時代の変化に応えて進化を図ることがデリカのDNA
5代目となる現行型が登場して12年が経つにも関わらず、なおも好調なセールスを維持し続けてきたデリカD:5。デリカからデリカへと乗り替えるオーナーも多く、熱いファンが少なくないモデルである。それゆえ「デリカはこうあるべし」という確固たる価値観を持っているユーザーも少なくないだろう。
【試乗】新型デリカD:5は走り激変! フルモデルチェンジを名乗らないのが不思議なほどの進化を体感
そんなデリカD:5がビッグマイナーチェンジを実施した。そのデザインを見て、大胆な変貌ぶりに驚いただろうし、熱烈なファンのなかには、「これはデリカではない」とさえ感じた人もいるかもしれない。
そんなわれわれの疑問に対して、デザイン開発の責任者である松延浩昭さんは次のように語ってくれた。
「デリカの50年の歴史を振り返っていただくと、じつはデリカとはすごく変わり続けてきたクルマだということがわかります。はじめはワンボックスの商用車にパジェロの足まわりなどを備えたクルマ。それからパジェロのFR四駆システムにワンボックスのボディを載せ、次はFFにと、世代ごとの変化がとても大きいんです。そのたび、従来のユーザー様から『なんてデリカを作ってくれたんだ』という声が挙がることもありました」
「けれども時間とともに『なるほど、これが新しいデリカなんだな』と支持していただき、その繰り返しが歴史を作ってきたのだと思います。守りに入ることなく、しっかりと時代の変化に応えてデリカを進化させ、そのよさをご理解してもらうこと。それはいわばデリカのDNAのようなものかもしれませんね」
目指したのは、意匠のよさと高い機能性を両立させること
変わらぬために、変えていく。デザインチームが選んだ道は、デリカの精神とも言うべきものを守りながら、新しい時代にふさわしいデリカを作り上げることだった。目指したのは、オールラウンドミニバンという独自性を守りながら、その幅を広げると同時にプレステージ性を高め、より多くのユーザーから支持されるデザインだ。内外装デザインの取りまとめ役である大石聖二さんにうかがった。
「デザインコンセプトは『TOUGH TO BE GENTLE』。デリカならではのアクティブ感はしっかり残しながら、これまでにないジェントルな強さをプラスするという考えです。加えてフォーマルかつアーバンな方向性を強めた『アーバンギア』という新グレードを設定することで、デザイン面からもデリカD:5というクルマの幅をより広げていこうと考えました」
エクステリアデザインの狙いは、SUVの力強さ、プロテクト感、プレステージ性などを、機能性を両立させながら高い次元で表現すること。そのための検証が各段階で徹底的に行なわれた。
エクステリアでまず目をひくのは、縦型のLEDヘッドライトだ。縦型デザインの実現には、いくつもの高いハードルがあった。たとえば構造の問題だ。縦型デザインのライトは、外側部に壁のようなものができるため、空力にも不利になる。
こうした問題は、デザインチームだけで解決できるものではない。そのため、今回はライト専任のデザイン担当者を中心に、設計やデザインといった部署の垣根をなくして検討・検証を実施。さらには初期段階からサプライヤーとも綿密な連携を取りながら開発が進められた。
当初は設計サイドから実現を疑問視され、上層部からも「本当にやれるのか」といった声が挙がるほどのチャレンジだったが、開発チームはこれらの難問を地道な試行錯誤の繰り返しによって解決。とはいえ、これほどの高いハードルも、デザインチームにとってはライトを成立させるためのスタート地点のようなもの。こだわりはさらに細部にも貫かれることになる。ライトを担当した土屋 理さんはこう振り返る。
「縦型ヘッドライトは、三菱自動車の新しいデザイン哲学の象徴である『ダイナミックシールド』のひとつの要素として、機能を魅力に変えることを目指して取り組んだデザインです。このライトでは、ポジションなどの信号灯や、前照灯など、それぞれの機能が混ざらないようにくっきりと光ることを心がけました」
「ほかの光よりも弱いポジションライトは周囲からの視認性を向上させるため上部に位置させ、いろいろな角度からきらっと光って見えるなど、意匠的な魅力の実現にも注力しています。また、縦型デザインは低いところにも光が伸びるので、凹凸のある路面や雪道でも状況がわかりやすいといった機能的なメリットもあります。意匠がいいだけでなく、高い機能性を両立させること。それは今回のデザインで力を入れた点であり、三菱自動車のデザインアイデンティティでもあるんです」
1st スケッチ 初期段階で検討された2案。A案は斜めに切れ上がったライトとダイナミックシールドが特徴。B案は水平垂直基調を重視。両案とも安心感や乗員を守る機能に基づき、顔付きを厚くしたデザインに。
アイディアスケッチ 1stスケッチをブラッシュアップ。A案はグリルをSUV的に建築物の構造体をイメージするようデザイン。B案はダイナミックシールドを縦一杯にあしらい、縦に厚い印象を強調する。
2ndスケッチ 1stスケッチでのコンペの結果、B案を基本にA案のグリルとリヤデザインを組み合わせるというアイディアを選択。2ndスケッチからはアーバンギアのデザインも進められていく。
膨大な課題の一個一個の答えを手探りで探し続けた
デジタルデザイン担当の山本行一郎さんと、エクステリアデザイン担当の野田健一さんにもうかがった。
「新型の縦型ライトは外側へ縦に5つのLEDが入っていますが、それぞれの役割に応じて光は違う角度を狙う必要がありますし、また、それを囲むリフレクターの角度もひとつひとつ異なります。つまり、そのまま作っただけでは、全体で見たときの光り方や、消灯した際のリフレクターの輝き方がバラバラになってしまうんです」
「そのためこの縦型ライトでは、全体で統一感のある光り方を実現するため、デジタルデータでもシミュレーションを重ねながら、一般的なライトデザインではやらないような細かい修正作業を何度も何度も重ねて追い込む必要がありました」(山本さん)
「コンマミリ単位の角度や位置にもこだわらなきゃいけませんし、テールランプとのバランスが取れていないと、全体の調和も崩れます。光り方の厚みも重要でした。細く光ってしまうと、力強いデザインが台無しになってしまいます。膨大な課題のひとつひとつについて、手探りで答えを探し続けたような感じでしたね」(野田さん)
こうして作り上げられた斬新なヘッドライトデザインは、「ダイナミックシールド」自体が新たなステージに上がったようなデザインとなった。力強さと押し出し感が表現されたフロントグリルと、それに呼応するように巧みにバランスが取られたバンパー下部分の組み合わせも、塊感の強さや、乗員がしっかりと守られているような印象をより際立てていると言える。
フロントマスクでは、ボンネットにも注目したい。柔らかく上質な面に、映り込みが美しいグラデーションを描くボンネットは、グリルやライトなどの“強い”見た目との対比がもたらす絶妙な上質感によって、デリカD:5が押し出しの強さだけを追求したクルマではないことを感じさせる。クレイモデル製作を担当した中尾成良さんは次のように語る。
「燃費性能の向上が当然となっている昨今では、板金にも軽さが求められます。ですがこれだけシンプルなデザインとなると、張り剛性が足りなくなってしまいます。きついプレスラインを足したりすれば簡単に解決できますが、それではデザインのよさである上質感が実現できません。シンプルな美しさと張り剛性の両立のために、何度も何度もトライ&エラーを繰り返しました」
モデリング 立体モデルの検証で細部を熟成。SUVらしい力強さや頑強さの継承を意識しながら、モダンに洗練された方向性を目指した。アーバンギアではより都会的で力強い表現を狙っている。
ファイナルレンダリング 三菱自動車の新デザイン哲学の象徴である「ダイナミックシールド」に、機能的なライトレイアウトを融合したフロントマスク。プロテクト感と機能性の高い次元での両立を目指した。
ファイナルモデル スタンダードとアーバンギアの“飛距離”の最良のバランスを探るため、一方を修正すれば、それに合わせてもう一方も修正という、気の遠くなるような繰り返しが行なわれた。
すべての乗員が感じられる心地よさと使いやすさを
高い機能性と美しさの両立、そして上質感の追求は、インテリアでも貫かれている。デザインキーワードは、「HORIZONTAL AXIS & Gentle feel」。
水平基調のインパネは、空間に解放感をもたらすだけでなく、悪路などでも車体姿勢をつかみやすくするためのデザイン。圧倒的な存在感を放つ10.1インチの大型ナビゲーション画面を備えながら、センターコンソールに機能部品を視覚的にもわかりやすくレイアウト。強い存在感のパーツをちりばめながら、全体として上質かつシンプルな印象に仕上げている。インテリアデザイン担当の唐笠眞次さんは次のように語る。
「大きなナビ画面でありながら、頭でっかちな印象にならないよう、細かな修正を何度も重ねてバランスを取りました。レバー類なども使いやすさや握りやすさなど、触感からも上質感や力強さが伝わるようにデザインしています。また、乗員が触れる部分や、ウォークスルーなどの動線上に、上質なソフトパッドをふんだんに使用したことも新型のインテリアの特徴です」
1stスケッチ 従来モデルの機能性や道具感といった魅力に加え、高い質感や後席の快適性も強く意識してアイディア展開。新デザイン哲学のモチーフ「ホリゾンタルアクシス」も盛り込まれている。
方向性決定のためのモデル 操作系を囲むシルバーメッキの検証をはじめ、質感向上に向けたさまざまなトライや検討を実施。新型にもっともふさわしい質感や高級感がどんなものかを、徹底的に模索した。
ファイナルレンダリング 薄い形状や、ピークラインをできるだけ上げ、可能な限り前傾させることで高い解放感を狙ったインパネは、張りがある断面形状を持たせることで、乗員が守られる安心感も両立する。
カラーデザイナーの越山明日香さんにもうかがった。
「その素材の違いが見た目でも感じられる形状にも注力しました。たとえばアルミなら、アルミだからこその曲がり方があるんです。今回はオーナメントパネルにサバ杢という特徴的な立体木目を採用しているんですが、このパネルの断面なども、木という素材が感じられる丸みになるよう、何度も修正を行なっています」
視覚からも触覚からも感じられる上質感は、前席だけでなく、フロントまわりと調和させた加飾パネルや、ゆったりとした肩幅と厚みのあるヘッドレストを備えたシートなどにより、2列目でもしっかりと感じ取ることができる。また、スマホ置き場やUSBソケット、さらに充実した収納類など、使い勝手が進化したユーティリティも見逃せない。従来のデリカD:5は、どちらかと言えばドライバーにプライオリティが感じられるインテリアだったが、新型は乗車するひとりひとりが心地よさを感じられるデザインと言えるだろう。
「そうおっしゃっていただけるとうれしいですね。われわれデザインチームは、三菱自動車がこれまでに培ってきた四輪駆動の力強さと、上質で使いやすい居住空間をしっかり受け継いだデザインを実現することで、デリカの魅力をより広げていきたいと考えながら開発に取り組みました。これまでにないモダンさが加わった新型を、見るだけでなく、ぜひ一度、販売店で触れて体感していただきたいです」
そう笑顔を見せてくれた松延さん。その表情は、新型デリカD:5への自信の表れに違いない。
ファイナルモデル ドアを開けた瞬間に乗員にうれしい驚きをもたらす大画面パネルを中心に、操作系の直感的な使いやすさや見やすさを意識して構成されたインテリア。質感の向上にも注目したい。
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