■自動可変式エアロパーツが装着されたクルマを振り返る
レースの世界で空力性能向上を目的として開発され進化したエアロパーツは、1960年代の終わりには市販車にも採用されるようになりました。
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もとは機能部品として誕生しましたが、クルマの外観を彩るドレスアップアイテムとしても人気です。社外パーツから普及が始まり、1980年代には盛んに純正装着されるようになりました。
そして純正装着されるエアロパーツも年々過激になり、「GTウイング」や「カナード」など、レーシングカー並みの形状のものも登場。
さらに、速度によって自動で動く「アクティブエアロパーツ」も開発され、さらに機能性を高めています。
そこで、アクティブエアロパーツを装着したクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
●日産「R31型 スカイライン」
1980年代に国産車の性能は著しく向上し、各メーカー間でパワー競争が始まりました。そんなパワー競争が激化していた1985年に、日産7代目「スカイライン」はデビューしました。
「7th」の愛称で呼ばれた7代目スカイラインのツインカム系モデルには、メーカーオプションで「GTオートスポイラー」が設定されました。
これは世界初の突出と格納が自動でおこなわれるフロントスポイラーで、70km/hになるとスイングダウンし、50km/h以下になるとスイングアップしてバンパー内に格納されるというシステムです。
また、マニュアルでの操作も可能で、路面状況が悪い場所では70km/h以上でもスイングダウンしないようにもできました。
実際に空力的な効果も実証され、スポイラーが突出している時には車体前方をリフトする力を抑え、同時に車体の下に流れ込む空気を整流することで、空気抵抗の削減も達成しました。
その後、GTオートスポイラーは「スカイラインGT-R」を除く「R32型」の6気筒エンジン車と、「R33型」の2.5リッター車の一部グレードにもメーカーオプションで設定されました。
●三菱「GTO」
三菱は1990年に、「スタリオン」の後継車となるフラッグシップスポーツカーの「GTO」を発売しました。
アメリカ市場を見据えて開発されたGTOは、全長4555mm×全幅1840mm×全高1285mmと、堂々たる体躯で、ボリューム感あふれるボディは流麗なウェッジシェイプのスポーツカーらしいフォルムを実現。
エンジンはトップグレードに最高出力280馬力を発揮する3リッターV型6気筒DOHCツインターボを搭載し、駆動方式はフルタイム4WDを採用。トランスミッションはゲトラグ製の5速MT(後期型は6速MT)が組み合わされ、4WSや電子制御サスペンションなど、先進技術も投入されていました。
そして、ツインターボ車には「アクティブ・エアロ・システム」が装着されました。
これは約80km/h以上になるとフロントスポイラー(フロントベンチュリーカバー)がダウンし、リアスポイラーがアップするというもので、高速走行時の車体揚力を低減し、走行安定性の向上が図られました。
なお、GTO ツインターボの排気系には「ノーマルモード/サイレントモード」が選択できる「アクティブ・エキゾースト・システム」も装備されました。
●ポルシェ「911ターボS」
ポルシェも比較的早期にアクティブエアロパーツを開発しており、1989年に発売された第3世代の「964型 911カレラ4」から、速度感応型の自動リアスポイラーを装備していました。
そして、最新モデルの「911ターボS」では、3つのアクティブエアロパーツへと進化しています。
ひとつは「アクティブ エアインテークフラップ」で、フロントバンパーの左右に搭載。走行状況に応じてシャッターが開閉され、効率良く空気をラジエーターとブレーキに供給することで最適なエアロダイナミクス特性と冷却性能を確保します。
もうひとつは可変フロントスポイラーで、走行モードのセレクトによって2段階に作動し、「ノーマル」モードでは格納され、「スポーツ」モードでは1段階目までスポイラーがダウンしてダウンフォースを確保。そして「スポーツプラス」ではフルにスポイラーが下降して、よりダウンフォースを稼ぐパフォーマンス重視の位置となります。
最後はリアスポイラーで、速度と走行モードで2段階上昇しますが、さらに260km/h以上の超高速域ではダウンフォースをわずかに減らしてタイヤへの負担を低減するなど、文字どおりアクティブに制御されます。
また、ほかにも高速域からのフルブレーキングをおこなうと、前後のスポイラーはフルダウンフォースのポジションになり空気抵抗を増大させるエアブレーキの機能があり、制動距離を減らすのと同時にブレーキング時の走行安定性も向上させます。
※ ※ ※
アクティブエアロパーツは、レースの世界では禁止になっているケースが多いのですが、近年のF1では「Drag Reduction System=DRS」と呼ばれるデバイスが装着されています。
これはストレートを走行中にリアウイングの角度を変えることで空気抵抗を減らし、オーバーテイクシーンを増やす目的で開発されたものです。
また、1968年に登場した日産のレーシングカー「R381」では、2分割したリアウイングがサスペンションの動きと連動して、左右輪に掛かるダウンフォースを調整するというものでした。
しかし、可変ウイングが破損すると非常に危険ということで、すぐにレギュレーションで禁止されてしまいました。
※記事初出時より、記事本文に誤りがありましたため訂正いたしました(12月26日14時20分)
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