113億円の再整備計画
東京都渋谷区が約113億円を投じて進めている公園の再整備事業が話題になっている――。
【画像】「なんとぉぉぉぉ!」これが34年前「宮下公園」です! 画像で見る(10枚)
議論を呼んでいるのは「玉川上水旧水路緑道」。この緑道は、玉川上水の地下水路に沿って整備されており、笹塚から代々木までのおよそ2.6kmにわたる都市公園だ。これまで、渋谷区は説明会を開催し、2024年12月には計画について理解を深めてもらうための情報発信施設もオープンした。
計画では、パリ在住の建築家・田根剛がランドスケープデザインを担当し、
・歩きやすくデザイン性のある園路
・地域のさまざまな活動ができる広場
・自然環境と一体となった、より充実した遊び場
・散策しながら休憩や会話を楽しめるベンチ
・夜間も安心して利用できる、高さを工夫した照明
・バリアフリーなどに配慮した、誰もが安全に使えるトイレ
などが提案されている。
しかし、高額な費用に対して懸念の声も上がっている。この公園整備における問題点は何なのだろうか。
商業化進む渋谷区公共施設
最も問題となっているのは、整備費用の高さである。
総事業費約113億円を他の公園整備と単純に比較することは難しく、規模や立地条件の違いが影響している。しかし、各予算項目を詳しく見ていくと、その高額な費用が浮き彫りになる。特に目立つのが
「ベンチ」
の費用である。緑道全体のデザインを統一するために特注されたもので、1台あたり約400万円という価格が設定されている。一般的な公園のベンチが20~30万円程度であることを考えると、その価格差はかなり大きい。
また、「舗装材」の選定にも問題がある。区は、石材やレンガを粉砕して固めた人造大理石「テラゾー」を使用する予定だ。この素材は廃材を活用し、高い耐久性を誇るとされているが、1平方メートルあたり17万円という高額な費用がかかる。既製品であれば、1平方メートルあたり1万円程度で済むことを考えると、その差は顕著である。このように、ベンチや舗装材の特注品へのこだわりが、全体の整備費用を大きく押し上げている。
玉川上水旧水路緑道の再整備における過剰なデザイン重視と予算に対する配慮の不足は、渋谷区が抱えるより深刻な問題を反映している。それは、公共施設を“洗練された空間”に見せる一方で、実際には
「公共空間の商業化」
が進んでいるという現象である。その一例として、渋谷駅近くの宮下公園(MIYASHITA PARK)の再開発が挙げられる。この事業では、進行中に
「ホームレスの移転問題」
が生じ、公共空間の利用方法に関する議論を呼び起こした。2020年に完成した公園は、商業施設や駐車場と一体化した複合施設として整備され、以前の公園とは異なる形態の施設となった。かつて自由に利用できた公共空間が、
「商業施設の一部」
として機能するようになり、行政と民間事業者が協力して公共用地を活用する形となった。
デザイン重視の課題
さらに、日本財団と連携して進められているTHE TOKYO TOILETプロジェクトは、渋谷区のデザイン重視のアプローチを示す一例である。
このプロジェクトでは、著名な建築家やデザイナーが新しい公衆トイレのデザインを提案することを目指していた。しかし、実際にはそのデザインが機能性に関して課題を抱える結果となった。
特に、建築家の坂茂によってデザインされた「透明トイレ」は注目を集めたが、実用性の面で問題が発生した。このトイレは普段、全面が色の付いたガラスで中が見える設計となっており、施錠をするとガラスが通電して曇りガラスに変わる仕組みだった。
しかし、冬の気温低下により、曇りガラスに変化するまでに時間がかかることが判明した。これに対して、自動で通電を制御する装置が導入されたが、期待通りに機能せず、最終的には冬季には常時通電して曇りガラス状態にする運用が取られることとなった。
また、その他のトイレについても、建築家の個性が強く反映されたデザインが多く見られ、将来のメンテナンスに対する懸念が残る。
大資本優先のPark-PFI問題
より深刻なのは、渋谷区がこうした批判の本質を理解していない点である。
この背景には、2017年に改正された都市公園法が導入したPark-PFI(公募設置管理制度)が関与している。この制度は、公園内の施設設置や維持管理を民間企業に委託し、財政負担を軽減することを目的としている。
当初は、既存の都市公園に飲食店や売店を設置し、周辺施設を一体的に整備することが期待されていた。しかし、実際には、公園を
「収益を上げる場所」
にしようとする動きが目立っている。その結果、公園本来の
・自然
・憩いの場
としての機能が犠牲になっている。特に渋谷区は、このPark-PFIを積極的に導入した自治体として注目されており、公園内に商業施設が増加することが、公園本来の機能を損なうとの意見が出ている。
結局、Park-PFIの仕組みは、公園を民間企業が利益を得る場所に変えることを目的としている。利益を得るのは大資本であり、多くの都市公園では、公費で整備された後に、ナショナルチェーンのカフェが低い賃料で進出し、地元の中小企業に影響を与える状況が生じている。
東京都が進めている日比谷公園の再整備でも、イベントスペースを増やして利益を上げようという民間事業者の意向が反映されすぎているという問題が指摘されている。
こうした状況ので、「地域のさまざまな活動ができる広場」などといった言葉で進められる公園の再整備計画が、商業的な目的に偏っているのではないかという疑念が生じるのは自然なことだ。しかし、渋谷区は、公園の再整備に対する商業主義的な懸念を十分に理解していない可能性がある。
113億円投資の長期視点
玉川上水旧水路緑道の再整備計画については、
・公共性の低下
・将来的な商業化の懸念
を指摘する声がある。しかし、渋谷区はこれに対して異なる立場を示している。
区は「FARM(育てる・育む)」というコンセプトを掲げ、この再整備を単なる公園の改修ではなく、地域コミュニティの中心となる新たな空間の創出と位置づけている。事業費の113億円についても、次の50年、100年を見据えた投資としてその必要性を説明している。さらに、区は現状の公園における
・バリアフリーの不足
・夜間の安全性
・老朽化した設備
・コミュニティ活動スペースの不足
を問題視し、これらの課題解決に向けた費用を必要な支出として理解を求めている。高額な特注品の使用についても、区の視点では必要不可欠なものであり、例えばテラゾーの使用は歩きやすさやデザイン性を考慮したものとされている。
渋谷区の立場からは、長期的な視点での投資が重要であり、高品質な整備を目指すためには民間資金も活用する方針だと説明している。区は「安物買いの銭失い」を避け、高価格であっても他の選択肢とは異なる優れたものを選ぶべきだとの考えを示している。
段階的アプローチで進化する再整備
玉川上水旧水路緑道の再整備に関する議論は、「変革」と「保全」のバランスをどう取るかに関わる問題だ。施設が40年を経ているため、更新は必要だが、それが必ずしも113億円もの投資をともなうべきかどうかは再考の余地がある。
重要なのは、慎重で段階的なアプローチだ。まずは、緊急を要する補修を行い、その効果を検証しつつ次のステップに進めるべきだ。例えば、400万円のベンチについては一度に15台設置するのではなく、数台を試験設置し、その結果を踏まえて次の行動を決定する方法が考えられる。また、テラゾー舗装も、一部区間で試験施工を行い、実際の使用感を確認した後、本格的な導入を検討することが有効だろう。
さらに、THE TOKYO TOILETプロジェクトから得られる教訓も多い。デザインに過度にこだわることが、維持管理の負担を増す可能性がある。特注品と既製品を適切に組み合わせ、地域住民の意見を反映させた実用的な整備を進めることが重要だ。
最後に、Park-PFI制度に過度に依存することなく、公共性を重視した運営方針を示すことが求められる。収益性よりも地域社会にとっての公共性を優先し、
「誰もが利用しやすい空間づくり」
を進めるべきだ。
行政改革に求められる現実的アプローチ
行政が「新機軸」を性急に導入することのリスクは、過去の事例から見て取れる。例えば、2000年代初頭に全国の自治体で導入された
「目標管理制度」
が挙げられる。この制度は、民間企業の経営手法を取り入れた結果、多くの自治体で形骸化し、数値目標の追求に偏ることとなった。最終的に、多くの自治体ではこの制度が縮小または廃止された。
「稼げる公園」のアイデアも同様に、過去の事例と似たような問題を抱えている可能性がある。MIYASHITA PARKの商業化の問題や、THE TOKYO TOILETプロジェクトで見られた機能性の軽視など、渋谷区の新たな試みには限界が見えている。それにもかかわらず、評価がまだ確定していない新しい開発手法に対して、113億円もの巨額を投じることには慎重な姿勢が求められる。
最終的に、行政に求められているのは、目新しい「新機軸」ではなく、既存の公共サービスの維持・向上である。そのためには、過度な投資は避け、より効率的かつ持続可能な方法を検討する必要がある。
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みんなのコメント
デザイナー(笑)に旨い汁吸わせ過ぎですよ
業者は区の予算があるから、いくらでも引き出して儲けの種にする
結果住民のためにならないものができる
宮下パークなんて、商業目的以外何者でも、ない。
広告会社出身の区長に、群がるデベロッパーと広告関連のしがらみ業者、、区職員も対応が大変。
次の区長選で変わらないかなあ、、