■レクサスの「二律創生」が生み出す新たな価値とは
レクサスは、2023年10月25日から11月5日まで開催された第1回「ジャパンモビリティショー2023」で、コンセプトモデル「LF-ZC」を世界初公開しました。
2026年には市販化を予定しているという次世代バッテリーEV(BEV:電気自動車)の狙いはどこにあるのでしょうか。
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ジャパンモビリティショー2023でレクサスは、新たに開発した低ハイト電池の搭載を想定したコンセプトモデルを出展しました。
そのうちLF-ZCは、2026年に発売を予定しているとのことです。
そこでLF-ZCチーフコンセプトデザイナーの木村大地氏に、LF-ZCへ込めた思いなどについて聞いてみました。
●このレクサスLF-ZCは生産を考えた上でのコンセプトモデルという位置づけでよろしいですか。
■LF-ZCチーフコンセプトデザイナーの木村大地さん(以下、木村):はい、そうです。2026年に世の中に送り出すことを目標にして作っています。
●ではまずデザインのコンセプトから教えてください。
■木村氏:プロボカティブ・シンプリシティです。
「プロボカティブ」というのは挑戦的。「シンプリシティ」は言葉の通りシンプルということです。
挑戦的というと非常にエキセントリックなものを想像すると思うんですが。その一方でシンプリシティという大きく2つの異なるものを両立させることを今回はやっていきたいと考えました。
レクサスはいつも「二律創生」といいまして、2つの違う価値をうまく共存させながら新しい価値を生み出すことをやっていますので、そういったところを今回も目指してデザインをしています。
●では、プロボカティブ・シンプリシティを表現している象徴的なところはどこでしょうか。
■木村氏:まずはプロポーションです。今回エンジンではなくBEVですので、かなりフードあたりを技術的に低くできるというのが1つポイントになります。
フードが低くなりますと、フードから風を迎えて、フロントウィンドウも同じような角度でスラントさせることで、綺麗に風を後ろに流すことができます。
そして後ろも絞りながら(真後ろから見るとリアに向かってすぼまっていく)スリークに風を流していく。
同時に、上から見るとキャビンも後ろに行くにしたがってとても絞れているような形(いわゆるティアドロップ型)になっています。そうすることで非常に空力が良くなるんですね。
そうすることで、真後ろから見ると、相対的にタイヤが非常に張り出して見えるんですね。
このショーカーは全幅1880mmなんですが、おそらく数値のイメージよりも圧倒的にワイドで、スタンスの良さが見えるでしょう。
機能に裏打ちされた美しいフォルムとしながら、クルマとしてのスタンスも良くするということを上手く両立させているところがプロボカティブ、挑戦的であり、シンプルに非常に美しいということに繋がり、プロボカティブ・シンプリシティが表現できているのかなと思っています。
●レクサスデザイン部の部長である須賀さんはいかがですか。
■レクサスインターナショナル レクサスデザイン部長の須賀厚一氏(以下、須賀氏):パッと見たときに、あ、格好良いとか心を揺さぶるような、あるいは速そうとかスポーティとか、そういった常識に囚われないものをBEVだからこそやろうと考えました。
やはり低いこと、クルマの格好良さってそこにあると思うんです。
しかし従来のBEVではバッテリーの影響で下駄を履かせたような印象があるんですね。
そこを本当に薄いバッテリーをエンジニアが頑張って作ってくれていますので、その低さを徹底的に生かしたデザインにしようとしています。
また、BEVでは空気抵抗、空気の流れとそれを受ける全面投影面積をどれだけ小さく出来るかが航続距離を伸ばすうえで重要です。ですから、あえて全高を低く抑えるということにチャレンジしています。
そうしながら前後に人を座らせるので、必然的にフォルムが流線型、それもイルカとかシャチのようなきれいな流れを作ることで、結果的にタイヤを際立たせるという、非常にエモーショナルな造形になっています。
■次世代レクサスの象徴「スピンドルボディ」はこう進化する
●レクサスのフロントフェイスですが、近年変化して来ており、その流れがこのLF-ZCでも感じます。
そのあたりはどう考えてこのフロントフェイスになったのでしょう。
■須賀氏:スピンドルボディといってRZから始めたフロントデザインをさらに進化させています。
BEVになると顔が均質化していってしまいますので、レクサスのスピンドルという記号性を持たせながら、ヘッドランプや空気の流れを意識しました。
また前方のエンジンがないので、ボンネット部分の大きな空間も必要なくなります。
こうしたBEVだからこそできる低いボンネットを採用しながら、フェンダーをぐっと張り出させるという立体感を出して、これまでのレクサスとは一味違う印象にしています。
ただし、使っているグラフィック、アイコンはそのまま使っているのです。
●木村さんはいかがですか。
■木村氏:はい、RZからピュアEVとしてスピンドルグリルからスピンドルボディに変化してきました。
私はRZのデザインも担当しているんです。このRZでスピンドルボディというものをレクサスとして初めて世に出したんですが、LF-ZCは次世代のBEVですから、スピンドルボディもさらに進化させています。
そこで大きくトライしたのがスピンドルのくびれの形状を、ボディサイドにも流れとして出ていくように表現したことです。
ですからスピンドルボディというものが顔だけではなく、ボディサイドにも、そしてリア、そして背面にもあるんです。
リアのバンパーのところもフロントと同じような形状になっていまして、フロントから見てもサイドから見てもリアから見てもこのレクサスの電動化の基本シグネチャーであるこのスピンドルボディを感じていただけるでしょう。
そのような基本的な骨格を作って、そこにプロポーションの流麗な機能と美しさをコンビネーションさせることで、レクサスの電動化の象徴となるモデルになるのではないかという期待を込めてデザインをしました。
●最後にこだわりを教えてください。
■木村氏:我々も次世代のBEVを作っていくにあたって、電池を薄くしてモーターを小さくしてエアコンのシステムを小さくして、そのようにやることで、ショーモデルでは4750mmという全長ですが、室内はものすごく伸びやかで広い空間を作っています。
こういった走りを予感させる非常にスタイリッシュで美しいフォルムでありながら、中に入っていただくとお客様にとって非常にくつろげる広い空間が作れる。
そういったところも二律創生の部分だと思っているんです。そういったところを全域的にこだわって作っていますので、レクサスが次世代のBEVでもしっかりと勝負できるようにしていきたいと思っています。
※ ※ ※
2026年にこのままのデザインでLF-ZCが登場するとは思いませんが、モチーフは随所にちりばめられるでしょう。
特にスピンドルボディの進化したものは、実際の市販モデルでも見ることができるはずです。
そして最も重要なバッテリーの低ハイト化によって車高を低くできることが、コンセプトモデルでは見事に表現されていました。
空力を考えながら、いかに美しく見せるか……。
こうした「二律背反」を、レクサスなりに表現したサルーンが実際にどのように登場するか、今から楽しみに待ちたいところです。
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