御するS-AWCが大きく貢献しているのだろう。
「SNOW」を選択したことで、急加速や急ブレーキを抑制して、より安定感が増しているようだ。これも前後ともモーター駆動を使う三菱のPHEVシステムの強みと言えるだろう。雪道だからと、難しいことはなく、普通の舗装路を走るような感覚のまま、軽々と雪道を走破することができた。
30分の急速充電で約50kmのEV走行が可能に
1週間ほどエクリプスクロスPHEVに乗って、その電動4WDの完成度の高さや走りの良さを実感できた。思えば、外部から電力を充電できるメリットは大きい。満充電してあれば、それで最大57.3kmのEV走行が可能となる。日常的には自宅の駐車場でゆっくりと200Vの普通充電を行い、EVとして近隣を走るのが一般的なPHEVらしいスマートな使い方のイメージだろう。
一方、自宅の駐車場に充電設備がない場合でも、ディーラーや高速道路のサービスエリア、大型ショッピングセンターや観光スポットなどに設置が進む急速充電器を使えば、EV走行の距離を稼ぐことはできる(商業施設の一部には、普通充電施設が併設されている場合もある)。とくに買い物中や観光ついでの継ぎ足し充電は、時間の有効活用にもつながるだろう。30分の急速充電で、約50kmのEV走行が復活する。
さらにいざという時には、チャージモードによってエンジンによる発電で二次電池の容量を復活させればいい。効率の良い使い方という意味で、さまざまなソースをコーディネイトするメソッドをあれこれ考えるのもまた、PHEVならではの楽しさと言えるだろう。(文:鈴木ケンイチ/写真:鈴木ケンイチ、Webモーターマガジン編集部)
三菱 エクリプスクロスPHEV P 主要諸元
●全長×全幅×全高:4545×1805×1685mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1920kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター×2
●総排気量:2359cc
●最高出力:94kW(128ps)/4500rpm
●最大トルク:199Nm(20.3kgm)/4500rpm
●モーター最高出力:60kW(82ps)+70kW(95ps)
●モーター最大トルク:137Nm(14.0kgm)+195Nm(19.9kgm)
●トランスミッション:ー
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・43L
●WLTCモード燃費(ハイブリッド):16.4km/L
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):451万円
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