アウディのコンパクトSUVである「Q2」に設定された「SQ2」に、小川フミオが試乗した。
古さを感じないデザイン
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使い勝手を考えればコンパクトがいい。それでいて、ドライブが楽しければ、いうことなし。ずっと世界中のクルマ好きが愛してきたホットハッチの最新形であるアウディ「SQ2」は、魅力的なモデルだった。2022年2月に日本発売開始されたこのスポーツモデルに、8月、ついに試乗出来たのだ。
扱いやすいサイズがいいけれど、ドライブが楽しくて、クオリティも高いクルマが欲しい……そんな嗜好のクルマ好きは少なくないはず。ならば、このアウディSQ2、いいですよ、と勧めたい。
SQ2は、アウディについて少し知識のあるかたならすぐに判読できるように、SUVであるQ2のスポーツバージョン。221kW(300ps)の最高出力と400Nmの最大トルクを発生する1984cc直列4気筒ガソリンターボ・エンジンに、フルタイム4WD「クワトロ」システムを組み合わせている。
Q2が都会的とはいえ、SUVライクなテイストで人気なだけに、そのスポーツバージョンというと、オフロード性能の向上を追求したモデルと思う向きもあるかもしれない。ところがSQ2は、オンロードでの走りを堪能できる、SUVライクな車型をもったスポーツモデルだった。
そもそも、私はQ2のスタイリングが気に入っている。2016年に欧州でデビューしたときから、自動車ジャーナリズム用語で“クリスピー”などと表現されるエッジのたった、車体側面のキャラクターラインの表現が「うまいなぁ」と、感心していた。
とくに黒色の車体色を選ぶと、まるでブラッククリスタルのような鋭角的な反射の美しさを楽しめる。そのときはグリルもブラックにするのを忘れずに。ホントかっこいいのだ。
そもそも、スタイリッシュなQ2であるものの、巨大に見えるエアダム、Sモデル専用の多角形シングルフレームグリル、アルミニウムルックのドアミラー、専用ルーフスポイラー、18インチアルミホイール、迫力ある4本出しのテールパイプ、18インチアルミホイールなどを装備したSQ2は、アグレシッブであり、かつスタイリッシュに仕上がっている。
さらに試乗車は、「ブラックスタイリングパッケージ」(オプション)を装着。シングルフレームグリルやアウディリングス(4つの輪によるアウディのエンブレム)、ドアミラー、さらにCピラーなどがブラック仕上げに。さきに触れたとおり、Q2の発売から6年もたっているのに、まったく古くさく感じさせないのは、オリジナルデザインがよく、かつデザイナーの腕が立つんだろう。
硬めのクッションを持つ専用シートに、太巻きのレザー・ステアリング・ホイール。アウディSモデルにおなじみのスポーツチューニングだが、これも古くさく思わない。わくわくしてくる。
スポーツカーとしての出来のよさに感心
走り出すと、期待はまったく裏切られない。2000rpmから最大トルクを発生する設定だけに、回転計上だと1800rpmあたりから、太いトルクがどんっと出てクルマが飛び出していくかんじだ。
足まわりの設定は硬めである。コーナリング時、ボディはほとんどロールしない。ステアリング・ホイールから路面の状況が手のひらに伝わってくるので、スポーツカーとしての出来のよさに感心する。
ドライブモードは「エフィシエンシー」「コンフォート」「オート」「ダイナミック」「インディビジュアル」が設定されていて、ダッシュボード上のスイッチで切り替えていける。
わかりやすいのは「ダイナミック」だ。操舵力が重めになり、変速タイミングが変わり、エンジン回転はつねに2000rpmの少し上がキープされる。そこからターボチャージャーがガンっと効き始めるからだ。アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、するどい加速を味わせてくれる。
いっぽう、私個人として好きなのは「オート」あるいは、操舵力が軽めの「コンフォート」。快適性が強くなって、しっかり感のあるステアリングフィールとともに、SQ2の素性のよさが感じられるドライブモードだからだ。
上記の2つのモードだと、エンジン回転が1500rpmあたりに落ち着いてしまう。アクセルペダルで急速な加速をしようとすると、ターボチャージャーが充分に圧力を高めるまで、やや時間がかかる。そのときは、ステアリング・ホイールの背後に設けられたパドルシフトで、ギアを下げてやるとよい。
左のパドルをぽんっと手前に引くと、1500rpmのエンジン回転数が2000rpmの少し上にあがる。エンジンのレスポンスがとたんによくなる。この動作も、排気量の小さめのスポーツカーをマニュアル変速機で乗っていた頃を、思い出させてくれる。私の好みのドライブフィールなのだ。
知るひとぞ知るモデル
アウディといえば、ピュアEVの「e-tron」の開発に力を入れていて、実際に「e-tron GT」のようにすばらしいスポーツモデルを送り出している。いっぽうで、SQ2のようにエンジンを楽しむモデルを開発している。なかなかニクいではないか。
ダッシュボードも物理的なスイッチが並んでいて、ブラインドタッチがやりやすい。これからはこんなデザインも廃止されてしまうんだろうか? インフォテインメントのモニターが小型なのは開発年度を考えるとしようがない。
でもあえていえば、そんなところにクルマの価値を置くべきじゃない。SQ2にはクルマの楽しさの本質がある。
全長はわずか4220mm。それでいて、パワフル。そして価格は乗り出しが620万円(オプション多数用意されている)。よほど知っている人じゃないと、SQ2がばかっ速くて、けっこう高価だって気がつかないかもしれない。
そんな知るひとぞ知るってところもまた、SQ2の魅力だと私は思う。
文・小川フミオ 写真・小塚大樹
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